「旅にでよう!」そう思い立ち、なんとなく行き先を決めた後についてくるのが「どこに泊まろう?」という問題だろう。
アクセス、値段、部屋のタイプ、周辺のお店や体験、ご飯、お風呂、空間や建築の心地よさ、評価、サステナビリティに対する取り組み。検討すべき項目が多すぎて検索を始めてから予約まで気づくと1〜2時間経っているなんていうこともよくある。
そんな数多ある宿・ホテルのなかから、旅の力を信じるトラベルライフスタイルマガジン「Livhubでは今回、「サステナブル」という言葉に関連するようなおすすめの宿やホテルを選定した。今後47都道府県のおすすめな宿を選定し記事にしていく予定だ。
今回紹介するのは徳島県のLivhubおすすめの宿7つ。それぞれ紹介していく。
1. HOTEL WHY(勝浦郡上勝町)
引用元:HOTEL WHY
消費者はなぜ買うの?なぜ捨てるの?
生産者はなぜ作るの?なぜ売るの?
常に「WHY」という疑問符をもって、生産者と消費者がごみから学び、ごみのない社会の実現を目指す四国一小さな町、勝浦郡上勝町。
「HOTEL WHY」は、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロを目指し廃棄物を減らそうとする活動)」を宣言したこの地に誕生した、ゼロ・ウェイスト活動のハブ拠点「上勝町ゼロ・ウェイスト」内の宿泊体験施設である。
ゼロ・ウェイストアクションをコンセプトとする当施設では、上勝町の暮らしを通して日々のごみを見つめ直すさまざまな工夫がなされている。施設では使い捨てアメニティを設置せず、滞在中に必要な石鹸とドリンクは、チェックイン時に量り分けにて提供している。朝食では、ビールの醸造後に出たココナッツを再利用したナッツグラノーラを使用。食にもゼロ・ウェイストの精神が宿っている。
さらに希望者は、「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」の施設紹介や、上勝町が取り組んできたゼロ・ウェイストの歴史についてスタッフが解説する施設案内プログラム「STUDY WHY」にも参加可能だ。45種類もの細かな分別によってリサイクル率80%を実現する上勝町で、実際にごみがどのようにリサイクルされているかを体感できる「ごみ分別体験」などのアクティビティも用意されている。
「HOTEL WHY」での滞在を通して、四国一小さな町、勝浦郡上勝町に秘められた、ごみ問題への取り組みから日本を変えようとする大きなエネルギーを感じてみてはいかがだろうか。
住所 | 徳島県勝浦郡上勝町大字福原字下日浦7番地2 |
HP | https://why-kamikatsu.jp/ |
2. Earthship MIMA(美馬市美馬町)
引用元:Earthship MIMA
公共のインフラを一切使用することなく自然エネルギーの暮らしを体感できる、日本初のオフグリッドゲストハウス「Earthship MIMA」。Earthshipとは、1970年代からアメリカ人建築家マイケル・レイノルズ氏が実験に実験を重ね建て続けているオフグリッドハウス(公共のインフラを必要としない建物)であり、現在世界中に1,500棟以上が建設されている。
いわゆる「ごみ」と言われる古タイヤや空きビン、空き缶などを、建物の建材に使用。建物内は年間を通してほぼ21度前後に保たれるため、冷暖房器具の必要がない。電力は屋根に設置したソーラーから蓄電し、生活水は、屋根からキャッチした雨水を貯水・ろ過して利用している。
外観は、アニメの世界から飛び出してきたかのような、不思議でどこか懐かしさを覚える装い。一歩足を踏み入れると、そこには木の温もりあふれる居心地の良い空間が広がっている。部屋でゆったりとくつろいだ後は、建物の機能や性能の解説を受けられる宿泊者限定の建物見学ツアーへの参加はいかが?滞在とあわせて、地域住民との交流や藍染体験などの「地域の暮らしを感じる体験プラン」を楽しむのもおすすめだ。
「Earthship MIMA」をはじめ、オフグリッドな宿は日本各地に点在している。詳しくは「電気や水を自給する「オフグリッド」な日本の宿11選」をご覧いただきたい。
住所 | 徳島県美馬市美馬町字栗林1 |
HP | https://www.earthshipmima.com/ |
3. B&B On y va & Experience(名西郡神山町)
江戸時代末期に建てられた元造り酒屋を改装した、一組限定の宿「B&B On y va(オニヴァ)& Experience」。自然豊かな神山町にある古民家宿で過ごす時間は、日常の喧噪を忘れさせてくれる。
和と洋が融合したレトロな空間に足を踏み入れると、目の前には使い込まれた薪ストーブと座り心地の良いソファーが置かれている。チェックイン後は山の中の小さな農園に案内され、焚き火を囲みながら自家栽培のハーブと山の湧水で入れた温かいお茶による温かいおもてなしを受けられる。
