住宅宿泊事業法施行令(仮称)の案(以下、施行令案)および住宅宿泊事業法施行規則(仮称)の案(以下、施行規則案)が9月21日に公示され、パブリックコメントの募集も始まった。意見・情報の受付開始日は9月21日、意見・情報の受付締切日は10月11日となっている。これらの案はパブリックコメントの募集を経て、平成29年10月に公布、住宅宿泊事業法の施行の日と同日に施行される予定だ。
今回公示された案について、特に重要と思われる箇所について一部抜粋し、それぞれみていく。
施行令案について
まず、施行令の案では、住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例の基準(法第18条関係)として、「住宅宿泊事業を実施してはならない期間を指定して行う」こと、「区域の指定は、土地利用の状況その他の事情を勘案して、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止することが特に必要である地域内の区域について行う」こと、「期間の指定は、宿泊に対する需要の状況その他の事情を勘案して、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止することが特に必要である期間内において行う」ことなどが示された。
ポイントとしては、実施してはならない期間を指定した上で制限する条例を制定しなければならないという点、また、その区域や期間の指定は、民泊事業を行うことにより発生する、たとえば騒音やゴミの放置といった生活環境を悪化させる出来事を防ぐ必要がある期間内に限ることから、むやみに民泊実施の制限を行うような条例を制定することへの抑止効果を含んでいる点があげられる。
続いて、施行規則の案について、みていく。
住宅宿泊事業法施行規則(仮称)【国土交通省令・厚生労働省令】について
本項目では、民泊の運用にあたり関わりが深い、以下の点についてみていく。
- 人を宿泊させる日数の算定(法第2条第3項関係)
- 届出(法第3条第2項及び第3項関係)
- 宿泊サービス提供契約の締結の代理等の委託の方法(法第12条関係)
- 住宅宿泊事業者の報告(法第14条関係)
人を宿泊させる日数の算定(法第2条第3項関係)
住宅宿泊事業法(民泊新法)における180日の営業日数制限に係る、人を宿泊させる日数の算定(法第2条第3項関係)については、「毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間において人を宿泊させた日数とし、正午から翌日の正午までの期間を1日とする」ことが示され、日数の算定基準が明確となった。
届出(法第3条第2項及び第3項関係)
届出については、以下の項目が示された。
まず、届出書の様式等を定め、その届出書の記載事項は、「届出住宅の規模等」、「住宅宿泊管理業務を委託する場合には、住宅宿泊管理業者の商号、名称等」、「住宅が賃借物件である場合の転貸の承諾の旨」、「住宅が区分所有建物である場合には規約で住宅宿泊事業が禁止されていない旨(規約に住宅宿泊事業に関して定めがない場合は管理組合に禁止する意思がない旨)」等とすることとした。
つまり、民泊を運用するための住宅が一軒家かマンションかなどを記載した上、委託する場合はその管理業者の商号・名称を記載し、さらに賃借物件の場合は転貸してもよいというオーナーの許可があることを示し、加えてマンション等の区分所有建物の場合は民泊の運用が禁止されていないことを記載する必要がある。
さらに、その届出書に添付する書類は、「住宅の図面、登記事項証明書」、「住宅が賃借物件である場合の転貸の承諾書」、「住宅が区分所有建物である場合には規約の写し(規約に住宅宿泊事業に関して定めがない場合は管理組合に禁止する意思がないことを確認したことを証する書類)」等とすることがあげられた。
宿泊サービス提供契約の締結の代理等の委託の方法(法第12条関係)
民泊事業の運営を委託する場合の委託方法については、住宅宿泊事業者が「委託をしようとする住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に対し、当該住宅宿泊事業者の届出番号を通知することとする」ことが示された。すなわち、住宅宿泊事業者の届出番号が、住宅宿泊仲介業者または旅行業者へ通知されることが義務付けられることになることから、違法民泊(ヤミ民泊)抑止につながりそうだ。
住宅宿泊事業者の報告(法第14条関係)
「住宅宿泊事業者は、2ヶ月ごとに届出住宅に人を宿泊させた日数等を報告することとする」と示された。すなわち、民泊事業者が180日制限を超えた運用することができないよう、また虚偽の報告を抑止するような規定となっている。
厚生労働省関係住宅宿泊事業法施行規則(仮称)【厚生労働省令】について
宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置(法第5条関係)として、「届出住宅について、宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置は、①居室の床面積は宿泊者一人当たり3.3㎡以上を確保すること、②定期的な清掃及び換気を行うこととする」ことが示された。
国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則(仮称)【国土交通省令】について
住宅宿泊事業法(民泊新法)では、住宅宿泊事業者(民泊ホスト)と住宅宿泊管理業者(民泊運営代行会社)、住宅宿泊仲介業者(民泊仲介サイト)の3者を対象としており、それに沿う形で、住宅宿泊事業関係、住宅宿泊管理業関係、住宅宿泊仲介業関係を対象とした分類がなされている。
このうち、民泊運営代行会社を対象とする住宅宿泊管理業関係の中で「住宅宿泊事業者への定期報告(法第40条関係)」の項目があげられた。住宅宿泊事業者への定期報告は住宅宿泊事業法40条において民泊運営代行会社に対して義務付けられている。
ここでは「住宅宿泊事業者への報告を行うときは、住宅宿泊管理業務報告書を作成し、交付して説明しなければならないこととし、報告書に記載する事項は、住宅宿泊管理業務の実施状況、届出住宅の維持保全の状況、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情の発生状況等とする」ことが示された。
すなわち、民泊運営代行会社には報告書の作成や説明等の業務が課されることとなることから、扱う物件の態様、数によっては大きな負担となることが想定される。民泊運営代行会社各社は対応方法の検討を迫られそうだ。
まとめ
施行令案、施行規則案についてみてきたが、民泊事業に携わる各プレイヤーはこれらを把握した上で、今後の動きを検討すべきだろう。
【参照ページ】住宅宿泊事業法施行令(仮称)の案について(概要)
【参照ページ】住宅宿泊事業法施行規則(仮称)等の案について(概要)
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