民泊とは?法規制・種類・課題を徹底解説!

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最近ではテレビや新聞などでも「民泊(みんぱく)」という言葉を目にする機会が多くなりました。ここでは「民泊」についてあまり詳しく知らない方のために、民泊の定義やなぜ民泊が注目されているのか、民泊の種類や民泊をめぐる法規制、現状の問題点などについて詳しくご紹介します。

民泊とは?

日本における「民泊」とは、かつては農村や漁村の民家などに宿泊・滞在することを指していましたが、ここ数年でAirbnb(エアー・ビー・アンドビー)をはじめとする個人同士の部屋の貸し借りを仲介するインターネットサービスが急激に普及したことで、「民泊」の意味そのものが大きく変わりつつあります。

「民泊」という言葉に法律上の明確な定義がありませんが、現在では「民泊」と言えば一般的に自宅の一部や全部、または空き別荘やマンションの一室などを他人に有償で貸し出すことを指すようになっています。

日本では個人が自宅の空き部屋を貸し出すといった小規模なものから、不動産企業が訪日外国人向けに建設した宿泊施設にいたるまで幅広い形態の宿泊サービスが「民泊」と呼ばれています。一方の海外では「バケーションレンタル」「ホームシェアリング」といった表現が使われており、企業によって使用する表現も異なっています。

なぜ、民泊が注目されているのか?

日本では、「民泊」が新たな成長産業の一つとして不動産業界や旅行業界、IT業界、小売業界などあらゆる業界から多くの注目を集めており、投資家も民泊に関わるサービスを提供する企業に対してはその成長性を見込んで熱い視線を注ぎ続けています。また、観光立国を掲げる政府自体も民泊市場の健全な拡大に向けて様々な法規制の整備を進めており、長期的な観光政策の柱の一つとして民泊の推進を掲げています。なぜ「民泊」はこのようにあらゆる方面から注目を浴びているのでしょうか。その理由としては主に下記の4つが挙げられます。

  1. 訪日外国人観光客増加と宿泊施設不足
  2. 空き家活用など地方創生へのきっかけ
  3. シェアリング・エコノミーの推進
  4. 不動産投資の新たな選択肢

1. 訪日外国人観光客増加と宿泊施設不足

民泊を語るうえで外せないのが「訪日外国人観光客の増加」と「宿泊施設の不足」というテーマです。日本政府は経済成長の柱の一つとして「観光立国」を推進しており、2020年までに訪日外国人観光客数を4,000万人、2030年までに6,000万人まで増加させるという目標を掲げています。政府はこの目標実現に向けてビザ緩和や海外現地での訪日プロモーション強化、LCCも含めた就航路線の拡充など様々な政策を進めており、結果として2016年には約2,400万人、2017年には約2,800万人を超える外国人が日本を訪れるなど、海外からの観光客は過去最高を更新し続ける急速な勢いで増え続けています。

一方で、訪日外国人の増加と同時に課題が顕在化しているのが宿泊施設の不足です。外国人観光客の増加に伴い、東京や大阪、京都など主要な地域のホテルの稼働率はピーク時には80%~90%台まで高まることもあり、客室単価は高騰しています。この急速に増加し続ける宿泊需要に対応するための受け皿として期待されているのが「民泊」なのです。

2. 空き家活用など地方創生へのきっかけ

民泊は、訪日観光客需要への対応だけではなく、日本が抱える社会課題の一つである「空き家問題」を解消し、地方創生を実現するための切り札としても期待されています。総務省のデータによれば、2013年の日本の総住宅数6063万戸のうち、空き家数は820万戸と2008年と比較して8.3%増加しており、日本全体の空き家率は13.5%と過去最高レベルにまで上昇しています。また、野村総合研究所の調査によれば、2033年には日本の空き家率は30.4%まで増加するとの試算もあり、人口減少が進む日本において空き家問題は日に日にその深刻さを増しています。

