電気や水を自給する「オフグリッド」な日本の宿11選

オフグリッド宿

日本は地震に限らず自然災害の多い土地ですが特に東日本大震災をきっかけに、生きるために必要な電気、水道などのインフラを国や企業に頼ることに、課題や疑問を感じた人もいるのではないでしょうか。

資源エネルギー庁が公表したエネルギー白書2021によると、日本の電力は2019年時点で75.7%が石油・石炭・天然ガスといった化石燃料由来。化石燃料はほとんど日本国内では採れないため、84.8%を輸入に依存している状況です。(※1,2)

仮に国際情勢が変化し、90%の原油を依存しているサウジアラビアやアラブ首長国連邦、石炭や天然ガスの輸入国であるオーストラリア、インドネシア、マレーシアなどエネルギー供給国に何か問題が発生した場合、安定的にエネルギー源を確保できなくなる可能性も考えられます。(様々な事態に備えて、200日分の石油の備蓄は有り(※3))もちろん自然災害が発生し、停電や断水などが生じた場合においても、社会システムに依存している限り安定的なインフラの確保が難しくなります。

また化石燃料由来のエネルギーは、温室効果ガスを多く排出し、温暖化を大きく加速させてしまうことが懸念されています。(※4)このような背景も手伝って、昨今「オフグリッド」に注目が集まっています。

オフグリッドとは、電力会社の送電網に繋がっていない状態、または電力会社に頼らず太陽光発電などを用いて電力を自給自足している状態を指します。このように日本では一般的に「電力会社に頼らない生活」を指しますが、本来は電気のみならずガス、水道などのライフラインに必要な一つないしはそれ以上を公共事業に依存しない建物の状態やライフスタイルのことを指します。

今回はそんな、「オフグリッド」な宿を紹介します。

1. Guest House ikkyu(和歌山)

和歌山県南部の山中にある、築約70年の古民家を改装した宿「Guest House ikkyu」。環境負荷をできるだけ与えない生活を探求してシェアすることが生きがいという、「環境マニア」モーリーさんが運営するゲストハウスです。

「地球1個分の暮らしをしよう」をコンセプトに、エネルギーの自給自足にとことんこだわるのが「ikkyu」流。宿内の電気は全てオフグリッド自家発電、微生物の働きで排泄物を分解して堆肥にするコンポストトイレや、薪ストーブ、釜戸、手作りの野生サウナなども設置しています。

コンポストトイレは、3年間の研究を重ねて商品化されています。今後は薪ボイラーやコンロの商品化を、ゆくゆくは日本中のライフスタイルを持続可能なものへと変革するのが夢だというモーリーさん。

ほかではなかなかできない自然と共生した宿泊体験をしに、訪れてみたい宿ですね。オーナーのモーリーさんに、持続可能な暮らしについて聞いて学べる機会にもなりそうです。

住所 和歌山県新宮市熊野川町宮井437
電話番号 080-3661-1209
HP https://epin1984.wixsite.com/my-site-2
2. Earthship MIMA(徳島)

「Earthship(アースシップ) MIMA」は、2018年11月にEarthship建築家監修のもと四国、徳島県美馬市の山あいに日本で初めて建設されました。Earthship とは、1970年代からアメリカ人建築家マイケルレイノルズ氏が実験を重ね、各地に建て続けているオフグリッドハウスの名称で、同宿のサイトによると現在世界中に約1,500棟以上建設されています。

電力は屋根に設置したソーラーから蓄電して使用し、生活水は雨水を貯水・ろ過して利用。使用後の水は建物内に植えられた植物を、自動的に育てる仕組みです。また古タイヤや空きビンなど「ごみ」と呼ばれるものを建材として使用した建物は、年間通し21度前後を保つため、冷暖房器具は不要です。

ゲストはEarthshipの見学ツアーに参加でき、機能や性能について説明を聞くことができます。Earthshipに滞在して、実際にその機能を肌で感じてみたくなりますね。

住所 徳島県美馬市美馬町栗林1
HP https://www.earthshipmima.com/
3. TIMERの宿(佐賀)

