「旅にでよう!」そう思い立ち、なんとなく行き先を決めた後についてくるのが「どこに泊まろう?」という問題だろう。
アクセス、値段、部屋のタイプ、周辺のお店や体験、ご飯、お風呂、空間や建築の心地よさ、評価、サステナビリティに対する取り組み。検討すべき項目が多すぎて検索を始めてから予約まで気づくと1〜2時間経っているなんていうこともよくある。
そんな数多ある宿・ホテルのなかから、旅の力を信じるトラベルライフスタイルマガジン「Livhubでは今回、「サステナブル」という言葉に関連するようなおすすめの宿やホテルを選定した。今後47都道府県のおすすめな宿を選定し記事にしていく予定だ。
今回紹介するのは富山県のLivhubおすすめの宿6つ。それぞれ紹介していく。
1. ONEBIENT 神通峡(富山市春日)
引用元:ONEBIENT 神通峡
光、風、水、土、草木……自然を建築とテクノロジーの両面から拡張した空間で気づく「地球の一部としての自分」。「ONEBIENT 神通峡」は、土地特有の自然現象を最大限活用し、ユーザーの注意を最小限に抑えつつ情報を効果的に伝達し、人々の生活を向上させるというコンセプトの「カームテクノロジー」による無人サービスを取り入れることで、訪れる人々に周囲の自然との深い共生を促す没入型リトリート施設だ。
「五感が浮遊する体験」を生み出すのは、ミシュラン・ガイドで富山唯一の“4レッドパビリオン”を獲得した実績を持つホテル「リバーリトリート雅樂倶」に隣接・連携する、富山の自然特性を再現した3棟4室のアートヴィラ。
「雲庭 -kumoniwa-」は、潤いに満ちた多湿環境を人工の霧で再現することで、雲海に包まれるかのような空間を再現した客室。「森 -yadomori-」は、国内で初めて壁面にETFE膜(高性能フッ素樹脂フィルム)を採用し、通風・空調や採光をテクノロジーで自動制御することで、本州一の多様な植生と快適な室内環境を両立した施設。そして「川吟 -kawautai-」は、岩壁とそこに映し出される川の波紋によって、名水の地として名高い富山を想起させる癒しの客室となっている。
さらに、別棟では特別なアートサウナを楽しむことも可能。滞在とあわせて「リバーリトリート雅樂倶」のレストランにて、富山の食材をふんだんに使用した懐石料理や、サスティナブルな食を提供するミシュラングリーンスターを獲得した地方創作料理を楽しむのもおすすめだ。
こちらの施設では、非接触対応や運営の省人化によって、安心・安全性の向上や穏やかな空間作りに努めている。また、太陽光発電や薪ボイラーの活用によって、電力供給に頼らない完全オフグリッドの実現を目指しており、環境負荷を低減するサスティナビリティ化にも注力している。
人間と自然の間に、境目は存在するのか。新感覚のイマーシブ体験を通して、自然から生まれ自然に育まれた、自然の一部としての自分を感じてみてはいかがだろうか。
住所 | 富山県富山市春日56-2 |
HP | https://onebient.com/ |
2. Bed and Craft(南砺市本町)
引用元:Bed and Craft
日本随一の木彫りの街として知られる富山県南砺市井波にある「Bed and Craft」は、分散した6棟から成る「職人に弟子入りできる」貸し切り宿だ。地域の古民家や蔵などをリノベーションした建物内は地元作家の作品で彩られ、手しごとの美しさを感じる温かみあふれる空間が広がっている。
木の香り漂う築50年の元建具屋「TATEGU-YA」。かつてこの地で名を馳せていた豪商・藤澤家の別邸をリノベーションした「taë」。元料亭「金中」を令和ならではの空間に仕立て上げた「KIN-NAKA」。元料亭「金中」で最上級の客間として使われていた、檜の柾目木材が存在感を放つ「MITU」。「金中」のなかでも最大の庭を持つ特別な部屋を、庭園の魅力を最大限引き出す空間として生まれ変わらせた「TenNE」。そして、井波の宮大工が建てた石像を配置した「RoKu」。
それぞれの棟の設計・デザインには、彫刻家や漆芸家、木彫刻家、陶芸家、造園家、作庭家といった、日本の伝統を継承する一流の芸術家が携わっており、古き良き時代の趣と日本の伝統美を感じられる。
食事は、客室で地元食材を取り入れた懐石を楽しむもよし、近隣のレストランでフレンチやイタリアンを楽しむもよし。一部の店舗では、宿泊棟からの送迎サービスも用意されている。
木彫り職人への弟子入りも可能なこちらの宿では、木彫りのスプーンや漆の箸、木彫りの豆皿、木彫りの版画のほか、オリジナルフレグランス作りなど、さまざまな手しごとも体験できる。手触りや香りを感じながら、旅の思い出を胸に刻み込んではいかがだろうか。
住所 | 富山県南砺市本町3丁目41(BnC LOUNGE) |
HP | https://bedandcraft.com/ |
