ネイチャーポジティブ(自然再興)とは・意味

ネイチャーポジティブ(自然再興)とは、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることだ。自然への悪影響を「減らす」だけで終わらせず、減り続けてきた自然を「回復させる」方向へ反転させる考え方である。

国際的には2030年までの実現が目標に掲げられている。日本でも、2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)が宣言と行動計画をまとめた。

旅も、この流れと無関係ではない。息をのむ景色、その土地の食、思いがけない生き物との出会い。旅の楽しみの多くは、自然の恵みに支えられているからだ。

ネイチャーポジティブとは

ネイチャーポジティブは、英語の nature(自然)と positive(プラス)を組み合わせた言葉だ。日本語では「自然再興」と訳される。

環境省は、ネイチャーポジティブを「生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せること」と説明している。

ここでいう生物多様性とは、さまざまな生き物がいて、それらが互いにつながりあって生態系をつくっている豊かさのことだ。森や海、川、田畑の生き物は、食べものや水、きれいな空気、美しい景観といった恵みを人にもたらしている。

この言葉の要は、「ゼロに戻す」ではなく「プラスに転じる」ところにある。開発や乱獲、環境の変化で自然が減り続けてきた流れをまず止める。そのうえで回復へと向きを変える。目指す方向そのものを示す言葉だ。

環境省の説明では、2030年までにネイチャーポジティブを実現することが、2050年ビジョン「自然と共生する世界」に向けた短期目標とされている。

カーボンニュートラルとの違い

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにする考え方で、気候変動への対策だ。一方、ネイチャーポジティブが扱うのは生物多様性、つまり生き物と生態系の豊かさである。

ただし、二つは切り離せない。環境省も、ネイチャーポジティブの実現には生態系の保全と回復だけでなく、気候変動対策や、持続可能な生産・消費のための取り組みも必要だとしている。

リジェネラティブツーリズムとの違い

リジェネラティブツーリズム(再生型観光)は、観光の分野の考え方だ。「害を減らす」にとどまらず、訪れた地域の自然・文化・コミュニティをより良い状態にすることを目指す。

ネイチャーポジティブは観光に限らない。社会と経済全体で目指す、自然についての目標である。リジェネラティブツーリズムのうち自然の回復に関わる部分は、旅という場でネイチャーポジティブを形にする方法のひとつといえる。くわしくはリジェネラティブな旅とはで紹介している。

エコツーリズムとの違い

エコツーリズムは、地域の自然や文化を体験して学びながら、その保全にも配慮する観光のあり方だ。ガイドと歩く自然観察ツアーなどがわかりやすい例である。

エコツーリズムが「旅のかたち」を指すのに対し、ネイチャーポジティブは「自然の状態をどこへ向かわせるか」という目標を指す。エコツーリズムは、自然を傷つけずに楽しむことに重きを置く。ネイチャーポジティブの視点を重ねると、「その旅のあと、自然は前より豊かになったか」という問いが加わる。

ネイチャーポジティブが注目される背景

きっかけのひとつは、2022年12月に開かれたCOP15で、生物多様性についての新たな国際目標が決まったことだ。この「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、「2030年までに生物多様性の損失を食い止め、反転させ、回復軌道に乗せる」という方向性がはっきり示された。

日本では、2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)が2023年2月28日の第1回総会で「J-GBFネイチャーポジティブ宣言」を発表した。ネイチャーポジティブの実現には社会経済全体の変革が必要だという考えから、そうした社会経済活動を広げることを目指す宣言だ。

その後、J-GBFは2023年9月12日の第2回総会で2023〜2025年度の行動計画を公表した。2025年9月9日の第4回総会では、構成団体の取り組み事例集を公表している。さらに2026年9月14日の第5回総会では、2026〜2028年度の新しい行動計画をまとめた。

ニュースや企業の発表でこの言葉を目にする機会が増えたのは、こうした国際目標と国内の動きが重なっているためだと考えられる。

観光にとっての意味

観光は、自然の恵みに大きく頼る営みだ。山の景色も、海の透明さも、旬の食材も、生態系が健全であってこそ楽しめる。

一方で、観光は自然に負荷もかける。人が集中すれば植生が踏み荒らされ、ごみが増え、移動では温室効果ガスが出る。だからこれまでの観光は、負荷を「減らす」ことを中心に語られてきた。

ネイチャーポジティブの視点に立つと、もう一歩先が見えてくる。ガイド料や入域料が保全の資金になる。旅人が生き物の調査や森づくりに手を貸す。地域の人が自然を守ることに誇りと収入を見いだす。観光が自然の回復を支える側に回る道筋だ。持続可能な観光全体の考え方は、サステナブルツーリズムとは?で整理している。

旅の中のネイチャーポジティブ

旅人ひとりにできることは小さく見える。それでも、旅には自然との関係をつなぎなおすきっかけがいくつもある。

生き物の記録で調査に加わる

市民科学(シチズンサイエンス)とは、研究者ではない市民が、生き物の観察記録などのデータ集めに参加するしくみだ。旅先で出会った鳥や植物を写真に撮り、観察記録を共有できるアプリや地域の調査プログラムに送る。それだけで、その土地の生き物の分布を知る手がかりになる。