日本三大陶磁器のひとつ「有田焼」の産地として知られる、有田町にある「TIMERの宿」。登り窯のように傾斜地に建っているのは、もともとみかん山であった棚田の土地を生かしているためです。

廃材などを再利用した地球と地域に配慮した自然エネルギー体験型の宿で、新しいテクノロジーで快適さを保ちつつも、空調設備に頼らず自然エネルギーを効率よく使えるように設計されています。

また、宿にはコンセントの設置がありません。スマホなどの電子機器をオフにし、季節や一日の時の流れを肌で感じながら、自然と向き合う時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

一日一組のみ。薪で調理されたオーガニックなカリフォルニア野菜料理、ナチュラルワイン、薪風呂などそのゲストに合った方法でもてなしてくれます。

住所 佐賀県西松浦郡有田町下内野丙2440-4
電話番号 080-2697-2288
HP https://timer-no-yado.weebly.com/
4. オフグリッドゲストハウス GURUGULU(北海道)

北海道南西部に位置する羊蹄山の麓にある、「オフグリッドハウスGURUGULU(グルグル)」。一日一組限定で、寝室3つを備えた定員7名の客室では、ライフラインを地産地消するという、まったく新しい宿泊体験ができます。

「パーマカルチャー」や「オフグリッド」という概念は、日本の昔ながらの里山暮らしに通じるものがあるのではないかと考え、パーマカルチャーに基づいた里山暮らしを探求している「GURUGULU」。暮らしは社会システムに頼り切らず自分たちで営むことにこだわり、家庭菜園や庭先養鶏などさまざまな取り組みを行なっています。

施設は建てかけで放置されていたという家屋を、約7年かけて完成させました。2,000坪を超える敷地を活用して、自立した循環型の生活の模索を続けています。水は羊蹄山の湧水源から直接汲み上げられた湧水を使い、火を起こすために地域で伐採した薪を利用し、自家菜園や庭先養鶏で採れたフレッシュな野菜や卵などが食卓に並びます。

自分たちでできることが増えると、今までいかに社会システムに頼っていたかを知ることに。自然の恩恵を受けて「暮らし」そのものを創ることで、自然の循環(グルグル)を肌で感じることができるのですね。

住所 北海道虻田郡倶知安町富士見514-14
電話番号 090-8336-9091
HP https://gurugulu.com
5. 山村テラス(長野)

2014年、長野県佐久穂町の大日向地区ではじまり現在、佐久穂町と佐久市望月に、いくつかの宿泊施設を運営する「山村テラス」。「山村テラス」をはじめ「月夜の蚕小屋」、「ヨクサルの小屋」、「木馬のワルツ」という、趣の異なる4つの空間はたくさんの試行錯誤を重ねながらコツコツと手作りされたもの。

そのときの環境や影響を受けたもの、巡り合った材料や家具などさまざまな要素が重なり合って作られる、唯一無二の施設です。まるで秘密基地のようなワクワク感、また自分たちだけの別荘のような、そんな感覚に包まれます。

電気は太陽光発電でまかない、水は沢の水を引いています。キッチンはありますが、シャワーやお風呂はないため、温泉施設などを利用します。

「作りたいのは建物ではなく、その先にある一つの暮らし方や一つの生き方」。その一言に、山村テラスのすべてが表現されているように感じます。

住所 長野県南佐久郡佐久穂町大日向3199
電話番号 0267-88-6102 ※製作中につき電話に出られないことも有り
HP https://sanson-terrace.jp/
6. 変なホテル ハウステンボス(長崎)

世界初のロボットホテルとしてギネス認定されている「変なホテル ハウステンボス」。2015年より開発が進み、今では国内外に20以上の「変なホテル」を展開しておりメディアでも話題です。「変」には「変化しつづける」という思いが込められ、常識を超えた先にあるかつてない感動と快適性を目指しています。

フロントでは多言語対応のロボットたちが対応し、客室では顔認証をすることで次回以降は顔パスになるシステムなど館内では先進技術を導入しています。

そんな最先端技術に注目が集まるホテルですが、実は「自然との共生」を創業理念としています。

2015年7月にオープンした第1期棟に続き建設された第2期棟では、国産材と再生可能エネルギーの活用が大きな特徴で、建物は一部を除き全て木造。東芝の自立型エネルギー供給システム「H2One」を導入することで太陽光発電と水素を活用し、一年を通じて水と太陽光のみで客室12室分の電力を自給自足できるようになっています。