朝食にはコーヒーとパン、そしてオニヴァ農園の採れたて卵が並び、予約制の夕食では、好きな曲をBGMにフレンチのケータリングディナーを堪能することが可能だ。5日以上滞在する場合に限り、キッチンを使って料理をしながら旅の思い出を深めることもできる。
当施設にはDIYで建てられた一組限定3時間の貸し切りサウナ「森のサウナ」も。薪の火でサウナストーンを熱し、水をかけて蒸気を発生させるロウリュウスタイルのサウナでじっくり汗を流した後、横を流れる沢の水による天然の水風呂で整えば、日々の生活で溜まった疲れから一気に開放されるだろう。
自然をたっぷり感じながらハンモックに揺られたり、ウッドデッキに寝転んで空を見上げたり。不定期開催のトレッキングイベントで自然遊びを楽しむこともできる。大自然に囲まれた「B&B On y va & Experience」で、ぜひ森の住人として過ごす至福の時間を過ごしてみてはいかがだろう。
住所 | 徳島県名西郡神山町神領字西野間5-1 |
HP | https://www.airbnb.jp/rooms/3000814?source_impression_id=p3_1683529537_PBaiPn9tVnPs7Kei |
4. 古民家「懐和の里」(名西郡石井町)
「ジャパンブルー」として世界中で愛され、徳島が誇る伝統文化として親しまれている「藍染」。藍染文化が栄えた江戸時代末期に建てられた藍屋敷の客間と庭を再利用し誕生したのが、一棟貸し切りの古民家宿「懐和の里」だ。
室内は、屋久杉が使われた天井や欄間、漆塗りの床や建具、精緻な釘隠しが施された客間、江戸時代の丁寧なものづくりの精神が宿る古民家のしつらえ。食事は、原則自炊となる。最寄りの農家直販の店「百姓一」や徳島全域から集めた農水産物・加工品が並ぶ「阿波食ミュージアム」で地元の食材を調達し、備え付けのバーベキュー施設で旬の素材を堪能するのもよいだろう。
また、ここでしかできない体験プログラムが豊富に取り揃えられているのも、この宿の魅力の一つ。藍の栽培から原料となる蒅(すくも)作り、染めまで、国の無形文化財に指定されている藍染の全工程を見られる「阿波藍製造所見学」や、製造所とは異なる施設での「藍染体験」、特産の鳴門金時芋を使った「焼酎仕込み体験」、自然豊かな地ならではの「農業体験」など、趣味趣向に合ったさまざまな見学・体験を楽しめる。
遠く離れたヨーロッパの藍染文化にも影響を与えた、日本が世界に誇る伝統文化「藍染」。「懐和の里」での滞在を通して、改めて生きた藍の魅力に触れてみてはいかがだろうか。
住所 | 徳島県名西郡石井町高原池北240-1 |
HP | http://wwwe.pikara.ne.jp/kaiwanosato/ |
5. 民宿 旅の途中(阿波市吉野町)
引用元:旅の途中
「諦める世の中から、選択できる世の中に変えたい」をコンセプトに、2019年春に住宅型デイサービスとして利用されていた施設を改装して誕生した民宿「旅の途中」。人間味あふれるこちらの介助付きゲストハウスには、福祉の世界で娯楽を諦めざるを得ない当事者や家族、従事者を目の当たりにしてきた代表・榎本峰子さんの「高齢者、障がい者、そしてその家族の受け皿となるような宿を作りたい」という想いが詰まっている。
滞在をサポートするのは、個性豊かな7人のレンジャーたち。宿での滞在や食事などの介助に限らず、介護タクシーの手配などの観光のサポート、介護・支援の相談紹介なども積極的に行ってくれる。
経験豊富な介護のプロであるレンジャーが在席する当施設は、介護の現場で働きたいという想いを抱きながらも過酷な現場を前に諦めざるを得なかった福祉従事者らの受け皿としての一面も。福祉施設とは異なる当事者や従事者とのフランクな交流を通して「福祉従事者の心が救われる場所」としても機能している。
「人が人を助ける、それが当たり前の風景となる世の中に」
高齢化が進み、要介護者が増え続ける現代。「誰も諦めない社会の実現」を目指す「旅の途中」は、福祉業界と旅行業界の架け橋として、今後さらに注目されていくことだろう。
こちらのインタビュー記事も併せてぜひ読んでみて。
世の中からあきらめをなくしたい──徳島発、高齢者・障がい者に特化した民宿の挑戦| IDEAS FOR GOOD
住所 | 徳島県阿波市吉野町柿原原113-6 |
HP | https://www.tabinoshiori.or.jp/ |
6. INOW(勝浦郡上勝町)
引用元:INOW
「家に帰ろう!」という地方の方言から名付けられた滞在型ラーニングプログラム「INOW(いのう)」。人口1,400人ほどの四国一小さな町、上勝町で実施中の、地域の暮らし体験を通してサステナブルな取り組みを体感するホームステイプログラムだ。