空き家を減らすためには「住む人」を増やすしかありませんが、移民政策に消極的な日本において今後も人口が増加するというシナリオは見込めません。そこで期待されているのが、空き家を民泊施設にリノベーションするという方法です。つまり、海外からやってくる観光客を「短期移民」として捉え、日本滞在時の施設として活用してもらうことで不動産としての価値を保つという考え方です。また、特に人口流出により空き家問題が深刻化している地方部に外国人観光客が訪れる流れを作り出すことができれば、観光収入の増加や新たな人々との交流などを通じて地域活性や地方創生の大きなきっかけにもなります。

3. シェアリング・エコノミーの推進

Airbnbをはじめとする「個人同士が空き部屋を貸し借りする」という民泊仲介サービスは、「シェアリング・エコノミー」サービスとしても注目されています。総務省は「シェアリング・エコノミー」という言葉について下記のように定義しています。

「典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる。シェアリング・エコノミーはシリコンバレーを起点にグローバルに成長してきた。PwCによると、2013年に約150億ドルの市場規模が2025年には約3,350億ドル規模に成長する見込みである」(※総務省「シェアリング・エコノミーとは」より引用)

民泊の普及は、訪日観光客需要への対応や空き家問題の解消といった国内の視点だけではなく、このシェアリング・エコノミーという世界的な潮流の観点からもとても重要です。今、世界の旅客利用者数は毎年3%~5%の割合で増加し続けています。これには世界人口の増加、ビジネスのグローバル化による国外出張の増加、アジアをはじめとする中間所得層の増加による海外旅行者数の増加など様々な要因がありますが、世界の人々はいまだかつてないほどに自宅を離れ、自宅以外の場所で過ごす時間が長くなっているのです。

この増加し続ける旅客者の宿泊需要に対応するために各国が新規にホテルを建設し続けるのは、資源や効率性の面から考えると優れた経済戦略だとは言えません。誰かが旅行や出張で自宅を離れている間、その自宅は不稼働資産となるわけですから、それであればその自宅をお互いに貸し出し合ったほうが、最小限のコストで宿泊需要を満たすことができ、資源を大量に投下して無駄にホテル建設を続けるよりもはるかに効率的で持続可能な経済モデルを作り出すことができるのです。その意味で、部屋のシェアリング・エコノミーである民泊の普及は地球環境や社会全体にとってポジティブな影響をもたらす仕組みだと言えます。今後は民泊以外にも様々な形態が登場し、「住」領域そのものがよりオンデマンド(使いたいときに使い、使った分だけ支払う)な仕組みへと進化していくことが予想されます。

4. 不動産投資の新たな選択肢

民泊は、不動産投資家の間でも高い収益性が見込める新たな選択肢として注目を集めています。先述したように、日本国内では人口は減少し続けているにも関わらず住宅数は増え続けており、結果として空室率が過去最高レベルまで高まっています。それに比例してアパート経営やマンション投資といった通常の不動産投資に対するリスクは高まっており、人気エリアの物件についても既に利回りが低下しており、投資対象としての魅力が薄れているのが現状です。

だからといって、訪日外国人観光客の需要に対応するために新規にホテルを建設するというのも一般の不動産投資家にとって現実的な選択肢ではありません。そこで人気が高まっているのが民泊投資なのです。

民泊投資は空き家や空きビルをリノベーションして旅館業法の免許を取得し、運用するといったものから、民泊用に建設されたマンションの一室を購入して運用するといったものまで様々ですが、運用次第では通常の不動産投資よりも遥かに高い利回りを実現することができるのです。今後、民泊事業に向けたローンや保険などの金融商品が充実すれば、投資家の資金はさらに民泊市場へと流入し、市場が盛り上がっていくことが予想されます。民泊市場は、投資家にとって国内に残された数少ない成長市場の一つでもあるのです。

民泊の種類と法律

これまで説明してきたように「民泊」は様々な理由から注目されていますが、実際にはその運用形態は多岐に渡っており、正確に理解できていないという方も多いのではないでしょうか。そこで、ここでは民泊をめぐる5つの法規制に基づいて、民泊の種類を分類してご紹介したいと思います。

  1. 旅館業法簡易宿所営業
  2. 特区民泊
  3. 住宅宿泊事業法
  4. イベント民泊
  5. 農泊

1. 旅館業法簡易宿所営業

日本では、空き部屋などを反復継続して有償で提供する場合は一部の特例を除いて旅館業法の許可を得る必要があります。旅館業法では旅館業を「ホテル営業」「旅館営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の4つに分類しており、宿泊施設を民泊として合法的に運用するために「簡易宿所」の許認可が求められます。

