“できるだけサステナブルに飛行機に乗りたい” CO2排出量を抑えて空を飛ぶには?

この記事では、飛行機に乗ることは環境負荷が高く、地球温暖化を加速させる可能性が高い行為で、現状は極力減らしていく必要のある行動だということをお伝えする。

けれど、その話を始める前に言わせてほしい。

「飛行機の上から見える景色は、本当に美しい」

飛行機の窓からみえる景色

小さな窓から陸地や海、空を見つめながら、私はこの美しい「地球」に人間として生まれたということを体感する。陽が徐々に落ちていき、地平線のようにずっと続く空の色が刻一刻と変わっていく様を、一瞬たりとも見逃したくなくて本を手に持ったまま時を止める。

できることならば、いつの日かフライトシェイムという言葉が無くなり、クリーンなエネルギーで自由に罪悪感を感じることなく飛行機に乗れる日が来てほしいと個人的には強く願っている。

それでも今はまだ、そうはいかない。気候変動という地球規模の課題に向き合う必要があるからだ。

航空産業のサステナビリティに取り組む団体Air Transport Action Groupによると、2019年には45億人の乗客が航空便を利用し、9億1,500万トンのCO2を排出したという。人間が出すCO2排出量の約2%が航空便由来ということだ。(※1)

2%というと少なく思えるかもしれないが、JCCCA(全国地球温暖化防止推進センター)によると日本人の2020年度の一人当たりの家庭における二酸化炭素排出量(以降、排出量)は年間で1840kgCO2(※2)なのに対して、成田空港からハワイ、ホノルルまでの往復の航空機における排出量は900kgCO2程と、一回の渡航で年間の一人当たりの家庭における排出量の半分を排出することとなる。

少々重たい情報だったかもしれないが、個人がコントロールできる排出量において飛行機に乗るということは、これだけの大きな負荷を環境に与える行為となる。それゆえ、排出量を下げることを真剣に考えるのであれば、飛行機に乗る機会を減らし、他の移動手段での旅の方法を模索する必要があるのだ。

それでも、飛行機に乗って遠いところまで旅に出たい。時間がどうしても限られているので飛行機を使いたいということもあるだろう。今回は、そんな時にできるだけ排出量を抑えて飛行機に乗るためのヒントを紹介する。

排出量を抑えて飛行機に乗るためのヒント

1. 乗り継ぎ便より、直行便
排出量は離陸と着陸時に最も高くなる。そのため、乗り継ぎ便ではなく直行便を選択したほうがよい。

2. 嬉々としてエコノミー
ビジネスクラスやファーストクラスは、機内での占有面積が広いため、フライトにおける個人の排出量をエコノミーの倍以上に増加させる。エコノミーに嬉々として乗ろう。

3. 新しい機体の飛行機
環境負荷を抑えるべく航空機は年々改良が行われてきている。そのため、新しい機体のほうが比較的排出効率が良い。

4. 支持したい航空会社を選ぶ
カーボンオフセットのみに頼らず、排出量を減らすために行動している航空会社を選ぼう。SAF(Sustainable Aviation Fuel)などのクリーンエネルギーや、環境問題を解決あるいは緩和するための技術であるグリーンテクノロジーに投資している会社ならなお良い。

5. 長期間滞在しよう
1km単位の排出量は、フライト時間が短いほうが多くなる。よって週末などの旅のためだけに飛行機に乗るのは避け、より長期間滞在したほうが負荷は低くなる。

6. 滞在中の移動は電車や船
現地滞在中に隣国や同国の別地域を訪れることもあるだろう。そうした滞在中の短距離移動には、飛行機ではなく電車や船など別の移動手段を利用しよう。

7. カーボンオフセットしよう
できうる限り排出量を下げるよう検討と努力をしたうえで、それでも出てしまうCO2については、排出量と同量のCO2を削減、吸収、回避することを目的としたプロジェクトを支援しよう。JALANAもそれぞれカーボンオフセットプログラムを提供している。

8. 荷物は最小限に
航空機は機体の重量が重くなるほど、消費燃料が増え排出量が増加する。そのため、無駄な荷物は減らし最小限の荷物にすることで排出量を削減することができる。元バックパッカーによる旅の荷物を減らす工夫をまとめたこちらの記事も参考に。

おすすめなツール

排出量を削減するための8つのヒントをお伝えした。しかしこれを全て自分で調べていくのはなかなかに難儀…そこでおすすめなのが「Googleフライト」。このツールを使えば、CO2排出量の少ないフライトを検索することができる。

さて、こうした情報を知った上で調べてみると恐らく気づくのが、排出量の少ないフライトは比較的金額が高いということ。

グリーンプレミアムと呼ばれるこうした価格差が徐々になくなっていき、よりクリーンなフライトを皆が選択できる未来を期待したいが、今は今。できる人ができる範囲で、可能な選択をしながら、少しずつ先に進んでいくしかない。仮に ”サステナブル” な選択が100%できなくても、自分を責めずに、できることをしていけたらいい。この記事を読み、事実を知っただけでも、5歩も10歩も歩めている。

筆者が過去に北欧を旅した時、フィンランドの首都ヘルシンキからスウェーデンの首都ストックホルムに船で移動した。多くの乗客が夜のパーティーを終えて眠りにつくなか、夜明け前に1人ベットから這い上がり甲板にでた。その時に船の上から見た景色は、飛行機の上から見える光景を超えた人生の中で一番美しいものだった。

船から見えた朝日

ゆっくりいくことで見える世界もある。さあ、旅にでかけよう。

(※1)Air Transport Action Group/Facts&Figures
(※2)JCCCA / 一人当たりの二酸化炭素排出量(2020年度)
(※3)東京都観光局 / 交通機関の種類とCO2排出量
※本記事の1-7のヒントはLivhubでも取材した、イギリスのサステナブルトラベルの専門家Holly Tuppenさんの著書「Sustainable Travel(2022年10月時点未邦訳)P26-27」を参考にしている。興味のある人は是非手に取ってみてほしい。

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飯塚彩子

“いつも”の場所にずっといると“いつも”の大切さを時に忘れてしまう。25年間住み慣れた東京を離れ、シンガポール、インドネシア、中国に住み訪れたことで、住・旅・働・学・遊などで自分の居場所をずらすことの力を知ったLivhub編集部メンバー。企画・編集・執筆などを担当。