「ジョブケーション」とは、「ジョブ（仕事）」と「ワーケーション」を合わせた造語です。内閣府が2021年7月に公表している「政策課題分析シリ－ズ 20 新しい働き方と地方移住に関する分析 ―コロナ禍における働き方への意識の変化をもとに―」の中で、ジョブケーションは下記のように定義されています。
「ジョブケーション」とは、「ジョブ（仕事）」と「ワーケーション」を合わせた造語であり、自分の好きな場所でワーケーションをしながら、その地域での仕事にも副業として関わる、新しい働き方の一つである。ジョブケーションは、それを行う人にとっては、自分が魅力を感じる地域で仕事を通じて地域に貢献することができ、また、地域にとっては、ジョブケーションをする人との協働を通じて地域企業の経営改革やイノベーションの創出などの可能性が期待できるものである。現在、一部の自治体などによる取組がみられるが、今後の動向が注目される。（内閣府「政策課題分析シリ－ズ 20 新しい働き方と地方移住に関する分析 ―コロナ禍における働き方への意識の変化をもとに―」より引用）
ジョブケーションとワーケーションの違い
ワーケーションは、ワーケーション期間中に自身の業務をテレワークでこなすことを前提としているのに対し、ジョブケーションは、ワーケーションを通じて「地域企業の仕事に副業として関わる」という点が最も大きく異なる点となります。
ジョブケーションのメリット
ジョブケーションの実施は、地方自治体・受入企業・個人にとってそれぞれ下記のようなメリットがあります。
地方自治体のメリット
- 関係人口の増加
- 地域企業の経済支援
- 移住促進のきっかけづくり
ジョブケーションを受け入れる自治体としては、ワーケーションと同様に関係人口の増加につなげられ、観光収入の増加が期待できるだけではなく、地元企業の経営支援やイノベーション創出、地域経済の活性化につなげることも可能です。また、仕事を通じて企業と個人が知り合う場合、関係がより長期化しやすいというメリットがあり、最終的な移住促進につなげることもできます。
受入企業のメリット
- 優秀な副業人材の獲得
- イノベーション創出
- 販路開拓・プロモーション強化
地方部で人材不足に悩む企業にとっては、都心部のスキルを持った副業人材にアクセスできるようになることは大きなメリットとなります。自社にはない強みや経験を持つ副業人材を招き入れることで、イノベーション創出につなげることができます。また、自社の商品や地域の魅力を都心部で発信してもらえる可能性も高まります。
個人のメリット
- 地域での就業体験
- 副業によるスキル・キャリア構築
- ワーケーション費用の削減
ジョブケーションに参加する個人としては、転職などのリスクを追うことなく地方の中小企業における就業体験という貴重な機会が得られることができ、今後のキャリアやスキルアップにも大いに役立ちます。また、副業を通じて収入を得ることで、ワーケーションに伴う費用の一部を賄えるという点も魅力となります。将来的に地域への移住を考えている方にとっても非常に有意義な体験となります。
ジョブケーションの課題
ジョブケーションを推進するにあたっては、下記のような課題があります。
- 企業と個人のマッチング
- 企業と個人の継続的な関係構築
企業と個人のマッチング
ジョブケーションの実施にあたり、一番の課題となるのは、受入先企業と副業人材のマッチングです。地域の中小企業の中には、副業人材を受け入れる環境が十分に整備されておらず、社内の理解が得られなかったり、受入れ後のサポートがうまくいなかったりするケースもあります。一方の個人も、地域の仕事に何らかの形で関わりたいと思っていても、自身のスキルや経験をどのように活かせるかが分からないという方が多いのが現状です。ジョブケーションを成功させるためには、企業と個人をマッチングするコーディネーターの役割も重要となります。
企業と個人の継続的な関係構築
ジョブケーションの理想形は、仕事をきっかけに個人が企業やその地域と長期的に関わり、ワーケーション期間の終了後もオンラインでのコミュニケーションや定期的な訪問により地域企業の事業を継続的に支援し、結果として地域が活性化するという状況です。ジョブケーションを成功させるためには、一度きりの副業体験ではなく、継続的な関係をいかに構築できるかが鍵を握ります。
ジョブケーションの事例
複数の地方自治体で、ジョブケーションを通じた地域企業の経営改革、副業人材採用、イノベーション創出に向けた模索が行われています。
まとめ
ワーケーションの新しい形態の一つとして注目が集まりつつあるジョブケーション。興味がある自治体や地域企業、個人の方は、ぜひ一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか？
