栃木県のサステナブルなおすすめ宿・ホテル8選（那須、日光、益子、鹿沼）

「旅にでよう！」そう思い立ち、なんとなく行き先を決めた後についてくるのが「どこに泊まろう？」という問題だろう。

アクセス、値段、部屋のタイプ、周辺のお店や体験、ご飯、お風呂、空間や建築の心地よさ、評価、サステナビリティに対する取り組み。検討すべき項目が多すぎて検索を始めてから予約まで気づくと1〜2時間経っているなんていうこともよくある。

そんな数多ある宿・ホテルのなかから、旅の力を信じるトラベルライフスタイルマガジン「Livhubでは今回、「サステナブル」という言葉に関連するようなおすすめの宿やホテルを選定した。今後47都道府県のおすすめな宿を選定し記事にしていく予定だ。

今回紹介するのは栃木県のLivhubおすすめの宿9つ。それぞれ詳細を紹介していく。

1. Looop Resort NASU（那須郡那須町）

引用元：Looop Resort NASU

「人と森とエネルギーの共生」をコンセプトにつくられた宿泊施設。森の中にある、太陽光発電所を兼ねた建物が特徴的。森と太陽光発電施設を共存させるため、樹木の伐採を最小限にし、木立の間に「自然共生型宿泊施設」を配置する。棚田状のビオトープ（生物の生息空間）と、そこに面して折り重なるテラスがつくる、自然と調和した風景が広がる。既存の発電所のイメージを覆すデザインは、2020年度グッドデザイン賞・ベスト100にも選出、日本空間デザイン賞・銀賞も受賞。

太陽エネルギーを発電する大きな屋根の下に広がる軒下空間には、バーベキューを楽しめる設備や、野菜や果物を育てられる農業体験エリアも備える。大きな窓が広がる広いキッチンでも、自然との一体感を感じることができる。夕食はケータリングメニューが用意されており、前日までの予約が必要だ。

宿泊客がここで過ごす時間を通して、自然やエネルギーの大切さについて知ってもらうことを目指し、子どもたちが楽しんで学べる体験施設を備えている。施設は貸別荘、貸しホールとして一般にも開放されており、地域活性化も目指す場所になっている。

那須の森で、自然エネルギーについて学び、自然と一体になる暮らしを愉しみに訪れてみてはいかがだろう。

2. Chus-YADO（那須塩原市高砂町）

引用元：Chus

おいしい・たのしい、が集まる、那須の大きな食卓として、宿泊施設も備える食堂「chus（チャウス）」。響きがどこか可愛らしい。

直売スペースでは那須の生産者による採れたて野菜や肉・加工品などを購入でき、レストランではそれらを使用した料理、地ビールや地酒などを、大きなテーブルで大家族のように皆で楽しめる。夕食はChusでも、近所にある姉妹店あくびでも、または近所のお店を巡るでも、自分の旅のスタイルに合わせて選べるので食の選択肢にも困らない。むしろ食べたい店がありすぎて困るくらいだ。

レストランや直売所を一階に構えた建物の2階がゲストハウス「YADO」。宿泊客専用の開放感のある明るいラウンジスペースでは、ゆっくり本を読んだり、珈琲を飲んだりしながら過ごすのもよさそう。客室は、ツインの個室と、ドミトリータイプの8人用の大部屋がある。ドミトリーは男女ミックスだがベッド一つ一つが個室になっていて、プライベートな空間になる作りだ。6人以上のグループでの貸し切りもできるため、仲間と過ごす旅にも、一人旅にも使いやすい。

Chusを運営する「GOOD NEWS」は、“食”をテーマに社会（地域）課題をデザインによって解決することを目的とした商品づくりやまちづくり、仕組みづくりを行なうスタートアップ企業。彼らはChusの他に同じく那須に「持続可能なまち『GOOD NEWS』」を運営している。施設内には切った髪の毛の堆肥化に挑戦する美容室や、ロスフラワーに価値をつける取り組みを行う花屋など日常的に環境に配慮した取り組みに挑戦を続ける店舗が集まり、那須の観光と農業に“福祉”を合わせた“観福農”連携によって、皆が幸せになれる新たな産業作りに挑戦している。

ChusのYADOを起点に周辺をめぐることで、楽しいに加えて、何か気づきを得られるいい旅ができるはず。

3. 星野リゾート リゾナーレ那須（那須郡那須町）

引用元：星野リゾート リゾナーレ那須

東京から90分、空気の澄んだ森の中に佇む、温泉を備えたリゾートホテル。
豊かな土壌が育む食材を使ったイタリア料理に舌鼓を打ちつつ、施設内にある田んぼやグリーンハウスで種蒔きから収穫まで農作物を育む活動を体験することもできる。ホテルから車で15分圏内にあるカフェや牧場など様々な観光スポットを楽しめる立地もうれしい。