自然との共生を目指し、最新テクノロジーを取り入れた「変なホテル」。ユニークな体験をしに、一度は訪れてみたい宿泊施設です。

住所 長崎県佐世保市ハウステンボス町6-5
電話番号 0570-064-110
HP https://www.h-n-h.jp/
各種予約サイト

※下記リンク経由で予約した場合、当メディアに紹介手数料が入ります。予約者の方に追加の費用負担は発生致しません。本手数料は、社会を良くするメディア運営を持続的に行うための資金として大切に活用させていただきます。

じゃらん楽天トラベル
7. ゲストハウス NORA(静岡)

富士山を望む海辺の町、沼津市にある築70年の古民家カフェをリノベーションした「ゲストハウス NORA」。伝統的な日本家屋の良さを残しつつ、現代の使いやすさも取り入れています。民泊としての利用で、2階の二間を寝室として借りる形です。自由に使えるキッチンがあり、共同スペースのリビングは風情が残る、どこか懐かしい空間です。ゲストのレビューも高評価で、快適な滞在であることがうかがえます。

施設内照明はオフグリッド、全て太陽光でまかなっているのが大きな特徴。

また備え付けのシャンプーや石けんやリネン類、調味料やコーヒーなど食料品もオーガニックまたは地球環境に優しいものなのも嬉しいポイントです。

三津シーパラダイスや長浜城跡公園などの観光地はじめ、飲食店も徒歩圏内にあるので、暮らすように旅するのにピッタリの滞在先です。

住所 静岡県沼津市 ※予約後に詳細
HP https://www.airbnb.jp/rooms/31675209
8. LivingAnywhere Commons 八ヶ岳(山梨)

日本百名山のひとつである八ヶ岳がそびえ立ち、山梨県と長野県にまたがる標高1,000mのところに位置するLivingAnywhere Commonsの八ヶ岳拠点。LivingAnywhere Commonsとは、場所やライフラインといった制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方(LivingAnywhere)を実践することを目的としたコミュニティ。月額29,500円でコミュニティの会員になることで、北海道から沖縄まで日本全国に散らばる、個性の異なる約40箇所の拠点を自由に利用することが可能です。

八ヶ岳拠点の最大の特徴は、“ゼロ”から完全なオフグリッド生活の実現を目指しているという点。衣食住から水光熱、トイレやお風呂までグリッド(インフラ)の制限から解放される暮らしを叶えるべく、2022年中に100%オフグリッドの「オフグリッドキャンプ」の実現を目指しています。

雄大な自然に囲まれた地でありながら、ワーキングラウンジやワークスペースも備え、施設全体でインターネット接続できる環境を整えており、利用者はワーケーションやテレワークをすることも可能です。

豊かな自然と共生しながら、あらゆる制限から解き放たれ、幅広い選択肢のなかで暮らしをクリエイトするなら「LivingAnywhere Commons 八ヶ岳拠点」がおすすめです。

住所 山梨県北杜市大泉町谷戸5460
電話番号 080-7651-3194
HP https://livinganywherecommons.com/base/yatsugatake-hokuto/
9. nozawa green field(長野)

長野県北部に位置する野沢温泉、四季折々の豊かな自然のなかに「nozawa green field」はあります。始まりは2012年に創業者とその仲間が自分たちで建てたツリーハウス「green shelter」。そこで多くの豊かな時間を過ごすうち、「この空間で過ごす良い時間をもっと多くの人と共有したい」と、約2年間の準備期間を経て、2016年にgreen fieldをスタートさせました。

名前の通り、自然をフィールドとしたさまざまな遊び、食、文化を体験できる場所で、スタンドアップパドル(SUP)やE-bikeでのサイクリングツアーも開催しています。

またかつて始まりの時に手作りしたツリーハウスは、今では一日一組限定のキャンプ場に。秘密基地で過ごすようなワクワクした気持ちでキャンプができ、隣接する畑の無農薬野菜を収穫して食べることも可能です。

