公益社団法人経済同友会の「新産業革命と規制・法制改革委員会」は10月15日、住宅宿泊事業法に関する意見を公表した。同意見書では、住宅宿泊事業法の課題を指摘し、規制の方針について提案した。
まず、住宅宿泊事業法における過剰な規制は健全な民泊の発展を阻害するとした。住宅宿泊事業の届出件数について9月28日時点の9,607件(うち受理済件数8,199件)の数字をあげ、増加はしているものの、未だ低調な水準にあると評価した。この要因について、第一に民泊新法における180日の年間営業日数制限と自治体の条例における区域・期間の制限があること、第二に届出に必要な書類が多く手続が煩雑であることや、観光庁の「民泊制度運営システム」のみで届出が完結せず平日に複数の行政機関に出向く場合や消防署の立入検査を必要とする事例もあるなど、オンライン化が徹底されていないことをあげた。
また、民泊は共有型経済の特徴であるC to Cのビジネスとして発展してきたが、民泊新法はC to Cのビジネスに適した設計にはなっていないとし、このままでは事業者の撤退を加速させ、民泊の発展を阻害しかねないと指摘した。そのうえで、新たなサービスが生まれるような枠組みが必要であり、市場の特徴を踏まえた適切な事前規制を設けることにより新規参入を促進し、規制に違反した際の罰則や問題発生後の規制は強化すべきであるとした。
さらに、観光庁の訪日外国人消費動向調査において2017年7-9月期の外国人旅行者のうち12.4%が民泊を利用していることと、2017年の訪日外国人旅行者数が2,869万人であることをあげ、それらを踏まえると、2020 年の外国人旅行者数が4,000万人に到達した場合、旅行者の受け入れが困難となる可能性が高いと警鐘を鳴らした。
そして、民泊への規制の方針については、はじめに、民泊は地域の生活や文化に触れることができ、多様な宿泊ニーズに応えられるだけでなく、空き家活用による起業・副業や国際交流の機会を得られるメリットがあり、多様性のある社会促進や地域活性化、地域のグローバル化を進める有効な手段であると、その魅力を示した。続いて、観光庁はこれらを前提に、民泊に係るステークホルダー(住宅宿泊事業者、管理業者、仲介業者、宿泊者、地域住民、地方自治体、ホテル・旅館業者)の全体最適が必要であり、これを実現すべく規制を設計しなければならないとした。また、地方自治体は、地域活性化とグローバル化につながる民泊が有効に機能するよう、観光庁の規制をもとに地域に適した規制を行うべきだとした。
民泊新法の見直しにあたっては、民泊の発展に近隣住民等との調和が不可欠であることから、それを果たすため、住宅宿泊事業者がゴミや騒音などの生活環境の悪化の防止や、問合せ・苦情への対応に具体的な方策を講じることが必要であり、規制改革はそうした住宅宿泊事業者の責任を前提とすべきとの見解を示した。また、家主居住型と家主不在型のうち別荘やセカンドハウスといった家主の管理が可能な住宅における民泊の規制は緩和すべきとした。
そのほか、良質な民泊サービスの提供に必要なホストのスキル、ノウハウを一定水準に維持・向上する取り組みも必要であるとし、ホストとゲストの評価のほかに、近隣住民の評価も加える施策が提案された。
最後に、民泊の普及に向け、営業日数制限や、建物の規模等に応じて消火器・自動火災報知設備・誘導灯・ 防炎物品等の使用が求められる消防法の適用の緩和のほか、届出手続の簡素化・自治体ごとの共通化・原則オンライン化と、届出番号の真正性を確認するシステムの構築を早期に実現するよう提言した。
【参照ページ】住宅宿泊事業法(民泊新法)に関する意見 ―民泊のステークホルダーの全体最適に向けて規制をデザインする― | 経済同友会
【関連ページ】住宅宿泊事業法に基づく自治体別の届出・登録申請状況一覧
(Livhubニュース編集部)
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