震災を乗り越え再起へ。旅を通して応援したい、営業再開を果たした「能登」の宿

2024年1月1日、新年を迎えたばかりの北陸を襲った能登半島地震により甚大な被害を受けた能登地方。

9月には能登豪雨も発生し、二重被害と呼ばれる状況の中、厳しい生活を余儀なくされている地域もある。自然が残した爪痕は、震災から10か月が経過した今も生々しく残り、観光客の受け入れも思うように進んでいないのが現状だ。

しかし、長引く復興の中、再起を目指して力強く歩みを進め、無事に営業再開を果たした宿も。観光復興に向けた取り組みも活発化しており、旅を通して私たち一人ひとりが能登の支援に携われる機会も広く開かれている。

日本の宿 のと楽(石川県七尾市石崎町香島)

開湯1,200年、能登の地で歴史を刻み続ける名湯「和倉温泉」の宿「日本の宿 のと楽」は、2024年11月1日、11か月の休止期間を経て営業を再開する。

震災によって崩れ落ちた壁や屋根は、地域の力を借りながらの懸命な復旧作業により元の姿に。被害の大きかった本館は今後も改修工事が続けられる予定だが、その他の施設は10月のプレオープンのあと、本格的に営業を始める。

いまだ20以上もの旅館・ホテルで再開の見通しが立っていない和倉温泉。「のと楽」の再始動は、復興に向けての第一歩として地域の未来を照らす光となるに違いない。

湯宿さか本(石川県珠洲市上戸町)

部屋にテレビもない、トイレもない、冷暖房もない“いたらない、つくせない宿”と自ら称する「湯本 さか本」は、復興の見通しが立たない中、震災直後から多くの避難民やボランティアを積極的に受け入れてきた。そして2024年4月6日、宿としての営業再開。「何もない」を感じる空間として、再び旅人たちに癒しを与えている。

吹きさらしの洗面所から見えるもみじ林や、竹林に囲まれたお風呂から眺める紅葉。ものや情報から隔絶された場所だからこそ五感が研ぎ澄まされ、見えてくるものがある。地元に“つくした宿”は、今後も石川の再起を支えた場所として愛され続けることだろう。

百楽荘(石川県鳳珠郡能登町越坂)

日本百景の一つに数えられる九十九湾と能登の自然を望む温泉宿「百楽荘」は、2024年4月19日に修繕が完了した施設から営業を再開。4月下旬にはロビーが、5月下旬には洞窟風呂が改修工事を終え、「来るたびに、新しさを感じられる宿」として人気を博していた以前の姿を取り戻しつつある。

震災の傷跡は深く、被害の大きかったお食事処「乙姫荘」と「釣り桟橋」にいたっては、立地の問題から復旧の目処が立っていないという。しかし、宿の営業再開を知らせる公式SNSには、再び訪れることを心待ちにしている多くの人々の声が寄せられている。完全な形での復活を願うばかりだ。

現在利用可能な北陸地域の観光割引、旅行者向け助成金制度など

旅は重要な復興支援の一つ。現在、能登を含む北陸地域では、観光業の復興に向けたさまざまな取り組みが行われており、旅行者が利用可能な制度も複数設けられている。

・北陸応援割「いしかわ応援旅行割」:県内登録宿泊施設への旅行・宿泊料金が最大5割引に ※現在第3弾を実施中(2024年9月1日〜11月30日)

・のと里山空港・能登9市町運賃助成制度など:能登空港の利用促進を目的とする航空運賃助成や商品券配布 ※対象者は地元市民

・能登のために、石川のために 応援消費おねがいプロジェクト:飲食店や販売店において、共通のロゴを店舗や商品に貼り、応援消費の機運を向上

訪れることが能登の復興支援につながる

震災被害からの復興において、物資や金銭的な支援はもちろん重要である。しかし、地域が活気を取り戻すために最も大切なのは、その地を訪れること。人々の交流なくして、本物の復興はありえない。

旅を通して、日本の伝統技術が息づく石川を、美しい自然が根付く能登を、応援していこう。

【参照サイト】「日本の宿 のと楽」公式サイト
【参照サイト】PR TIMES:【震災から奇跡の復活】和倉温泉「日本の宿 のと楽」、10ヶ月の休業を経て営業再開~能登半島復興の希望に~
【参照サイト】「湯本 さか本」公式サイト
【参照サイト】朝日新聞DIGITAL:珠洲の湯宿、再開に込めた思い 気づいた「あたり前のことじゃない
【参照サイト】「百楽荘」公式サイト
【参照サイト】「百楽荘」公式Instagram
【参照サイト】石川県:北陸応援割「いしかわ応援旅行割」について
【参照サイト】石川県:能登のために、石川のために 応援消費おねがいプロジェクト
【参照サイト】のと里山空港:助成金制度のご案内

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古川友理

愛知県在住。ピアノ講師・伴奏ピアニストとして活動する傍ら、執筆活動にも力を注いでいる。居心地の良いホテルやゆったりと時が流れる旅先で過ごす時間が最高のご褒美。