政府では旅館業の許認可を得ていない違法な「ヤミ民泊」を少しでも減らし、健全な民泊を推進するために、2016年4月からこの「簡易宿所営業」の許認可基準を緩和し、宿泊者が10人未満の場合については宿泊者数に応じた面積基準(3.3㎡×宿泊者数以上)となるように政令を改正しました。また、各自治体に対しては政令で設置を義務付けていない簡易宿所の玄関帳場設置などを条例などで義務付けている場合、条例の弾力運用などを検討するよう要請しています。

旅館業簡易宿所の許認可を取得すれば、合法的に365日間民泊を運用することが可能となるうえに、海外からの集客力が強いExpedia(エクスペディア)やBooking.com(ブッキング・ドット・コム)といったOTA(Online Travel Agent:オンライン旅行予約サイト)を通じた集客もできるため、許認可取得のための手間やコストはかかるものの、収益性の面では非常に優れた民泊運用スタイルとして認知されています。

【関連ページ】旅館業簡易宿所営業とは?許可要件や申請手続き、メリット・デメリットを徹底解説

2. 特区民泊

特区民泊とは、正式には「国家戦略特別区域(通称、国家戦略特区)」として「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」を定めた区域で行う民泊のことを指します。国家戦略特区に指定されている自治体が条例を定め、都道府県知事(保健所)が認定した施設については、特例として旅館業法の適用除外を受けられるという仕組みです。

特区民泊の制度を活用して民泊を行うためには、一居室の床面積が25㎡以上あること、施設の使用方法に関する外国語を用いた案内や緊急時における外国語を用いた情報提供が必要などの条件がありますが、特区民泊の条件のなかでも最も注目されていたのは滞在日数に関する制限です。

2014年3月に公布された国家戦略特区法の施行令では、滞在日数の下限を(7日~10日)として条例で定めることを規定していました。つまり、特区民泊の認定を受ける場合は、6泊7日以上の宿泊客しか受入れができなかったということです。しかし、この滞在日数の下限に関する制限は現実の需要に対応しきれておらず、そのままでは特区民泊の仕組みそのものが形骸化するとの懸念もあり、2016年10月に公布された施行令では滞在日数の下限が(3日~10日)へと緩和されました。この滞在日数の規制緩和により、特区民泊は国家戦略特区における合法的な民泊運用手段としてより魅力が増しています。

2018年時点で、日本では東京都大田区、大阪府、大阪市、福岡県北九州市、新潟県新潟市、千葉県千葉市にて特区民泊の制度を活用した「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」としての民泊事業が行われており、1,000件を超える物件が特区民泊認定を受けています。

特区民泊は国戦略特区でなければ活用ができない、依然として条例によって2泊未満の宿泊者は受け入れができないといったデメリットがあるものの、旅館業法簡易宿所よりも認定手続きが簡易でコストもかからないため、大阪市内をはじめとして戦略特区に位置している物件にとっては魅力ある民泊運用スタイルの一つとなっています。

【参照ページ】特区民泊とは?認定要件やメリット・デメリットを解説

3. 住宅宿泊事業法

旅館業法簡易宿所は1948年に公布された既存の法律を「民泊」という新たな宿泊スタイルに適用しているため、法律の制定当時とは社会背景や環境が大きく異なる現在の状況に合わせるうえでは様々な点で無理がありました。また、特区民泊についてもあくまで国家戦略特区における規制緩和に過ぎないため、民泊の全国的な広がりは期待できません。そこで2017年3月に閣議決定され、同年6月に可決されたのが、民泊に関わる新たな法律「住宅宿泊事業法(民泊新法)」です。

住宅宿泊事業法は2018年6月15日に施行され、同法下では「住宅宿泊事業者」と呼ばれる民泊ホストは、都道府県知事(保健所設置市はその首長)に対して「届出」さえすれば、旅館業法の許認可がなくとも「住宅宿泊事業」、つまり民泊を運営することが可能となりました。

