海の見える小屋の長机で日本の企業とミーティングをする横で、ハワイから来た海洋生物学者は論文を書き、その隣ではフランスから来た登山Youtuberが地道に字幕付けの作業をしている。
ここは、南米チリにある島、ロビンソン・クルーソー島。そう、かの有名な冒険小説「ロビンソン・クルーソー」の舞台となった場所だ。この島のなかにあるサン・ファン・バウティスタという、ラテンアメリカで最も人里離れた場所にあるおよそ900人ほどの田舎のコミュニティに、今年3月、世界各国からデザインやテクノロジー、持続可能性、生物多様性など、多種多様なスキルを備えた人々が集結していた。
写真提供:Lenovo
彼らはみな、PCメーカーであるLenovo(レノボ)が、種の絶滅を防ぎ、島々の環境を復元させることを目的とした非営利自然保護団体Island Conservation(アイランド・コンサヴェイション)とサン・ファン・バウティスタのコミュニティと共同で立ち上げた、テレワークをしながら社会貢献活動にも取り組む「Work for Humankind」プロジェクトの参加者。
プロジェクトには数千人の応募があり、離島コミュニティの持続可能性を促進するような、長期的なインパクトを残すスキルや経験があるかといったことをベースに選考が行われ、日本からはフリーランスクリエーターの山口智(やまぐちとも)さんが参加した。
写真提供:Lenovo
「ロビンソンクルーソー島は、島のおよそ97%が自然保護地区として定められています。島固有の鳥は11種など、島特有の生物が多くいる島です。サン・ファン・バウティスタは小さなコミュニティで、通りすがりの人には絶対挨拶を交わすような場所でした。基本的にみんなスマートフォンは持っているのですが、島の店長さんはメモ帳で売上を管理しているという、アナログな部分も」
写真提供:Lenovo
「Work for Humankind」参加中の3週間、山口さんはどういった日々を過ごしていたのだろうか?
「東京とチリの間には時差が13時間あるので、チリの朝4時が日本の前日夕方5時でした。1日の流れとしては、日本のクライアントとのミーティングを朝4:00-6:00にやり、午前中は仕事に専念して、午後は自由時間で一緒に参加したメンバーとハイキング、ダイビング、カヤックなど島の大自然を満喫したり、ボランティア活動に使えるようにしていました。仕事は家のリビングや、Lenovoが今回のために作成した海も見えるテクノロジー・ハブなどでしていました」
写真提供:Lenovo
今回のプロジェクト発足まで、ロビンソンクルーソー島には高速インターネットがなく、環境保全活動や教育などに課題が生じていた。そこでLenovoは、テクノロジーを介してそうした課題を解決すべく、高速インターネットやIT機器などの完備されたテクノロジー・ハブをコミュニティに寄付した。プロジェクト期間中は、ボランティア参加者が日常の業務や研究に従事する拠点として、終了後である現在は、新しい学びやデジタルツールにアクセスできる場として、島民人口の約30%に活用されているという。
写真提供:Lenovo
また島には上述したデジタル環境の不足などに加え、教育や医療へのアクセス、環境の劣化、外来種など多くの課題が存在している。
「ボランティア活動の大きなゴールとしては、コミュニティの持続可能性を促進することでした。そのゴールに向けて、参加者それぞれがスキルや経験を活かしてプロジェクトに取り組みました。私は食そしてマーケティングの経験を活かして2つの活動を行いました」
「ロビンソンクルーソー島は魚介が豊富です。ロブスターが島一の名産。一方、果物や野菜は島で生産できず、ほとんど船便で輸入している状態でした。しかし通常であれば2週間毎の便が悪天候により1ヶ月に一度になってしまうこともあり、着いたら腐ってしまっているといったことが多発。そうした問題をどうにか解決したいけれど、島の97%が自然保護地区なので大規模な農業は難しい状況でした。そうした状況を踏まえ、安定的に収穫がしやすいグリーンハウスを作るというボランティアをすることになりました。土地の草むしりから初めて、ハウスの骨組み造りなど、一週間半程かけて完成することができました」
写真提供:Lenovo
「2つ目のプロジェクトは、SNSを活用して島の『食文化』を観光に活用すること。新型コロナウイルスの影響で、3月時点では観光客を受け入れていなかったのですが、今後観光が再開した際に、どのようにSNSを活用して島の食の魅力を伝えていけばいいのかという点においてアドバイスさせていただきました。また、島のシェフたちに取材をし、島の食文化を伝えるための動画を作成しました。ムール貝とロブスターが入ったスパイシー魚介スープ、新鮮な採れたてロブスターなど美味しいご飯がたくさんあるんですよ」
記事冒頭に述べたように、今回のプロジェクトには世界中から多様なバックグラウンドをもった人々が集まっていた。ハワイからの海洋生物学者、メキシコからの獣医、フランスからの登山Youtuber、ドイツからのエンジニアなど、それぞれが、それぞれのスキルを元に、週20時間と定められたボランテイア活動を通して、現地の課題解決に取り組んだ。
写真提供:Lenovo
「このプロジェクトに参加する前は、フリーランスになるかどうか迷いながらも、帰ったらもう一度企業に就職しようかなと思っていました。しかし、参加者のみんなが、異なる職種、国籍でありながら、全員フルリモートで仕事をしている人たちで、彼らと話したりするなかでやっぱりもっとフレキシビリティのある働き方をしたい、自分の時間のオーナーシップをとって仕事以外のことでも自由に楽しみたいなと思うようになり、フリーランスになる決断をしました」
上述の山口さん以外にも、参加者からは、下記のような声が参加後にあがった。
「旅行、リモートワーク、ボランティアの組み合わせは自分の成長にも繋がった」
エンジニア – Simon Wehner, Germany
「Work for Humankindの取り組みこそが、企業の社会貢献活動や持続可能性の未来像だと思います」
海洋生物学者 – Carissa Cabrera, USA
「帰る前に人とハグして大泣きするのは、『人生が変わる体験』という意味だと思います。すべてが素晴らしかった。私たちは、世界中から集まった ”Lenovo” の仲間たちと、そして何より、島で私たちを迎えてくれた人たちとの間に、大きなつながりをつくることができたのです。文化的背景の異なる私たちが、短期間で旧友のように、時には家族のように、すべての瞬間を共有することができたのです」
コピーライター – Simon Canova, Italy
Lenovoが10か国15,000人以上を対象に行った働き方に関する調査で、「どこからでも仕事ができるのであれば、地域コミュニティへ恩返しをしたり、社会へポジティブな影響を残したりすることが非常に重要だ」と61%が回答したことをきっかけに始まった “テレワークしながら社会貢献もする” プロジェクト「Work for Humankind」。
Work from Home(WFH)、家から仕事をするテレワークが浸透しはじめてきた今。自分の人生の可能性をより広げる次の選択肢の一つは、Work for Humankind(WFH)なのかもしれない。
あなたはどう生きる?という前向きな問いを、Lenovoや今回のプロジェクトからもらった気がした。
あなたはどう生きる?
【参照サイト】Lenovo – Work for Humankind
【参照サイト】山口智さん robinson crusoe island, chile | vlog #1
飯塚彩子
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