客室は、1名から最大4名まで利用できる10タイプが用意され、愛犬と共に泊まれる部屋もある。那須連山のひとつ、活火山の茶臼山がもたらす恵みの湯を堪能できる温泉は、湯治場としての評価も高い。

リゾナーレ那須は、「アグリツーリズモリゾート」をコンセプトに掲げる。アグリツーリズモとは、イタリア語でアグリクルトゥーラ（農業）とツーリズモ（観光）の造語で、都会の喧騒から離れ、その土地の農体験や自然体験、文化交流を愉しむ観光の形を指す。農作物の生産活動に触れ、農業の営みを感じる食事や過ごし方を体験し、自然を遊ぶアクティビティを楽しむことで、自然や食、そして日々口にする食べ物やその生産活動との距離を縮めるような滞在を満喫することができる。

4. 益子陶芸倶楽部　古民家古木（芳賀郡益子町）

引用元：益子陶芸倶楽部　古民家古木

焼き物の町「益子」にある、宿泊施設を備えた陶芸教室。一人で、もしくは仲間や家族と陶芸を楽しみたい、長期滞在でじっくり学びたい、観光の拠点にしたい、など多様な楽しみ方ができる。陶芸教室のみ、宿泊のみの利用もでき、英語での対応もしてくれる。

築200年～300年の古民家を移築した古民家古木は、現実を忘れ、タイムスリップしたような感覚を楽しめる。囲炉裏のあるダイニングスペースで夕食を頂くことが出来るほか、七輪や暖炉を備えた厨房やBBQ設備で、食材を調達して自炊も可能。宿泊人数によっては朝食も用意してもらえる。

陶芸体験教室では、1日、半日など時間に応じて陶芸を体験できる。初めての場合でもスタッフに丁寧に対応してもらえ、使い放題の粘土を使い、時間内に、ごはん茶碗、湯呑、花瓶など好きなものに何度でもチャレンジできる。作った作品の中から好みのものを焼いてもらえるので、自作の陶器を自宅で使えるのが嬉しい。一から器を作るのが難しそう、という人は、用意された器に絵を描く絵付け教室も利用できる。ろくろを回せない子どもは手びねりでの粘土遊びも。

伝統的な文化である益子焼を体験しながら古民家に泊まる時間は、地域とつながる唯一無二の体験になるだろう。

5. アートビオトープ那須（那須郡那須町）

引用元：アートビオトープ那須

あらゆるものが親和し、ゆるやかに循環する、一つの生命圏であるというコンセプトを掲げるホテル。短期滞在向けのヴィラと、長期滞在向けのレジデンスを備える。
完全独立型の14棟からなるヴィラは、杉材やタモ材を内装に多用した、温かみのある空間。本格的な創作体験が楽しめる陶芸スタジオも併設し、ワークショップへの参加もできる。愛犬と共に泊まれるプランもあり。

レジデンスでは、クリエイターが集中して制作活動に取り組んだり、別荘のように過ごしたりできるプランも用意。企業の研修、イベントなどでの貸し切りも可能、中庭でのパーティーなどにも対応してくれる。

ダイニングで提供される約20種類の野菜やハーブは敷地内の畑で栽培。Farm to table （畑からテーブルまで）をさらに深化させた Seed to table （種子からテーブルまで）という考え方のもと、野生の滋味あふれる食材の力を存分に活かそうという想いを込めた料理が提供される。

隣接する敷地に広がる「水庭」は、自然と寄り添い、折り合いをつけながら変化していく場所。自然や、自身の身体と向き合い対話する、特別な時間・空間になるだろう。

6. 有形文化財ホテル 飯塚邸（那珂川町馬頭）

引用元：有形文化財ホテル 飯塚邸

栃木県北東部、人口約18,000人の那珂川町（なかがわまち）にある、有形文化財の宿泊施設。200年の歴史を誇る古民家や、蔵を改装した建物に、モダンで最高級のインテリア、ベッドなどを備える。

庄屋の豪邸だった建物を改築した、「邸の部屋」は、本格的なキッチンを兼ね備えたダイニングや洗濯乾燥機があり、長期滞在にも快適。リビングの広い縁側から見渡す日本庭園は、四季折々の美しさを見せてくれる。少人数や短期滞在に向いた空間として、蔵をリノベーションしたロフト式の「蔵の部屋」もあり、旅の用途や人数に応じて部屋を選べる。