届出をしたうえで合法的に民泊を運営するホストには各部屋の床面積に応じた宿泊者数の制限や清掃など衛生管理、非常用照明器具の設置、避難経路の表示、火災・災害時の宿泊者の安全確保、外国人観光客向けの外国語による施設案内、周辺住民からの苦情に対する対処、標識の設置など様々な義務が課されますが、この「住宅宿泊事業」を活用した民泊運営の最大のポイントは、一年間の営業日数の上限が「180日以内」と定められているという点です。

つまり、住宅宿泊事業法の施行により民泊は始めやすくなったものの、一方で年間の営業日数は180日以内と決まっているため、一年中365日、民泊施設として貸し出すことはできません。そのため、民泊を事業として見た際の収益性については厳しいという声があります。一方で、もともとホテルや旅館の年間稼働率が50%を下回っているような地方エリアにおいては、この営業日数上限がそれほど大きなネックとならないため、住宅宿泊事業法により地方での民泊はさらに活性化するという見方もあります。

また、住宅宿泊事業法をめぐっては、年間180日という営業日数上限のボトルネックを解消するために、30日以上のマンスリーマンション契約との組み合わせにより年間を通じて収益性を維持するというスキームも生まれています。

なお、住宅宿泊事業法により民泊が全国的に合法化されましたが、マンションの管理規約や賃貸契約書などで民泊による部屋の貸し出しが禁じられている場合には民泊を運営することができませんので注意が必要です。

【関連ページ】民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?

4. イベント民泊

「イベント民泊」とは、年に数回程度(1 回あたり2~3 日程度)のイベント開催時に一時的に宿泊施設の不足が見込まれ、開催地となる自治体の要請などにより自宅を提供するような公共性の高い民泊については「旅館業」に該当しないものとして取り扱い、旅館業法の許可がなくても宿泊サービスを提供することができるという仕組みです。お祭りやコンサートなどで一時的に急増する観光客のために宿泊施設を建設するのは効率的ではありませんので、そのタイミングだけ民泊を許可することで宿泊施設の供給数を増やすという「イベント民泊」の仕組みは非常に理に適った方法だと言えます。毎年数多くの観光客を呼び寄せる集客力の高いお祭りやイベントを持っている地方自治体にとっては、イベント民泊を有効に活用することで地域経済の活性化につなげることができます。詳細については厚生労働省が「イベント民泊ガイドライン」で定めています。

現状、イベント民泊の事例はそこまで多くないものの、これまでには青森県五所川原市の「立佞武多」、青森県弘前市の「弘前さくらまつり」、沖縄市が開催した「広島カープ優勝パレード」に合わせたイベント民泊などが開催されています。2017年8月に開催された徳島市の「阿波おどり」民泊では、阿波おどり期間中に地元住民らが部屋を貸し出し、過去最高規模となる延べ270名以上がイベント民泊を活用して宿泊しました。

イベント民泊が広がるためには、特に地方部における「民泊」そのものの認知向上や、宿泊客を受け入れる際の条件緩和、民泊施設の告知など様々な課題を克服する必要がありますが、日本には全国各地で訪日外国人を呼び寄せる力を持ったお祭りなどが数多く開催されているため、より多くの自治体がイベント民泊に取り組むことで、さらなる地方創生のきっかけが生まれることが期待されています。

【関連ページ】イベント民泊とは?
【関連ページ】イベント民泊が残したレガシー。阿波おどりの事例に学ぶ、民泊×地方創生のヒント

5. 農泊

農泊とは、農山漁村において日本ならではの伝統的な生活体験と農村地域の人々との交流を楽しみ、農家民宿、古民家を活用した宿泊施設など多様な宿泊手段によって旅行者にその土地の魅力を味わってもらう農山漁村滞在型の旅行のことを指します。農泊のスタイルで宿泊サービスを提供することを「農林漁業体験民宿」と言います。農林漁業体験民宿を開業するためには旅館業法簡易宿所の営業許可を取得する必要がありますが、政府は農泊を推進するために段階的な規制緩和を進めており、2016年4月からはその一環として農林漁業体験民宿業の営業者の対象範囲が拡大され、非農林漁業者が自宅の一部を活用して農林漁業体験民宿業を営む場合についても、簡易宿所の客室面積基準が適用除外となるように省令が改正されました。

【参照ページ】農泊とは?

