これからは自分も自然も豊かにする旅へ。いま注目のあたらしい「リジェネラティブ」な旅とは?

環境を考慮し、次世代に繋がる持続可能な世界を目指す人々を中心に、近年注目を浴びる「リジェネレーション」という概念。その言葉は観光業でも関心が集まっており、「リジェネラティブ・ツーリズム」と呼ばれる新たな動きが世界中で広がっています。

本記事では、「リジェネラティブ・ツーリズム」について解説をしつつ、国内事例や参加可能なツアーを紹介します。

リジェネラティブ・ツーリズムとは

リジェネラティブ・ツーリズム(Regenerative tourism)とは、旅行者が楽しみながら、旅先の自然環境や文化により良い変化をもたらす旅行を指します。日本では再生型観光と呼ばれたり、リジェネラティブ・トラベル(Regenerative travel)とも呼ばれます。

比較されやすいサステナブルツーリズムは、旅行先の地域環境を守り、損害を与えないことを大事にしています。一方でリジェネラティブ・ツーリズムは、旅行者が旅先の自然環境や文化を深く知り、積極的に関わることで旅行者もその地域もより豊かになることに焦点を当てています。

リジェネラティブ・ツーリズムの事例

日本国内でアクティビティを楽しみながら地域のより良い未来の力になれるプログラムをいくつかご紹介します。

レンジャーとしてやんばるの森を調査 行き先不明の保全体験型ミステリーナイトツアー「AKISAMIYO」

沖縄県やんばるの森のナイトツアー「AKISAMIYO」は、世界自然遺産に指定されたこの森を保全するための環境モニタリング調査を体験できるプログラムです。参加者はレンジャーとして、希少な野生動植物の保護や環境状況の調査に参加します。調査データは保全活動に役立てられ、参加者からの協力金は外来種対策などに活用されます。

やんばる地域は固有種が豊富で、2011年から地域住民と環境省が協力して環境モニタリングを行っています。具体的な調査場所は希少生物保護のため秘密にされており、専属ガイドの案内でGPSを使用して散策と調査を行います。車で移動しながら、整備された林道を歩き、発見した希少生物の情報を記録します。

普段は見ることのない夜の生き物達との出会いや、不思議な鳴き声、街の喧騒から離れた静寂さ、満天の星など、やんばるの森の魅力を味わいながら、美しい森を守り、次世代への継承を支援する体験型ツアーです。

普段は入れない阿蘇の草原を五感で感じ、迫力の「野焼き」を見学 「リジェネラティブツーリズム in 阿蘇」

Image via: greenz.jp

熊本県阿蘇の草原を探索し、自然と共生する生活について考える、NPO法人グリーンズが運営する特別なツアーです。このツアーでは、通常は立ち入り禁止の草原に入り、地元組合「阿蘇グリーンストック」の協力のもと、草原の保全活動に参加することができます。専務理事の増井太樹さんによる草原研究の講座もあり、環境再生の重要性について学びます。

また、伝統的な「野焼き」を見学し、阿蘇の「あか牛」を味わう夕食や、硫黄温泉が特徴の「地獄温泉 青風荘」での宿泊も楽しめます。
阿蘇の雄大な自然を五感で体験し、持続可能な社会について考える貴重な機会となっています。
(2024年3月のツアーは終了しました)

楽しく山を歩きながら、山に恩返し「八ヶ岳サステナブル・フォレストツアー」

八ヶ岳ブルーと呼ばれる澄んだ青空の下、雄大な山容を見せる八ヶ岳連峰。株式会社八ヶ岳登山企画が運営するこのツアーでは、長野県と山梨県にまたがる八ヶ岳の豊かな自然を守るための活動に参加します。地域の歴史や文化、自然や動植物について学び、山に恩返しをするプログラムです。