各種予約サイト | ※下記リンク経由で予約した場合、当メディアに紹介手数料が入ります。予約者の方に追加の費用負担は発生致しません。本手数料は、社会を良くするメディア運営を持続的に行うための資金として大切に活用させていただきます。 じゃらん、楽天トラベル |
3. L’évo(南砺市利賀村)
引用元:L’évo
昔ながらの風景と手つかずの自然が残る秘境、富山県利賀村で、真の地産地消を追求した前衛的地方料理と自然に抱かれる穏やかな時間を提供するオーベルジュ「L’évo」。かつてこの地に存在した集落を思わせる敷地内には、レストランを中心に3つの宿泊棟と菜園が点在している。
「ここにしかない料理と、ここにしかない時間を」
隣接のファームで土づくりからこだわった野菜や、熟練の技を持つ地元の契約猟師から直接仕入れたジビエをはじめ、富山の食材を自由な発想で唯一無二の一皿へと昇華した料理の数々。添えられるパンもすべて手作り、器やカトラリー、テーブル、照明に至るまで、すべてが作家や職人たちとのコラボレーションによるフルオーダーというこだわりぶりからは、ここでしか体験できない味への並々ならぬ想いを感じられるだろう。
食事と一緒に楽しめるのは、ワインをはじめとする「L’évo」のために作られたお酒。朝食では、地域に伝わる郷土料理を、季節の食材や伝統の保存食などを用いて再現した、この地ならではの味を体感できる。
当時の家具や建具をそのままに、現代風にデザインされたコテージには、木のぬくもりや自然の息吹を感じる心地よい空間が広がっている。宿泊棟の近くには、本場フィンランド式の薪焚きサウナも。じっくり汗をかいた後には、テラスで鳥の声や川のせせらぎを聴きながら外気浴で整う贅沢な時間が待っている。
標高1,000m級の山々に囲まれ、真冬には2m以上の積雪も珍しくない利賀村。だからこそ目にすることができる日本の原風景。訪れれば、わざわざ足を運ぶ価値があることを大いに実感できるに違いない。
住所 | 富山県南砺市利賀村大勘場田島100番地 |
HP | https://levo.toyama.jp/ |
4. HOUSEHOLD(氷見市南大町)
引用元:HOUSEHOLD
富山湾に面し、海の幸に恵まれた街として知られる富山県氷見市。料理を通してまちを楽しむ海辺の宿「HOUSEHOLD」では、1日2組限定で暮らすように滞在しながら氷見の豊かさ体感できる。
「HOUSEHOLD」とは、一緒に食事をし日々の暮らしをともに支えあう人の集まりのこと。こちらの宿では、ゆったりと部屋での時間を楽しむ以外にも、その土地の旬とまちの人情味がつまったおいしい一皿と出会える「常連なりきりプラン」や、大人もこどももがんばらない「ひひひな氷見の夏休みプラン」、初心者向けの釣り体験などユニークな滞在スタイルが用意されている。
4階にある客室は、東に窓があるこじんまりとした「nami」と、南向きの開放的な空間「yane」の2つ。いずれも、窓の外には富山湾と立山連峰の絶景が広がっている。
3階の部屋は、海を見ながら料理ができるキッチンダイニングや、さまざまな作業に対応可能な広々としたスペースを備えたフロア貸しタイプ。ランドリースペースもあるため、長期滞在にもおすすめだ。
「わたしたちの暮らしは誰かの営みでできている」
獲れたての食材を自分たちで調理したり、地元の飲食店で氷見ならではの味を堪能したり。海辺の宿「HOUSEHOLD」で過ごす温かな時間は、生きていくうえで欠かすことのできない“人とのつながり”の大切さを、再認識させてくれるだろう。
住所 | 富山県氷見市南大町26-10 |
HP | https://household-bldg.com/ |
5. 楽土庵(砺波市野村島)
引用元:楽土庵
広大な耕地に民家が点在する集落、散居村(さんきょそん)。築120年の伝統的古民家を再生した1日3組限定の宿「楽土庵」は、富山県西部の砺波平野に広がる日本最大級の散居村に佇むアートホテルだ。
人と自然がともにつくりあげる品格を表す「土徳」という言葉が伝わる、この地に根付く“農村景観、伝統建築、食、工芸、アート”。滞在を通してこれらすべてを肌で感じるこちらの宿は、神仏や先祖とつながる「聖空間」とされてきた伝統建築家屋「アズマダチ」を現代風に落とし込んだ宿泊棟と、農村風景を望む非日常空間が広がるレストラン・ショップ棟で構成されている。
アメニティには、富山の森の樹木「クロモジ・立山杉・ヒノキ」の精油を配合した、メイド・イン・富山のバスグッズやスキンケアセットを採用。食事は地元野菜にこだわり、器も伝統産業や作家のものを使用している。さらに、静かなお寺での書道体験やパラグライダー、「大門素麺」づくり体験と郷土料理ランチ、「越中いさみ太鼓」体験など、散居村の文化に触れるアクティビティも用意されており、富山の恵みや大切に守られてきた地域の伝統を全身で体感できる。