2020年の夏より電気も自家発電することを決め、ソーラー発電システムを導入。また湧き水や排せつ物を堆肥化したものを使い、循環型農業を行っています。

温泉、自然、文化、食。旅の魅力をぎゅっと凝縮したような施設。たっぷり一日中全身で遊びたい時に、訪れてみてほしい場所です。

住所 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9254
電話番号 090-4161-3134
HP https://www.nozawagreenfield.com/
10. Treeful Treehouse(沖縄)

2021年、沖縄県名護市やんばるの森にオープンした「Treeful Treehouse(ツリーフルツリーハウス)」は、森に浮いているような圧倒的な存在感に目を奪われるサステナブルリゾート。隣り合わせに繋がって建つエアロハウスとツリーハウスは、2棟丸ごと貸し切りで利用できます。ツリーハウスでは360度のジャングルに囲まれる体験を、またエアロハウスではサステナブルなラグジュアリー空間を楽しむことができます。

地上1.2メートルに浮いた状態のツリーハウスは、もともとあった植物を守り、森で暮らす動物たちの通り道をふさがないようにと樹から吊るして造ることにこだわって造られました。また施設では化石燃料は使用せず、電力はすべて太陽光発電でまかなっています。作られた電気を有効に活用するためエコキュートという温水システムを導入。一方、施設で使う水は井戸から引いた源河川の天然水を利用しています。トイレも一部コンポストトイレを採用し、自然界の万物が循環する仕組みを作っています。

Livhubでは、Treeful Treehouseの共同創業者、菊川万葉(きくがわまは)さんにお話を聞きました。ツリーハウスができるまでの話や、こだわりなど、ぜひ気になる方は読んでみてくださいね。「沖縄のおおきなきに泊まる。森や動植物から空間を借りて、自然に溶け込むリゾートTreeful Treehouse | Livhub

やんばるの深い森を肌で感じる体験を、ラグジュアリーに楽しく… サステナブルと呼ばれるものの楽しさを実感できる宿Treeful Treehouse、ぜひ訪れてみては。

住所 沖縄県名護市源河2578
HP https://treeful.net/ja/
11. WEAZER(2022年秋オープン)

全国で宿泊事業や地方創生を手がける株式会社ARTHが、エネルギーと水を100%自給し、インフラのない場所でも設置可能なオフグリッド型住居モジュールWEAZERを開発しました。そのモジュールを活用したホテルが2022年秋に西伊豆に一棟貸しの宿泊施設としてオープンする予定となっています。

WEAZERは太陽光から電気を、雨水から水を自給するため、あらゆる場所での滞在や住居を可能にしました。CO2の排出はゼロ、特殊な浄化装置で汚水排水も発生しません。つまり設置する場所の環境に負担になることも汚すこともない、画期的なシステムなのです。オープンが楽しみですね。

HP https://weazer.jp/

今回は、「オフグリッド」な宿泊施設を紹介しました。

オフグリッドだから魅力的という以前に、仮にオフグリッドでなかったとしても魅力的な宿ばかり。

取り組みに共感できて、さらにそれだけでなく、泊まることを想像して単純にワクワクする気持ちでいっぱいになる旅の宿泊先がこれからもどんどん日本に増えてくることを楽しみに。

まずはひとつ泊まりに行ってみてはいかがでしょうか?

(※1)経済産業省 資源エネルギー庁 | 第2部 第1章 第4節 二次エネルギーの動向 │ 令和2年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2021)
(※2)経済産業省 資源エネルギー庁 | 日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」
(※3)経済産業省 資源エネルギー庁 | 2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)
(※4)東京都環境局 | 温室効果ガスはなぜ増える?

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mia

旅するように暮らす自然派ライター|バックパックに暮らしの全てを詰め込み世界一周。4年に渡る旅の後、オーストラリアに移住し約7年暮らす。移動の多い人生で、気付けばゆるめのミニマリストになっていました。ライターとして旅行誌や情報誌、WEBマガジンで執筆。経験をもとに、旅をちょっぴりエコにするヒントをお届けします。