上勝町は、日本料理を彩る季節の葉や花、山菜を栽培・出荷・販売する葉っぱビジネス「いろどり」や、廃棄物ゼロを目指す「ゼロ・ウェイスト」に向けたごみの細分別・再資源化などを積極的に採用している街だ。その取り組みが共感を呼び、年間2,000人ほどの視察者が訪れるなど、地方創生やローカルベンチャー事業が活発な地域として知られている。
INOWは、「地域に溶け込み、長期にわたって地元の人々とともに暮らすことで、上勝の人たちとの出会いの機会を得てほしい」との想いでスタート。そんなINOWでは、滞在しながらゼロ・ウェイストや田舎の暮らしを、理論や実習を通して学習することができる。茶摘み体験や堆肥作り、季節の食材を使った料理など、自然豊かな地域ならではのさまざまな体験プログラムが用意されている。
INOWが目指すゴールは、参加者が自らの「居場所」を見つけること。己を深く理解するきっかけを与えてくれるこの地での滞在が、未来への道筋を明るく照らしてくれるかもしれない。
住所 | 徳島県勝浦郡上勝町大字福原字下横峯3-1(上勝町役場 企画環境課) |
HP | https://inowkamikatsu.com/ |
7. 篪庵 ちいおり(三好市東祖谷)
引用元:篪庵 ちいおり
日本の魅力や観光業界の変遷を追い続けてきたアメリカの東洋文化研究科、アレックス・カー。「篪庵 ちいおり」は、日本をこよなく愛する彼が「茅葺き民家を現代に伝えたい」という想いを胸に、築300年の民家に大規模な改修を加え、2012年にオープンさせた宿泊施設である。
篪庵は、東祖谷の釣井集落に現存する最も古い民家の一つ。元禄時代(1699-1720)に建てられ、深い谷に囲まれた徳島の秘境、祖谷の過酷な環境を耐え抜いた力強く気高いこの民家には、大きな座敷、居間、台所、そして小さな寝間が2つある。囲炉裏の煙や煤で燻され、日々の拭き掃除で磨き上げられ、黒光りするようになった床や梁、柱、屋根に囲まれた黒の世界からは、300余年の歴史の深みが感じられる。
夕食では、地元飲食店による地場産の食材を使った郷土料理の特別メニューを、ケータリングすることも可能。その昔、家族が囲炉裏を囲んで仲睦まじく過ごした居間で、日本の伝統と文化に想いを馳せながら過ごす。そんな非日常でありながらも、心のどこかで懐かしさをおぼえる滞在を通して、改めて日本という国の過去、現在、そして未来を自分なりに見つめ直してみては?
住所 | 徳島県三好市東祖谷釣井209 |
HP | https://www.chiiori-stay.jp/ |
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Livhub編集部が考えるサステナブルな宿
本来「サステナブルな宿である」と断言するためには、根底からの課題意識を持ちつつ、環境・社会・経済、三要素全てに対して本質的な取り組みを行っている宿である必要がある。例えば、アメニティを自然素材のものに変え、持参を宿泊客に依頼するといったことも大事な取り組みの一つではあるが、それだけでサステナブルな宿と謳うには不十分だとLivhubは考える。我々が本質的にサステナブルな取り組みを行っていると考える宿は、例えばインドネシア・バリ島のエシカルホテル「Mana Earthly Paradise」だ。詳細が気になる方はぜひLivhubが取材した記事「バリ島ウブドに旅立とう。心で ”良さ” を感じるエシカルホテル「Mana Earthly Paradise」」をご確認いただきたい。
しかし日本において現状、そうした基準にかなう宿は正直かなり少ない。そもそも、環境・社会・経済の三要素全てに対してアクションするのはすごく難しいことであるのも事実だ。それゆえLivhub編集部では、環境・社会・経済もしくは思想のどれかにおいて特徴的なサステナブル要素がある宿を選定している。環境・社会・経済をより良い状態していくための力となる旅が、今後より多く日本に、そして世界中に増えていくことを願って、理想へ向かう過程をメディアとして応援しながら情報を発信していければと思う。
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宿紹介文執筆: 古川友理
編集: 明田川蘭
※こちらの記事で取り上げている宿は、今後随時状況に応じて追加・編集する可能性がございます。サステナブルな取り組みを行っていると読者の皆様が感じる宿があれば、ぜひcontact@livhub.jpやLivhubの各種SNSのDMにてお気軽にご連絡ください。
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