古くからエコシステムとしての役割も果たしてきた、砺波平野に広がる屋敷林「カイニョ」。木々は建材や家具の材料、エネルギー源である薪として、落ち葉や灰は田畑の肥料に……これら先人の知恵を伝承すべく、カイニョの整備や剪定枝の木質バイオマス発電への活用、落ち葉からの腐葉土作成に注力し、カーボンニュートラルに貢献している点も、宿の特徴といえる。
国の重点里地里山に選定されている「となみ野の散居村」保全のため、宿泊代金の2%を保全活動団体への寄付などに充てるなど、回復と再生「リジェネラティブ」な取り組みに情熱を注ぐ「楽土庵」。砺波の美しい稲作農村風景は、この地を誇りに思う人々によって、今後も守られていくことだろう。
住所 | 富山県砺波市野村島645 |
HP | https://www.rakudoan.jp/ |
6. リバーリトリート雅樂倶(富山市春日)
引用元:リバーリトリート雅樂倶
富山市内を流れる神通川と雄大な山並みからなる美しい、神通峡(じんづうきょう)。その畔の春日温泉郷に佇む「リバーリトリート雅樂倶」は、日常の喧騒から離れ自身と向き合う「リトリート」を提供するスモールラグジュアリーホテルとして2000年5月に誕生した。
そして2023年春、「サステナビリティ×ラグジュアリー」をテーマに、客室201号室と202号室をグリーンリノベーション。客室の壁と天井には、地場の土と、県内立山町で原料の楮(こうぞ)から栽培した和紙を使用。床材には、陶芸家が廃材を練りこんだ特注のテラゾータイルや、魚網を再生した繊維を用いた上質なカーペットを採用している。
採取した不要なガラス片に、「ビールストーン」という構法でガラスの骨材を練りこみ研磨して仕上げた洗面カウンターや、布や衣類から再生した大理石のような柄の建具や家具、再生ガラスを使用した照明。そして、酢酸セルロースをベースにしたバイオマス素材を使用した歯ブラシとヘアブラシ、地元の豊富な水資源を使用した生分解性のオリジナルのオーガニックスキンケア用品。再生素材で彩られたこの空間に身を置くだけでも、サステナビリティがもたらす大いなる力を感じられるはずだ。
夕食は、『ミシュランガイド北陸2021』で一つ星とミシュラングリーンスターを獲得したてフレンチレストラン「Trésonnier」にて。地産地消やフードロスにこだわった絶品フレンチがいただける。化学肥料を一切使用せず、調理の過程で廃棄する魚の内臓や漁港にあがる未利用魚を堆肥にして、シェフ自ら栽培した農作物、富山の野草や薬草、鮮度抜群の海産物、地元の漁師が仕留めたジビエなどの「富山の宝」が詰め込まれた料理が並ぶ。食を通じたサステナビリティが生み出す感動のひとときを味わってはいかがだろう。
住所 | 富山県富山市春日56-2 |
HP | https://www.garaku.co.jp/ |
各種予約サイト | ※下記リンク経由で予約した場合、当メディアに紹介手数料が入ります。予約者の方に追加の費用負担は発生致しません。本手数料は、社会を良くするメディア運営を持続的に行うための資金として大切に活用させていただきます。 じゃらん、楽天トラベル |
Livhub編集部が考えるサステナブルな宿
本来「サステナブルな宿である」と断言するためには、根底からの課題意識を持ちつつ、環境・社会・経済、三要素全てに対して本質的な取り組みを行っている宿である必要がある。例えば、アメニティを自然素材のものに変え、持参を宿泊客に依頼するといったことも大事な取り組みの一つではあるが、それだけでサステナブルな宿と謳うには不十分だとLivhubは考える。我々が本質的にサステナブルな取り組みを行っていると考える宿は、例えばインドネシア・バリ島のエシカルホテル「Mana Earthly Paradise」だ。詳細が気になる方はぜひLivhubが取材した記事「バリ島ウブドに旅立とう。心で ”良さ” を感じるエシカルホテル「Mana Earthly Paradise」」をご確認いただきたい。
しかし日本においては、そうした宿はまだ少ないのが現状だ。そもそも、環境・社会・経済の三要素全てに対してアクションするのはすごく難しいことであるのも事実であろう。それゆえLivhub編集部では、環境・社会・経済もしくは思想のどれかにおいて特徴的なサステナブル要素がある宿も選定に含めている。環境・社会・経済をより良い状態していくための力となる旅が、今後より多く日本に、そして世界中に増えていくことを願って、理想へ向かう過程をメディアとして応援しながら情報を発信していければと思う。
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宿紹介文執筆: 古川友理
編集: 明田川蘭
※こちらの記事で取り上げている宿は、今後随時状況に応じて追加・編集する可能性がございます。サステナブルな取り組みを行っていると読者の皆様が感じる宿があれば、ぜひcontact@livhub.jpやLivhubの各種SNSのDMにてお気軽にご連絡ください。
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