政府の規制改革会議は5月19日、80項目の規制緩和策を盛り込んだ答申をまとめ、安倍晋三首相に提出した。その中で、一般住宅に旅行者らを有料で泊める「民泊」については全面的に解禁する方針を示す一方で、営業日数上限を「180日以下」とする条件を打ち出した。営業日数制限については政府内で具体的な上限値を詰めたうえで、2016年度中に法案を提出する。
民泊サービスをめぐっては、2015年6月の規制改革実施計画に基づいて厚生労働省と観光庁が主体となり「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」を開催し、検討を進めてきた。今年の4月からは早急に取り組むべき課題への対応として旅館業法の簡易宿所営業の営業許可基準を緩和され、いったんの民泊規制緩和がスタートしたが、この緩和はあくまで旅館業法という既存の枠組みを適用した暫定的な緩和だった。
今回規制改革会議が提案した答申は、民泊サービスについては既存のホテルや旅館を対象とする既存の旅館業法とは別の新しい法的枠組みを用意するというものだ。具体的には、「民泊」を「家主居住型」と「家主不在型」の2つに分類してそれぞれ異なる法規制の体系を構築し、「届出」制と「登録」制を軸として法整備を進める。規制の対象は民泊オーナー、民泊施設管理者、仲介事業者で、また「届出」や「登録」の手続はインターネット活用を基本とし、マイナンバーや法人番号の活用により住民票等の添付を不要とするなど、利便性に十分配慮する。今回の答申の内容は下記の通り。
民泊の類型
家主居住型
要件
- 個人の生活の本拠である(原則として住民票がある)住宅であること。
- 提供日に住宅提供者も泊まっていること。
- 年間提供日数などが「一定の要件」を満たすこと。
「一定の要件」としては、年間提供日数上限などが考えられるが、既存の「ホテル・旅館」とは異なる「住宅」として扱い得るようなものとすべきであり、年間提供日数上限による制限を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を設定する。なお、その際、諸外国の例も参考としつつ、既存のホテル・旅館との競争条件にも留意する。
枠組み
○ 届出制とし、以下の事項を義務化する。
- 利用者名簿の作成・保存
- 衛生管理措置(一般的な衛生水準の維持・確保)
- 外部不経済への対応措置(利用者に対する注意事項(騒音、ゴミ処理等を含む)の説明、民泊を行っている旨の玄関への表示、苦情等への対応など)
- (集合住宅(区分所有建物)の場合)管理規約違反の不存在の確認
- (住宅提供者が所有者でなく賃借人の場合)賃貸借契約(又貸しを認めない旨の条項を含む)違反の不存在の確認
- 行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供
○ 住宅として、住居専用地域でも民泊実施可能とする。地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能とする。
○ 宿泊拒否制限規定は設けない。
家主不在型
要件
- 個人の生活の本拠でない、又は個人の生活の本拠であっても提供日に住宅提供者が泊まっていない住宅であること。(法人所有のものも含む。)
- 年間提供日数などが「一定の要件」を満たすこと。
「一定の要件」としては、年間提供日数上限などが考えられるが、既存の「ホテル・旅館」とは異なる「住宅」として扱い得るようなものとすべきであり、年間提供日数上限による制限を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を設定する。なお、その際、諸外国の例も参考としつつ、既存のホテル・旅館との競争条件にも留意する。 - 提供する住宅において「民泊施設管理者」が存在すること。(登録された管理者に管理委託、又は住宅提供者本人が管理者として登録。)
枠組み
- 届出制とし、民泊を行っている旨及び「民泊施設管理者」の国内連絡先の玄関への表示を義務化する。
- 住宅として、住居専用地域でも民泊実施可能とする。地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能とする。
- 宿泊拒否制限規定は設けない。
2. 民泊施設管理者
枠組み
○ 登録制とし、以下の事項を義務化する。
- 利用者名簿の作成・保存
- 衛生管理措置(一般的な衛生水準の維持・確保)
- 外部不経済への対応措置(利用者に対する注意事項(騒音、ゴミ処理等を含む)の説明、苦情等への対応など)
- (集合住宅(区分所有建物)の場合)管理規約違反の不存在の確認
- (住宅提供者が所有者でなく賃借人の場合)賃貸借契約(又貸しを認めない旨の条項を含む)違反の不存在の確認
- 行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供
○ 法令違反行為を行った場合の業務停止、登録取消を可能とするとともに、不正行為への罰則を設ける。
3. 仲介事業者
枠組み
○ 登録制とし、以下の事項を義務化する。
- 消費者の取引の安全を図る観点による取引条件の説明
- 当該物件提供が民泊であることをホームページ上に表示
- 行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供
○ 届出がない民泊、年間提供日数上限など「一定の要件」を超えた民泊を取り扱うことは禁止。
○ 法令違反行為を行った場合の業務停止、登録取消を可能とするとともに、不正行為への罰則を設ける。
まとめ
今回の答申の中でも特に注目されるのが、家主居住型、不在型ともに「半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を設定する。」という営業日数制限がつく点だ。また、Airbnbなどをはじめとする民泊仲介事業者に対しては、年間提供日数上限など「一定の要件」を超えた民泊を取り扱うことを禁止し、法令違反行為を行った場合の業務停止、登録取消を可能とするとしており、営業日数制限を満たさない違法物件に対する取り締まり圧力は仲介事業者側からもかかることとなる。
営業日数制限が短くなればなるほど旅館業法の取得なしで商業的な民泊事業を合法的に展開することは実質上かなり困難となるため、今後は日数制限が最終的に何日以下となるのかに注目が集まりそうだ。
【参照資料】規制改革に関する第4次答申 – 内閣府
(Livhub ニュース編集部)
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