茨城県大洗町を巡ってみつけた「わたしの」サステナブル 〜「大洗うみまちワーケーション」体験レポート前編〜

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「大洗町を冒険の拠点にする」をミッションとする地域団体「大洗クエスト」と旅の力を信じるトラベルマガジン「Livhub」が連携して大洗町にて開催した4日間の”わたしのサステナブルをみつける”「うみまちワーケーション」。今回、応募形式で集まってくれたワーケーション参加者たちは、このまち巡りの中で、どんな地域との持続可能な関係をみつけたのだろうか? 今回は前後編の体験レポートでその様子をお伝えする。

「あなたはどんな町に住んでいますか?」

「近所にはどんな人が住んでいますか?」

「いま住んでいる町の、どんなところが好きですか?」

かつて都内に住んでいた頃、そんな類の質問にまったく答えられなかった。それから十数年が経ち、都心から離れ郊外に住むようになった今、以前よりは自分の住んでいる町や近くに住んでいる人達と、自然と関わりを持てるようになった気がする。

その変化の中で感じたことは、「地域とつながっている」ことは、思ったほど窮屈でもないし、つながってみると意外と安心するものだということ。ただ新しくその土地にきたばかりの場合、地域の人と知り合い、土地の人たちと地域について語り合ったりする機会は、そうそうないのではないだろうか?

ところで近年、「関係人口」という言葉をいろんなところで目にする。「関係人口」とは、その地域に定住してはいないが、観光などで地域を訪れる「交流人口」とその地域に暮らす「定住人口」の間に位置し、地域外に住みながら地域づくりに関わる人のことを指す。

日本全国で定住人口が減る中、どの地方自治体も生き残るために、これまでの「定住人口」に加えて「関係人口」と呼ばれる人口を増やす努力をしている時代。

定住ではない「関係人口」にあたる人は、地域でどんな活動をしているのだろう?関係人口と観光客の違いとは?そして人と地域がつながるきっかけはどこにあるのだろう?

今回、「大洗町を冒険の拠点にする」をミッションとするまちづくり団体「大洗クエスト」とWebメディア「Livhub」は、この大洗うみまちワーケーションを開催するにあたって、「関係人口」というものを「人と地域との持続可能な関係=わたしのサステナブル」と捉え、大洗町でのワーケーションとまち巡りを通して、自分と地域とのあいだに持続可能な関係を築くにはどうすればよいか、考えるツアーを企画した。

ところで、今回の舞台である「茨城県大洗町」とはどんな町なのだろうか?まずはその辺りから探ってみたい。

「大洗町」ってどんなところ?

品川駅から電車に揺られ水戸まで約90分弱。水戸からはローカル線「鹿島臨海鉄道」に乗り換えて3駅目に、大洗町の玄関口である「大洗駅」がある。

そして大洗の観光名所といえば、真っ先に名前が挙がるのは「神磯の鳥居」だ。

波しぶきが上がる岩場にそびえ立つその大きな鳥居は、かつて大洗町が観光の名所として栄えたころから名勝として親しまれてきた。大洗町は、江戸時代以降は「潮湯治(しおとうじ)」の名所として知られ、たくさんの観光客が訪れていたそうだ。

「潮湯治」とは、当時の予防医療の一つで、海水を沸かしてそこにお風呂のように浸かる民間療法。かつて大洗の浜辺の旅館にはその潮湯治の施設が備えられ、頻繁に観光客が利用していた。生活の欧米化や医療の普及とともにその習慣はなくなったが、いまだに大洗は海水浴の名所として知られている。

*かつての潮湯治の様子( 和楽webより引用)

現在では観光業に加え、漁業や水産加工業も盛んだ。そして最近ではアニメの聖地巡礼の場所としても話題。

大洗の沿岸でぶつかる親潮と黒潮。訪れる人と地域住民。歴史とサブカルチャー。異質なものや人、文化が出会い、入り混じる場所、大洗町。

そんな異なるものが混じり合う場所、大洗で、筆者も含めてワーケーションツアー参加者たちが2日間のまち巡りの中で交流した、持続可能な生業を営む7人の地域プレイヤーとの出会いと、その間で生まれた交流の様子を綴っていく。