主要な民泊法規制の比較

上記で説明したように、日本には様々な種類の民泊運営スタイルがあるため、民泊を事業として運営する場合は目的や立地、物件の条件などに応じて最適な運用方法を選択する必要があります。ここでは、改めて民泊運営スタイルとして最も一般的な「住宅宿泊事業法」「旅館業法簡易宿所」「特区民泊」という3つのスタイルについて、その特徴を分かりやすく比較表にしてまとめました。

住宅宿泊事業法 旅館業法簡易宿所営業 特区民泊
許認可など 届出 許可 認定
提供日数の制限 年間営業日数180日以内(条例で引き下げ可能) なし 2泊3日以上の滞在が条件
宿泊者名簿の作成・保存義務
玄関帳場の設置義務 宿泊者名簿の作成・保存ができれば物理的設置は求めない。 なし(条例による設置義務付けも可能) なし
最低床面積(3.3㎡/人)の確保(宿泊人数の制限) 一居室の床面積原則25㎡以上(自治体の判断で変更可能)
上記以外の衛生措置
(定期的な清掃等)

(換気、採光、証明、防湿、清潔などの措置)

(換気、採光、証明、防湿、清潔などの措置)
非常用照明などの安全確保の措置義務
(家主居住型で民泊部分の面積が小さい場合は緩和)

(建築基準法において措置)

(建築基準法において措置)
消防設備の設置(消火器、誘導灯、連動型火災警報器)
(家主居住型で民泊部分の面積が小さい場合は緩和)

(建築基準法において措置)

(建築基準法において措置)
近隣住民とのトラブル防止措置
(宿泊者への説明義務、苦情解決の義務)
(届出時にマンション管理規約、賃貸住宅の賃貸契約書の確認)
なし
(近隣住民への適切な説明、苦情対応)
不在時の管理業者への委託義務 なし なし

上記の比較表を見て頂ければ分かる通り、3つの方法にはそれぞれメリット、デメリットがあり、民泊をあくまで趣味の一環としてやるのか、副収入を目的としてやるのか、それとも事業として本格的に取り組むのか、など目的に応じてベストなスタイルは大きく変わってきます。もちろん、上記以外の民泊についてはイベント民泊などの特例を除けば基本的に「違法民泊」に該当し、旅館業法違反として罰則が課されます。

民泊をめぐる問題点

これまで説明してきたように「民泊」は訪日外国人需要への対応や空き家問題の解消、地方創生、シェアリング・エコノミーの推進といったポジティブな文脈で語られることが多い一方で、解決するべき様々な問題点や課題も浮き彫りになってきています。民泊をめぐる代表的な問題点としては、下記5つが挙げられます。

  1. ヤミ民泊
  2. 近隣住民とのトラブル・外部不経済
  3. 衛生管理・テロ対策などの安全面
  4. 旅館・ホテルとのイコールフッティング
  5. 課税の適正化

1. ヤミ民泊

現状日本において合法的かつ継続的に民泊事業を行うためには、旅館業法簡易宿所、特区民泊、住宅宿泊事業法のいずれかの方法をとるしかありません。しかし、旅館業法簡易宿所の許認可取得には用途地域や建物の設備なども含めて様々なハードルがあり、コストもかかるため誰もが利用できるわけではありません。また、特区民泊についても認定を受けられるのは国家戦略特区のみに限定されています。そして住宅宿泊事業法についても、年間180日という営業日数制限やマンション管理規約による制限などもあるため、誰もが活用できるわけではありません。結果として日本で横行しているのが「ヤミ民泊」と言われる違法な民泊運営です。「ヤミ民泊」は「グレーゾーン」と言われることもありますが、法律的には違法なので「グレー」ではなく「ブラック」です。

政府は2017年3月に閣議決定した旅館業法の改正案のなかで、「ヤミ民泊」の撲滅に向けて罰則規定を強化しました。具体的には無許可営業の場合の罰金の上限が3万円から100万円へと引き上げられたほか、懲役が科される可能性も出てきました。また、改正前にはなかった無許可営業している施設への立ち入り調査権限も付与されることになりました。

