厚生労働省および観光庁は3月16日、昨年6月末に閣議決定した「規制改革実施計画」を踏まえて進めていた「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」の議論をまとめた中間整理を公表した。
最終的な中間整理は、前日15日に開催された第7回の検討会にて提出された中間整理案から一部文言修正などがあるものの、骨子は変わりない。公開された内容のポイントをまとめると下記の通り。
総論について
- 民泊サービスをめぐる規制にあたっては、現行制度の枠組みの中で対応する「早急に取り組むべき課題」と、現行制度の枠組みを超えた検討が必要な「中期的な検討課題」との2つに分けて整理する。
- 多様な「民泊サービス」を一律に捉えるのではなく、家主の有無、管理者の有無、戸建てか共同住宅か、個人所有か法人所有かなど、その形態や特性に応じて整理する。
今後の方向性としては、現行の旅館業法の制度を活用した枠組みで短期的な運用を担保しつつ、中長期については現行制度の枠組みを超えた検討が必要との姿勢が示されている。また、民泊の形態や特性に応じた柔軟な制度設計を検討するという点も挙げられており、旅館業法の簡易宿所の枠組みを活用した民泊規制緩和はあくまで一時的なもので、長期的な制度設計の中で形が変わる可能性があることが示唆されている。
早急に取り組むべき課題
- 「民泊サービス」については旅館業法の「簡易宿所の」枠組みを活用し、旅館業法の許可取得を促進するべき
- 「民泊サービス」においては現行の簡易宿所の客室面積基準である「延床面積33㎡以上」は合理性にかけるため、同基準を見直し、対象物件の類型を問わず宿泊者数が10人未満の場合は、宿泊者一人あたり面積を3.3㎡に設定の上、宿泊者数に応じた面積基準(3.3㎡×宿泊者数以上)とするべき
- 家主不在のケースでも、宿泊者の本人確認、緊急時の対応体制など一定の管理体制を確保することを前提に、旅館業法の許可対象とすべき。一定の管理体制が確保される限り、玄関帳場の設置も要しないこととすべき
- 旅館業法の許可にあたり、関係法令だけでなく賃貸借契約や管理規約(共
同住宅の場合)に反していないことの確認に努めるべき
早急に取り組むべき課題のポイントとなるのは、一人当たり3.3㎡が確保できていれば、33㎡以下のワンルームマンションなどでも民泊が可能となるという点だ。また、一定の管理体制さえ整えば玄関帳場の設置も必要なくなる方向性で検討されている。
中期的な検討課題
- 家主居住で自宅の一部を貸し出す、いわゆる「ホームステイ民泊」については、許可制ではなく届出制にするなど緩和の対象とすべき
- 共同住宅の空き室・空き家など家主不在の「民泊サービス」についても、管理事業者を介在させ、家主に代わって一定の責務を担わせることにより緩和の対象とできないか
- 届出制に緩和する場合でも、現行の旅館業法上営業者に義務付けられている宿泊者名簿の備付義務や一定の(最低限の)衛生管理措置は求めるべきではないか
- 宿泊拒否制限については、「民泊サービス」にはなじまず、今日的意義も薄れているという指摘もあり、合理的なものとなるよう見直す方向で検討すべき
- 旅館業法に基づく営業許可を受けずに営業を行っている事業者に対する罰則は、罰金額を引き上げるなど実効性のあるものに見直すべき
中期的な検討課題のポイントとなるのは、「ホームステイ民泊」が許可制ではなく届出制となるという点だ。また、旅館業法の許認可を得ていない違法な民泊事業者に対する罰則強化も盛り込まれており、実質上の規制強化にあたる。
これらの「中間整理」を基に、検討会では引き続き中期的に検討すべき課題について幅広い観点からスピード感をもって報告書のとりまとめに向けて検討を続けていくとしている。民泊サービスの規制をめぐってはこの検討会以外にも規制改革会議が独自に検討を進めているほか、政府が新たな新法の制定を検討している(参考記事:民泊の新法、管理業者を登録制にしてトラブル対応を義務化、旅館業法適用外へ。日経新聞報道)という話もある。
旅館・ホテル関連業界団体からの民泊規制強化に向けた圧力も高まっているなかで、政府は最終的にどのような制度設計に落ち着けるのか。引き続き今後の展開から目が離せない。
【参照ページ】「「民泊サービス」のあり方について(中間整理)」を取りまとめました!
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