ツアーは次の4種類が提供されています。

①フォレストウォークツアー(⼭岳資源):
⿅の⾷害、森林管理と植樹の担い⼿不⾜、森の景観悪化等の地域課題を体感し、解決⽅法を考える体験ツアー
②フォレストツーリズム(森林資源):
苗⽊植付、森林の下刈り、間伐や皆伐及びその⽊材を使⽤する森林の循環を肌で感じる体験・⾒学ツアー
③⾥⼭再⽣ツアー(⾥⼭資源):
国蝶オオムラサキの保全団体とともに伐採・下草刈り・ウッドカービングなどを体験し、楽しみながら⾥⼭再⽣に貢献するツアー
④フォレストファームツアー(畑資源):
堆肥、⼟づくりから野菜栽培に携わる農業収穫体験

雪国の歴史、⽂化、伝統、暮らしに触れられるロングトレイルを歩いて守る「スノーカントリートレイルハイカーサポートキャンペーン」

雪国観光圏推進協議会が設置するスノーカントリートレイルは、日本の雪国観光圏3県7市町村をつなぐ全長約307kmのロングトレイルです。このトレイルは、古い街道や峠道などの古道、山岳の縦走路など、変化に富んだコースです。
また、温泉地を巡るようにルートが設定されているので、温泉で身体を休めながら次の温泉地へと歩く旅も楽しむことができます。

さらに、コース周辺には社寺仏閣や棚田、現代アートなどの見所も多くあります。初心者向けのモデルコースも提供されており、ロングトレイルの醍醐味を手軽に体験することが可能です。
6月から11月にはスノーカントリートレイルのハイカーを応援するハイカーサポートキャンペーンが実施されています。2023年のキャンペーンは6月1日から11月30日まで実施され、2024年は6月上旬から開催予定です。
特典付きのSCTハイカー証ステッカーを購入することで、飲料水の提供やトイレの利用、入浴割引サービスや飲食割引サービスなど、様々なサポートが受けられます。ステッカーの売上はスノーカントリートレイルの道標整備などに使われます。

アートホテルでくつろぎ、パラグライダーで空中散歩「楽土庵」

Image via 楽土庵

楽土庵は富山県西部・砺波平野に広がる日本最大の散居村という形態の集落にあります。日本の集落の多くは家々が寄り集まった集村であるのに対し、田畑のなかに家々が分散する形態を散居村と呼びます。
楽土庵では、豊かな水が育む富山の食、美しさを通じて呼びかけるアート・インテリアを寛ぎながら堪能できます。

地域の自然、文化に触れるアクティビティも用意されており、パラグライダーで標高差400mを飛行しながら、眼下に広がる砺波平野の散居村、水の枯れない神秘の縄が池、正面に霊山・医王山、はるかに富山湾までを見渡せる絶景を楽しめます。特に、眼前と足元に広がる「散居村」の景観は圧巻。500年以上の歳月をかけて富山の自然と人がつくりあってきたその美しい営みを実感できます。
楽土庵では、国の重点里地里山に選定されている「となみ野の散居村」保全に取り組んでおり、宿泊代金の2%が散居村保全活動団体への寄付などに充てられます。

「リジェネラティブ」な旅のすすめ

日常を離れて、旅先のおいしいものをいただき、絶景に感動し、アクティビティを楽しみ、宿でゆっくり身体を休める。そうすることで自分も、そして旅先の地域もより豊かになる。これからはそんな「リジェネラティブ」な旅をしてみませんか?

【参照サイト】保全体験型ナイトツアー AKIAMIYO
【参照サイト】リジェネラティブツーリズム in 阿蘇
【参照サイト】八ヶ岳サステナブル・フォレストツアー
【参照サイト】スノーカントリートレイルハイカーサポートキャンペーン
【参照サイト】楽土庵
【参照サイト】JR西日本 富山県砺波市散居村
【参照サイト】観光庁 サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりモデル事業

【関連サイト】IDEARS FOR GOOD リジェネラティブ・ツーリズムとは・意味
【関連サイト】IDEARS FOR GOOD サステナブルツーリズムとは・意味