民泊サイト世界最大手のAirbnbはそのプラットフォーム上でユーザー同士の星レビューといった評価システムを提供しているが、それがシェアリングエコノミーにおける人々の社会的偏見を解消するのに役立つことが分かった。
このたび米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載された発表において、スタンフォード大学の研究者たちが約9,000人のAirbnbユーザーを対象とした調査を行い、ユーザーの評判を強調する機能を実装することで有害な社会的偏見は相殺できると提言した。研究結果によると、評価ツールの使用はより公平で多様なオンライン市場の創出につながるという。
住宅や自動車などのモノやサービスを個人が貸し借りしあう「シェアリングエコノミー」は人々に多くの利点をもたらす一方で、人々がお互いに持つ偏見が取引の意志に影響を及ぼすという欠点がある。
シェアリングエコノミーにおける個人間の取引は一般的な商取引とは異なり、取引者同士がお互いに親密な感情を持つため、Airbnbであればホストやゲストはお互いの性別や年齢といった個人的な特性により注意を払う傾向があると、スタンフォード大学社会科学研究所のBruno Abrahao客員助教授は指摘する。こうした取引の細部への注意が、偏見につながる可能性があるのだ。実際にAirbnb自体も過去に幾度もユーザー同士の人種差別をめぐるトラブルで頭を悩ませてきた経緯がある。
信頼とテクノロジーを分析する幅広い研究プロジェクトの一環のこの調査では、homophilyと呼ばれる特定のタイプの偏見に焦点をあてた。それは自分自身に似ている人と信頼関係を築く自然な傾向で、日本的に言えば「類は友を呼ぶ」といったところだ。
今回の研究ではAirbnbプラットフォーム上のホストとゲスト間の実際のやり取りを100万回分析したところ、よりよいレビューを得ているホストは人口統計的により多様なゲストをより多く引きつけていることが明らかになった。
この発見はAirbnbや他のシェアリングエコノミープラットフォームで使用されている評価システムが「大きな相違点を持つ人に対しても信頼を広げる」という証拠であり、差別を打ち消す最良の方法だとしている。また、評価システムは社会的偏見を相殺するだけでなく、サービスを求めるユーザーにとって有益でより公正で多様な市場形成に寄与するものだと言える。
Airbnbがたびたび人種差別トラブルで頭を悩ませてきたように、シェアリングエコノミー型サービスの浸透は人々の間には未だに「偏見」が存在するという事実を顕在化させてきた。一方で、全く知らないユーザー同士の間に信頼を生み出すためのツールとして生まれた「評価」という仕組みが、偏見をなくすうえで役立つという今回の研究結果はとても興味深い。
シェアリングエコノミーという新たなパラダイムのなかで、人々が差別や偏見なく自由に取引できるようになる時代が来るのを期待したいところだ。
【参照サイト】Stanford study examining Airbnb users and data suggests that reputation can offset social bias
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