宿泊以外の食事や買い物の際は、宿泊客が町に出かけることを推奨しているのも飯塚邸の特徴だ。
近所の洋食や和食の名店で食事をしたり、近隣の農家さんと夕食を共にしたり、ジビエを捕獲して食べるまでを体験したり、美しい農村でサイクリングをしたり、宿泊客が住民と触れ合い地域に溶け込める仕掛けが盛りだくさん。夕食時にはホテルからの送迎もあり、近隣の飲食店からのケータリングを部屋で楽しむ選択肢もある。朝食もケータリングで部屋まで届けられる。
町で暮らす人々が、ホテルのスタッフのように、宿泊客との交流を楽しみ、町をあげて旅人を歓迎してくれるのが嬉しい。

7. Center（鹿沼市銀座）

引用元：Center

「明日が少し楽しくなる」をコンセプトとした、アーティストが運営する宿泊できる複合施設。1階に多目的スペース、2階に宿泊施設を併設する。鹿沼は宇都宮と日光に隣接する自然豊かな街で、日光に赴く人々が滞在する宿場町として栄えた場所。高い建物が少なく、古い街並みが残る地域だ。

主に東京で活動していたサウンドアーティストと映像作家が鹿沼市に移住し、シャッター商店街の空き店舗を利用して2022年8月にオープン。実験映画・実験音楽・サウンドアートを軸として、新しい世界を発見したい人や旅人の拠点、新たな文化が醸成される唯一無二の場所を目指す。

1階では、地元で焙煎されたコーヒー豆や栃木県産のドリンク、鹿沼産の食材を使用した薬膳スープ「肉骨茶（バクテー）」などを提供。オリジナルグッズやCD、旅や街にまつわるZINE、お土産品等も販売する。
2階の宿泊施設には、個室2部屋と、ドミトリータイプの男女混合6人部屋が1部屋あり、シャワーやトイレは共有スペースのものを使用する。

国内外のアーティストによるライブや夏まつり、ワークショップなども開催され、地元の大人や子どもが交流したり、新たな実験をしたりする場になっている。

8. 日光金谷ホテル（日光市上鉢石町）

引用元：日光金谷ホテル

明治6年（1873年）創業。今年で創業150周年を迎える、現存する日本最古のリゾートホテル。敷地内にある5館が、国の登録有形文化財になっており、館内の至る所で、明治時代の趣を残す彫刻や調度品を眺めることができる。

西洋の文化がまだ日本に浸透していなかった創業当時より、試行錯誤を繰り返しながら質の高い西洋料理を提供し続けてきたメインダイニングルームでは、100年以上受け継がれてきた伝統のフランス料理を味わうことができる。「大正コロッケット」や「百年ライスカレー」など昔ながらのメニューは時を超えて愛される人気メニューだ。
ランチやディナーのコース、アフタヌーンティーのメニューなど、記念日や大切なひと時に、味わう側も心を込めて堪能したい。

本館・新館・別館・第二新館の中にある客室には、かつてリンドバークやヘレンケラー、アインシュタイン、池波正太郎など、数々の著名人が宿泊した部屋があり、タイムスリップしたような非日常な時間・空間がひろがる。地域性や歴史を取り入れ、高貴な空間へと昇華された客室、調度品を備えたクラシックな客室から、モダンで清潔感溢れる明るい客室、ひとりでの滞在に適した比較的シンプルな客室など、多様な選択肢がある。

Livhub編集部が考えるサステナブルな宿

本来「サステナブルな宿である」と断言するためには、根底からの課題意識を持ちつつ、環境・社会・経済、三要素全てに対して本質的な取り組みを行っている宿である必要がある。例えば、アメニティを自然素材のものに変え、持参を宿泊客に依頼するといったことも大事な取り組みの一つではあるが、それだけでサステナブルな宿と謳うには不十分だとLivhubは考える。我々が本質的にサステナブルな取り組みを行っていると考える宿は、例えばインドネシア・バリ島のエシカルホテル「Mana Earthly Paradise」だ。詳細が気になる方はぜひLivhubが取材した記事「バリ島ウブドに旅立とう。心で ”良さ” を感じるエシカルホテル「Mana Earthly Paradise」」をご確認いただきたい。

しかし日本においては、そうした宿はまだ少ないのが現状だ。そもそも、環境・社会・経済の三要素全てに対してアクションするのはすごく難しいことであるのも事実であろう。それゆえLivhub編集部では、環境・社会・経済もしくは思想のどれかにおいて特徴的なサステナブル要素がある宿も選定に含めている。環境・社会・経済をより良い状態していくための力となる旅が、今後より多く日本に、そして世界中に増えていくことを願って、理想へ向かう過程をメディアとして応援しながら情報を発信していければと思う。

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宿紹介文執筆: 和田麻美子
編集: 飯塚彩子

※こちらの記事で取り上げている宿は、今後随時状況に応じて追加・編集する可能性がございます。サステナブルな取り組みを行っていると読者の皆様が感じる宿があれば、ぜひcontact@livhub.jpやLivhubの各種SNSのDMにてお気軽にご連絡ください。