まずは大洗町で働いてみる、まち巡り前の2日間のテレワークDAY

その町を知るには、その町でご飯を食べ、泊まる。そして働いてみるのが大事。
ということで、今回はまち巡りの前に二日間のワーケーションの日程を設けた。

基本的に仕事する場所は自由だが、今回のテレワークDAYに参加した3名は、大洗駅から徒歩15分ほどの場所にある「ARISE CO-WORKING(アライズコワーキング)」でリモートワーク。
¥

ARISE CO-WORKING内のオフィススペース

ちなみに大洗の海水浴場「大洗サンビーチ」まで徒歩5分の好立地にあるARISE CO-WORKINGは、「大洗シーサイドステーション」という食事やショッピングが楽しめる複合ショッピングモールの2階に位置する。しかも¥500/1時間というお手頃な価格のドロップイン制度があるので、誰でも気軽にPC作業などのオフィスワークが可能。

ワークスペース付近からは大洗港を一望できるので、大洗と苫小牧間を繋ぐ客船「さんふらわあ号」を眺めながら仕事をすることもできる。

大洗港-苫小牧港をつなぐ客船「さんふらわあ号」

今回の参加者は、これから始まる大洗でのまち巡りツアーについてや、大洗の歴史について雑談をしながら、おのおの2日間のテレワークDAYを過ごしていたようだ。

「わたしのサステナブル」を見つける、サステナブルDAY初日

今回の「大洗うみまちワーケーション」のテーマは「地域との持続可能な関係」。これは今回のワーケーション実施に協力している、サステナブルな旅や体験を紹介するwebメディア「Livhub」が、最近メディアでもよく話題にあがる「関係人口」という言葉をより具体的に言い換えた言葉だ。

なので「サステナブル」という言葉を掲げた今回の2日間のまち巡りには、海を綺麗にするビーチクリーンや、ゴミを出さない宿泊施設の見学などは予定に入っていない。

参加者それぞれが自律的に考えながら「自分にとっての地域との持続可能な関係=わたしのサステナブル」を、地域を巡りながら探究する2日間のまち巡りが「サステナブルDAY」という立て付けになっている。

「サステナブルDAY」初日は8名全員が大洗駅前の大洗観光おもてなし推進協議会が運営する観光案内所「うみまちテラス」に集合。

大洗駅前のうみまちテラス。レンタサイクルに加えてトゥクトゥクもレンタル可能

ここで各自レンタサイクルを借り、いざまち巡りを開始です。

旅を持続可能にする、大洗発の別荘サブスク「OURoom」

まず参加者一行は、大洗駅から大洗駅前通りを走って坂を登り、高台の上の住宅街にある謎のコンテナハウス群の前に到着。

*OURoomの拠点の一つ「OURoom1st」

実はこのコンテナハウスが、月額会員費1,000円で 「使う分だけ賢く」別荘が持てるサブスク「OURoom(アワールーム)」の第1号拠点「OURoom 1st」だ。

今回はOURoom1stのゲストルーム内を実際に見学した後「わづくる株式会社」代表で、大洗町出身の平間一輝(ひらまかずき)さんに、サービスのコンセプトや目指す姿を伺った。

わづくる株式会社 代表取締役平間一輝さん

「私たち『わづくる株式会社』は、『いつもの居場所がふたつある暮らし』を実現したいと思っています。実は二拠点居住はコストが高く、また都心と地方の暮らしどちらかを選ぶことも実はハードルが高い。一方「OURoom」は使った分だけ課金される従量課金型のサブスクなので、負担の少ない二拠点生活を実現できます。現在は茨城県内の大洗、鉾田、水戸の3拠点だけですが、もうすぐ山梨県にも1〜3拠点をオープンさせる予定です。施設や物件で行き先を選ぶのではなく、たとえば大洗ならサーフィン、山梨ならトレッキングなど、滞在先での目的に応じて地域を選ぶような旅を実現させたい」

OURoom1st室内の様子

現在、近いコンセプトの会員制サブスクサービスであるADDressHafH、SANUなどは、主にプラン別の定額制サブスクであり、その点ではOURoomは料金の仕組みにおいて差別化がされているようだ。今回のテーマでもあるサステナブルという視点に関して、OURoomはどう関わっているのだろうか?