ただ眺めていた景色が、名前のある生き物の集まりに見えてくる。旅の解像度が上がる体験でもある。

「何をしているか」で宿やツアーを選ぶ

「サステナブル」「エコ」と名乗るだけでは、自然の回復につながっているかはわからない。見るべきは具体的な中身だ。どの生き物や生息地を、誰と、どんな方法で守っているのか。その結果を公開しているのか。

保全活動に参加できるプログラムがあるか、地元のガイドや研究者と組んでいるか。予約の前に公式サイトで確かめてみてはどうだろう。

旅を一度きりで終わらせない

自然の回復には時間がかかる。同じ森や海に季節を変えて通えば、植えた木の育ちや生き物の戻り具合を自分の目で確かめられる。旅先で知った保全団体の活動を、帰ってからも追いかけるのもひとつの関わり方だ。

一方で、どんな旅にも移動の負荷がある。回復に関わる旅でも、負荷がゼロになるわけではない。移動手段を選ぶ、一か所に長めに滞在するなど、負荷を減らす工夫と回復に関わる行動。その両方を組み合わせるのが現実的だ。

【参照サイト】J-GBFネイチャーポジティブ宣言 | 環境省

ネイチャーポジティブの最新情報

用語集一覧

かな・アルファベット順

あ行

アウトバウンド
アグリツーリズム
アメニティ
アルベルゴディフーゾ
イールドマネジメント
イコールフッティング
イベント民泊
今すぐ予約(Airbnb用語)
インバウンド
二毛作民泊
オーバーツーリズム

か行

簡易宿所
規制改革会議
クラウディング・アウト
グリーンウォッシュ
ゲスト(Airbnb用語)
国家戦略特区

さ行

サステナブルツーリズム
サテライト民泊(サテライト型簡易宿所)
シームレス民泊
シェアリングエコノミー(共有型経済)
住宅宿泊協会(JAVR)
城泊
ジョブケーション
スーパーホスト(Airbnb用語)
スペシャルオファー(Airbnb用語)
スマートロック

た行

ダイナミックプライシング
特区民泊
テラハク

な行

農泊(農山漁村滞在型旅行)
ネイチャーポジティブ

は行

ハウスマニュアル
ハウスルール
泊食分離
バケーションレンタル
ブレジャー・ブリージャー(bleisure)
分散型旅行
分散型ホテル
ホームステイ型民泊
ホスト・メンター・プログラム(Airbnb用語)
ホスト(Airbnb用語)
ホスト保証(Airbnb用語)
ホスト補償保険(Airbnb用語)
ホスピタリティテック

ま行

マイクロツーリズム
民旅
民泊サービスのあり方に関する検討会
メタ観光

や行

ヤミ民泊

ら行

リスティング(Airbnb用語)
リネン
旅行業法
旅館業法
レスポンシブルツーリズム

わ行

ワーケーション

A-Z

ADR(Average Daily Rate:平均客室単価)
ブリージャー(bleisure)
BnB(Bed & Breakfast)
DMO(Destination Marketing/Management Organization)
OTA(Online Travel Agency)
RevPAR(Revenue Per Available Room)

目的別

Airbnb関連

今すぐ予約(Airbnb用語)
ゲスト(Airbnb用語)
スーパーホスト(Airbnb用語)
スペシャルオファー(Airbnb用語)
ホスト・メンター・プログラム(Airbnb用語)
ホスト(Airbnb用語)
ホスト保証(Airbnb用語)
ホスト補償保険(Airbnb用語)
リスティング(Airbnb用語)

観光・旅行関連

アグリツーリズム
ジョブケーション
マイクロツーリズム
ブレジャー・ブリージャー(bleisure)
分散型旅行
分散型ホテル
メタ観光
レスポンシブルツーリズム
ワーケーション
オーバーツーリズム
城泊

宿泊・ホテル業界関連

アウトバウンド
アメニティ
アルベルゴディフーゾ
イールドマネジメント
インバウンド
ダイナミックプライシング
リネン
ADR(Average Daily Rate:平均客室単価)
BnB(Bed & Breakfast)
RevPAR(Revenue Per Available Room)
OTA(Online Travel Agency)
泊食分離

民泊全般

イコールフッティング
イベント民泊
二毛作民泊
簡易宿所
規制改革会議
国家戦略特区
サテライト民泊(サテライト型簡易宿所)
シームレス民泊
シェアリングエコノミー(共有型経済)
住宅宿泊協会(JAVR)
スマートロック
特区民泊
テラハク
ハウスマニュアル
ハウスルール
バケーションレンタル
ホームステイ型民泊
ホスピタリティテック
民旅
民泊サービスのあり方に関する検討会
ヤミ民泊
旅行業法
旅館業法
DMO(Destination Marketing/Management Organization)

The following two tabs change content below.

Livhub 編集部

Connecting the world through journeys.

Livhub(リブハブ)は、サステナブルツーリズムで世界をつなぐ旅マガジンです。良質な旅の機会をより多くの人に開き、旅を通して世界を明るい方に向かわせるべく活動しています。サステナブル・リジェネラティブな旅や体験の情報を掲載しています。
Instagram,X,Facebook