さらに、政府は住宅宿泊事業法の施行に向けて民泊に関する通報や相談を受け付けるコールセンターを設置し、提供日数や虚偽報告をチェックするためのシステム管理体制強化も進めるなど、「ヤミ民泊」の減少に向けた取り組みが進められています。

2. 近隣住民とのトラブル・外部不経済

民泊をめぐる一番の問題は、民泊ゲストやホストと近隣住民とのトラブルと言っても過言ではありません。ゲストが深夜に騒いだりマンションのルールを守らずにゴミを捨てたりして近所迷惑をかけるといった話は日常茶飯事ですが、こうした近隣住民とのトラブルについて、これまでは民泊事業者側に責任がなかったため、外部不経済としてそのまま放置されてきました。

住宅宿泊事業法においては、近隣住民とのトラブル防止措置として民泊ホストは宿泊者への説明義務と近隣住民からの苦情解決義務を負うため、状況が改善されることが望まれます。ただし、それだけではトラブルが全てなくなるとは限りませんので、政府は民泊に関する相談窓口を設置しているほか、各自治体が独自に相談窓口を設置するケースも増えています。

民泊をめぐるこの外部不経済の問題を解消し、民泊ホストとゲスト、そして近隣住民がどのように共生を図っていくかは今後の重要な課題だと言えます。

3. 衛生管理・テロ対策などの安全面

民泊は衛生管理やテロ対策などの安全面においても課題を抱えています。衛生設備が整っていない民泊物件の場合は感染病などが発生するリスクが高まりますし、民泊物件にはホテルや旅館とは違いキッチンがついているケースが多いため、日本の家電製品やガスコンロ、キッチンの使い方に慣れていない海外のゲストが火を扱うことで火事が起こるリスクも当然高まります。また、テロや犯罪行為の拠点として部屋が利用されるリスクもゼロではありません。

こうした安全面のリスクを少しでも減らすために、住宅宿泊事業法においては宿泊者の本人確認ができるよう、ホストに対して宿泊者名簿の作成・保存義務が課せられているほか、衛生管理や消防設備の設置なども義務として課されています。ただし、これらの対策だけでは不十分な点も多いため、今後はIoTを活用したセキュリティシステムの導入も進んでいくことが予想されます。

4. 旅館・ホテルとのイコールフッティング

民泊をめぐる法規制の制定や改正にあたって重要となるのが、既存の旅館・ホテルとの「イコールフッティング」という観点です。「イコールフッティング」とは、各事業者が同一条件の公平な環境下で健全な競争を行えるよう、法制度も含めた前提条件を整備することを指します。例えば、旅館・ホテル営業には消防設備の設置をはじめとして様々な義務が課されており、そのための運営維持コストがかかっているにも関わらず、民泊物件に対しては同様の規制が課されないとすると、両者は公平な競争環境下になく、イコールフッティングの観点からは望ましくありません。

このイコールフッティングを実現するために、政府は住宅宿泊事業法の制定により合法的な民泊の推進を進める一方で、旅館業法そのものの規制緩和も同時に進めています。この住宅宿泊事業法と旅館業法の規制緩和はワンセットで考えるべきであり、どちらが不利になることもなく、お互いに公平な前提条件のもとでホテル・旅館と民泊が顧客を奪い合う環境づくりをすることは、民泊市場が長期的に健全な形で成長していくうえでも非常に重要なポイントだと言えます。

5. 課税の適正化

民泊ホストがゲストから得た収入に対する課税をどうすべきかについても検討すべき課題は多くあります。既に東京都、大阪府、京都市など一部の自治体では民泊施設も対象として宿泊税の導入を進めるなど独自の政策を展開していますが、海外ではAirbnbなどの民泊仲介サイトが自治体に代わって税徴収を代行しているケースもあります。民泊に対する適正な課税・徴収方法については今後も整備が進んでいくと考えられます。

まとめ

いかがでしょうか。ここでは民泊の基本的な概要についてまとめましたが、民泊をめぐる法規制の動向については変化が激しいうえ、各自治体によっても対応が異なるケースが多いため、常に最新情報をチェックするように心がけることをおすすめします。

(Livhub 編集部)

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