民泊仲介サイト世界最大手の米Airbnbが、ビットコインのマイクロペイメントサービス、ChangeTipを開発している米スタートアップ企業、ChangeCoinから開発者の大部分を雇い入れたことが分かった。Quarzが報じている。
ビットコインはインターネット上で流通している仮想通貨の一種で、流通を管理する中央銀行や国家などが存在しない分散型の通貨であるという点が最大の特徴だ。米ドルや円などの現実通貨との交換はウェブ上の取引所を通じて行われており、決済による手数料なども発生しないため、国境を超えた小口売買やP2P(個人間取引)に広く活用されている。
ビットコインの基盤となっているのがブロックチェーンと呼ばれる分散型ネットワークの技術だ。国家や中央銀行などの中央集権機関を介さずとも、過去の個人間の取引履歴に基づく信用を基盤として通貨のやり取りができるこの技術は、世界の金融や経済システムにも大きく影響を与える新技術として注目されている。Airbnbはこのブロックチェーン技術に長けたエンジニアを社内に雇い入れることで、ビットコインやブロックチェーン技術とAirbnbのシェアリングプラットフォームとの融合、活用を模索する。
ChangeCoinは2014年に創業されたスタートアップ企業で、ビットコインのマイクロペイメントサービス「ChangeCoin」を提供している。TwitterやFacebook、Redditなどのソーシャルネットワークに対応しており、投資家らから500万米ドルの調達を行っていた。
なぜ、Airbnbはこのビットコインやブロックチェーン技術に興味を持っているのか?その点について、Airbnbの共同創業者兼CTOのNathan Blecharczyk氏が、3月初旬にCity A.Mのインタビュー記事の中で触れている。
Blecharczyk氏は記事の中で、個人間が部屋の貸し借りをするAirbnbのプラットフォーム上においては個人の信用がすべてであり、将来的にはさらにその傾向が強化され、たとえば特定の物件を借りるためには一定の信用基準が求められるといったケースが出てくる可能性について触れている。そして、その個人の「信用」に関する情報を他のシェアリングエコノミープラットフォームとも共有できる仕組みについても模索していると語っている。
これは、例えばAirbnbと同様にシェアリングエコノミーの代表格として知られる配車アプリのUberと個人の信用情報を共有することで、たとえばAirbnbのホストが過去にUberのドライバーに対して不遜な態度をとった履歴があるゲストの宿泊予約を断ったり、Uberのドライバーが過去にAirbnbの物件を破損した履歴があるゲストの乗車を断ったりすることができるといったイメージだ。
お互いの財産を共有しあうシェアリングエコノミーにおいては、財を共有するうえで個人としての信用力がとても重要となる。そしてそれは単なる「経済力」を超えた個人としての信用だ。このシェアリングエコノミーにおいて個人の信用を担保する仕組みと、ビットコインのブロックチェーン技術は相性が良さそうだ。ビットコインも中央集権期間を介さない分散型のネットワーク通貨であり、取引履歴そのものが個人の信用となる。ビットコインは、シェアリングエコノミーにおける個人の信用の担保となる可能性も秘めている。
また、Quarzは記事の中で、ブロックチェーン技術を活用すればビットコインを通じて支払い完了したタイミングでスマートロックのドアが開閉できるといった仕組みなど、今後の可能性についても触れている。
Airbnbをはじめとするシェアリングエコノミーという新たな経済概念と、ビットコインという新たな仮想通貨の仕組みが融合していくというのは非常に興味深い。Airbnbなどのようにグローバルで個人同士が直接取引するという行動がより一般的になれば、為替の影響などもないビットコインはその取引の基軸通貨としてさらに存在感と信用力を高める可能性がある。今後、Airbnbがこの分野でどのような取り組みを展開していくのか、とても楽しみだ。
【参照記事】Airbnb just acquired a team of bitcoin and blockchain experts
【参照記事】Airbnb co-founder Nathan Blecharczyk talks Japan, business trips and blockchain
(Livhub編集部 加藤)
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