「まずは地域の空き家や有休施設を借り上げて、建物をリノベーションして再活用しているという点が一つ。またホテルや旅館の価格が高騰している現在、気軽で負担の少ない従量課金制のサブスクの仕組みによって『旅』という行為をそのものを身近で持続可能なものにしたいと思っています」

このOURoomというプラットフォームがあることで、地域の空き家が活用される。そして人の移動が増えていけば、定住人口ではなく、関係人口を地域がシェアする『人口シェアリング』が実現する新しい未来が見えてくる。わづくる株式会社が提供するOURoomという事業は、日本が直面している人口減少時代に希望となる、地域と人との新しい関係をつくる仕組みの一つだと言えそうだ。

磯浜古墳群で、大洗の海の恵みを味わう

OURoom1stを後にした一行は、再びレンタサイクルに乗り、大洗駅から徒歩15分ほどの場所にある古墳群「磯浜古墳群」へ。

大洗駅から徒歩数分のところにある「磯浜古墳群」

ここはかつて江戸時代には、水戸藩が海からやってくる黒船を見張る拠点「磯浜海防陣屋」としても活用されていたこともあり、小高い丘になっていて大洗の町と海を一望できる。大洗町を俯瞰してみると、意外とその町は狭く、山側をみれば向こうはすぐ水戸の街並みが見え、逆を見渡せばそこはすぐに太平洋だ。

参加者たちはここで縄文時代、ひょっとするともっと昔から続く大洗での人々の営みに想いを馳せながら、海の幸満載のお弁当を食べてランチ休憩。

そしてランチ後には、そのお弁当をつくってくれた株式会社カジマの「かじま惣菜店」の店長を務める梶間千萩さんに、大洗町で事業を営んできた過程について話を伺った。

BtoCへの事業転換で生まれた地域との新しい繋がり

古墳群の上で食べたお弁当をつくっていただいた株式会社カジマは、大洗の地で1935年から90年以上、カニを中心とした水産加工業を営んできた老舗企業。

大洗町が運営する温浴施設「ゆっくら亭」内でカジマさんがお食事処を運営している

そのカジマで新たに新規事業として「かじま惣菜店」を立ち上げ、これまでカジマとしては手をつけてこなかった店舗での惣菜販売や、ネット販売を始めた梶間千萩(かじま ちあき)さん。そのきっかけはなんだったのだろうか。

株式会社カジマ 惣菜かじま店長 梶間千萩さん

「2011年の東日本大震災では、大洗町にあるカジマの施設も被害を受けました。その時私は都内で就職活動をしていましたが、町のことが気になりエントリーシートもうまく書けない状況でした。そんな時に実家に帰り、大洗の被害状況を目にするうちに、カジマに入りたいという想いが強まり、代表である母に頼み込みました。最初は『好きなことをやりなさい』と言っていた母を、自分のやりたいことやカジマへの想いをレポートにして提出して説得し、なんとか入社しました」

カジマが入社した千萩さんを中心としてBtoBからBtoCへの新しい事業展開をスタートしてから新たにオープンした惣菜店で、ご近所さんと対面で顔を合わせるうちに、以前より地域住民との距離がぐっと近くなり、大洗町の一員としての気持ちも高まったと語る千萩さん。

株式会社かじまの惣菜専門店舗

そして話を伺っていると、やはりカジマさんの事業の中にも地域との持続可能な関係を築くヒントが。

「カジマの40年近いキャリアのベテラン加工職人はやはり手作りの味にこだわっていて、機械加工による大量生産を採用しないんです。そのこだわりが味と高い品質につながっていて、カジマの蟹は豊洲市場でも高い評価を得ています。私たちの看板商品である『ずわいがにたっぷりコロッケ』も機械を使えばもっと楽に量を作れますが、大洗のお客さんは舌が肥えてるので、手が抜けないんです」

かじまの看板商品「すわいがにたっぷりコロッケ」

味や品質にこだわることで、自然と昔ながらの手加工による少量生産になり、取り過ぎによる生態系への悪影響やフードロスなどの問題も起こらない。それが意識的にせよ無意識にせよ、効率だけを求めず、真摯に品質や顧客、そして自然環境と向き合っているカジマの事業は、ナチュラルに地域や環境と持続可能な関係を築いていると言えそうだ。

地域事業者と焚き火を囲んでの対話

初日のまち巡りの最後は、海沿いにある「サンビーチキャンプ場」にて焚き火とBBQをするという趣向。大洗町にてヨガスタジオを運営する「大洗海風ヨガスタジオ」代表の小林綾子さんと、大洗町で2つのキャンプ場を運営する大洗キャンプ事業統括責任者の光又新二さんをお呼びして、ゆらゆらと揺れる焚き火を地元事業者・参加者全員で囲みながら事業の中で大切にしていることについてそれぞれ話を伺った。

