Airbnbが普及した影響により、フランスの首都パリの中心部の人口が減っている。そんな興味深いレポートが公表され、話題を呼んでいる。レポートを公表したのはINSEE(France’s National Institute of Statistics and Economic Studies、フランス国立統計経済研究所)だ。
INSEEによると、2009年から2014年の間でパリ市全体の人口は約0.6%減少し、2,234,105人から2,220,445人まで13,660人もの人口が減ったという。特に人口減少が著しいのが、ルーブル美術館などがあるパリ中心部の第1区をはじめとした第2区、第4区、第8区のエリアで、これらの区域では5年間で人口の1%を失っている。20の行政区のうち、実に14区で人口が減少するという事態が起こっている。
INSEEはこの人口減少の理由については主に2つの理由があるとしており、1つは少子化の影響を上げている。そしてもう一つの理由に挙げているのが、自身の保有する部屋を旅行者に貸し出す民泊ホストの増加だ。
INSEEは2009年以降、約20,000の住居が旅行者向けの短期的な民泊施設へと移行していると指摘しており、1区の区長を務めるJean-François Legaret氏は、Airbnbはパリ中心部において壊滅的な影響を与えていると危惧する。
今回のこのデータは、正確な原因こそ定かではないものの、世界中で自治体との協働姿勢を強めているAirbnbにとっては不都合なデータとなりかねない。
パリはAirbnbにとってニューヨークに次ぐ世界で二番目に大きな市場でもあり、2015年からはパリ市に代わって宿泊税を徴収、納税するシステムを導入し、既に多大な税収を同市にもたらしてきた。
また、同年には毎年世界中のAirbnbホストらを集めて行うグローバルの定期カンファレンスを、Airbnbの本拠地となるサンフランシスコ以外の都市としては初めてパリで開催するなど、パリの責任あるホームシェアリングの推進に向けて自治体との協働を積極的に進めてきた。
現在パリ市では年間120日未満までであれば特別な行政手続きを必要とせず民泊として部屋を貸し出すことが可能だが、それを超える違法な民泊についてはAirbnbも市と協力して取り締まりを進めている。
このように、Airbnb自身もホームシェアリングによってもたらされる利益がパリのコミュニティやそこで暮らす人々にしっかりと還元されるよう努力しているが、一方で未だに貸し出し日数上限を超える違法な民泊物件も数多く存在しており、賃料の高騰に不満を覚える市民やホテル業者らからの反発の声も根強い実態がある。
今回公表されたINSEEのデータはこれらの民泊反対派の人々の主張を根拠づけるデータとして利用される可能性があり、他国の自治体でも「パリ市の惨状」を示す恰好の材料となりそうだ。
【参照サイト】Paris perd des habitants : Airbnb pointé du doigt
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