まず最初に話していただいた小林綾子さんは、『3世代が楽しめる地域密着型のヨガスタジオ』をコンセプトに、ヨガを通じて心と体のバランスを整える多種多様なクラスを毎日開催している。最初はスタジオを開けば自分も毎日ヨガができるし、と考えていたとか。

大洗海風ヨガスタジオ代表 小林綾子さん

「今のコンセプト『3世代が楽しめる地域密着型のヨガスタジオ』に辿りつくまでにずいぶん時間がかかりました。ヨガしかやっていないはずなのにコンサルから『何屋かわからない』と言われたりして、色々やっていた事業を削ぎ落としていった経緯もあります。

大洗の人全員がヨガマットを持っている位に、大洗がもっと健康な町になればという思いから、クラスを無料体験してくれた方全員にヨガマットをプレゼントする『100ヨガマットプロジェクト』という企画を実施したり、大洗町の環境を活かして、ビーチやキャンプ場でヨガイベントを開催したり。

私はヨガは大好きですが、教える方は得意ではないので、地域の人がヨガに出会う入り口としての仕組みをつくったり、初めて来た方にヨガについて伝えることを担当しています。

そうやってヨガを通して大洗町と長年向き合ってきた結果、地域の人たちが日常の中で『おばあちゃんの誕生日にヨガマットをプレゼントするんだ』『このヨガマット持ってるよ』みたいな会話をしているのを聞き、最近ようやく『ヨガ』というキーワードで地域の家族がつながってきたなと感じる場面がでてきました」

ヨガスタジオが地域の健康促進の入り口として機能しているうちに、地域の家族をつなぐ役割にまで発展したという「大洗海風ヨガスタジオ」。地域の人々の健康や家族の繋がりを持続させることが、小林さんにとって一つのサステナブルだったのかもしれない。

そして次は大洗町で2つのキャンプ場を運営する、光又新二さん。

大洗キャンプ事業統括責任者 光又新二さん

「バックパッカーとして世界中を旅していた時に、どの場所に行っても必ずしていた質問があった。それは『これからの社会で必要なものはなんだと思いますか?』という質問。その答えは全世界共通で『自然と教育』でした。

それなら『自然を通して教育もできる場所をつくればいい』と思い、キャンプ場運営に辿り着きました。全世界を旅しながらキャンプをした経験を活かして、自然を通してみんながハッピーになればと思っています」

近年見直されている、自然と教育の関係。本来近い関係であったはずの自然と教育は、なぜ距離が離れてしまったのだろうか。

「かつては身近に山や里山があり、教育って形ではなくても自然について学べる状況があった。いつの間にか人の周囲から自然が消え、自然と人間の間に隔たりができたことで、今では自然体験に高いお金を払うようになった。

キャンプの歴史を遡ると、1800年代のアメリカの子供の教育を目的とした『教育キャンプ』から始まったんです。その後レジャーキャンプが誕生して拡大した結果、キャンプの教育面が忘れられてしまった。レジャーキャンプがポピュラーになった今、あらためてキャンプの教育的な要素も一緒に広めていく必要があると思っています」

その言葉通り、光又さんは行政やキャンプメーカーと共に、環境教育の要素を取り入れたキャンプイベントを開催している。その他キャンプに関する著書を執筆したり、茨城県の自然体験発信ポータルサイト『いばらきキャンプ』のアドバイザーも勤めている。

それぞれ事業の中で大切にしていることはもちろん違うが、地域の人々と対面で関わりながら、地域の暮らしを持続的する価値を提供しているお2人。豊かな海と歴史ある観光が続いてきた大洗町ならではのオープンなマインドが、それぞれの事業に息づいていて、人同士の繋がりが自然とそこにある。

そんな印象が焚き火の熱と共にじんわりと伝わってくる、温かい語らいの夕べだった。

<後編に続く>

【参照ページ】大洗クエスト
【参照ページ】ARISE CO-WORKING
【参照ページ】OURoom
【参照ページ】株式会社カジマ
【参照ページ】海風ヨガスタジオ
【参照ページ】大洗キャンプ

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