福利厚生型ワーケーションとは?個人・企業・自治体のメリット・課題を解説

福利厚生型ワーケーションは、企業が有給休暇の取得推進など福利厚生を目的として取り組んでいるワーケーションスタイルを指します。日本におけるワーケーション導入のきっかけとなった類型でもあります。従業員が長期休暇明けの業務増加に対する不安やストレスなどを原因に長期休暇の取得に対する抵抗感を持っており、なかなか有給休暇の取得が進まないといった課題を抱えている企業に適したスタイルと言えます。

福利厚生型ワーケーションの場合、ワーケーションとはいえどもあくまで「休暇」がメインとなるため、移動や宿泊費用は個人の負担が前提となりますが、休暇中に旅行先や帰省先からのウェブ会議への参加やテレワークを許可することで、従業員はより長期休暇などを取得しやすくなります。

例えば、2連休と2連休に挟まれた平日が1日だけあり、その日の午前中に会議が入っている場合、平日にオフィスへの出勤義務があると1日だけ有給をとって5連休にするという休み方ができなくなってしまいます。しかし、ワーケーション先からのテレワークを認めることで、有休を取得して5連休を楽しみながら会議だけウェブでリモート参加する、といった働き方が可能となります。

福利厚生型ワーケーションの主なメリット

福利厚生型ワーケーションを取り入れるメリットを個人・企業・自治体それぞれの立場から整理すると、下記のようになります。

個人のメリット

  • 有給休暇・長期休暇が取りやすくなる
  • 休暇に伴う引継ぎの手間なども減る
  • 休暇から復帰後の業務負荷・ストレスが軽減される

福利厚生型ワーケーションを取り入れる個人のメリットとしては、何よりも有給休暇や長期休暇が取りやすくなる、という点が挙げられます。休日と休日に挟まれた平日を有給休暇にする、土日の前後を有給休暇にする、などにより長期休暇を取得しつつ、平日にどうしても参加しなければいけない会議や対応が必要な業務だけをワーケーション先から対応することで、仕事を滞らせることなく休暇も存分に楽しむことができるようになります。また、多少の業務であればリモートで対応できるようにしておくことで、休暇前の同僚への引継ぎなどの手間も減りますし、休暇から復帰した後の業務負荷やストレスなども軽減することができます。

企業のメリット

  • 有給休暇の取得率を高められる
  • 従業員の生産性を向上させられる
  • 人材採用力向上・流出防止につながる

福利厚生型ワーケーションを取り入れることで、企業は有給休暇の取得を促進でき、福利厚生を充実させることができます。また、従業員のリフレッシュ機会を増やすことは組織全体の生産性向上につながるだけではなく、柔軟な働き方の促進が人材採用面にもプラスに働き、より自由な働き方を望む優秀な人材流出を未然に防ぐことにもつながります。

自治体のメリット

  • 平日の観光・旅行需要創出
  • 交流人口・関係人口の増加
  • 域外企業との関係構築・投資呼び込み

自治体としては、福利厚生型のワーケーションを積極的に受け入れることで、新たに平日およびその前後の観光・旅行需要を生み出すことができます。また、ワーケーションに訪れた個人が地域のファンになってくれれば関係人口として継続的に地域を再訪してくれる可能性もありますし、個人がその地域の魅力を同僚や会社などに伝えることで新たな個人がワーケーションに訪れ、最終的には企業ぐるみの関係構築へと発展する可能性もあります。

企業にとっての目的は「福利厚生の充実」なので、自治体としては地域にある豊かな自然や温泉施設などが社員の「ウェルビーイング向上」や「リフレッシュ」につながることを写真なども用いて積極的にアピールすることで、より多くの個人や企業を惹きつけることができるでしょう。

福利厚生型ワーケーションの主な課題

福利厚生型ワーケーションを実施する際の主な課題を個人・企業・自治体それぞれの立場から整理すると、下記のようになります。

個人の課題

  • 交通費・宿泊費がかかる
  • 通信環境が不十分なことがある
  • 休暇に集中しづらい

福利厚生型ワーケーションを取り入れる際の個人の課題として挙げられるのが、交通費や宿泊費の負担です。福利厚生型の場合はあくまで「休暇」がメインとなるため、基本的に移動や宿泊に伴う費用は個人が負担するのが前提となります。また、ワーケーションの滞在先によっては十分な通信環境が整っていないこともあり、思うように会議に参加したり仕事が進められなかったりするリスクもあります。さらに、仕事を休暇先に持ち込むことで仕事に気がとられてしまい、結果としてゆっくりと休めないこともあります。

企業の課題

  • 労務管理コストの増加
  • セキュリティリスク・コストの増加
  • 従業員への周知

企業が福利厚生型ワーケーションを取り入れる場合、休暇先における労働時間や成果をどのように管理するのかについて、事前に明確なルールを定めておく必要があります。また、ワーケーションの滞在先から業務を行う場合、パソコンやスマートフォンの端末などを社外に持ち込むこととなるため、セキュリティ面にも十分に留意する必要があります。

加えて、オープンスペースで仕事をする場合は会議中の会話や機密情報を含む書類の保持などについてもルールを定める必要があるでしょう。さらに、福利厚生型ワーケーションの導入により有給休暇の促進を取得するためには、ワーケーションを実施したい個人だけではなく、周囲の社員や上司からの理解なども重要となります。福利厚生型ワーケーションの導入可否に関わらず、そもそも有給休暇が取得しやすい企業風土をつくり、そのうえで新たな制度の目的や意義、ルールなどをしっかりと全従業員に周知し、理解してもらうというプロセスを丁寧に踏むことが重要です。

自治体の課題

  • wifiなど環境整備に伴うコスト負担

福利厚生型ワーケーションを受け入れる自治体にとって一番の課題は、いかに滞在先で仕事がしやすい環境を整えるか、という点にあります。宿泊施設におけるwifi環境やワーキングスペースの確保、地域内のコワーキングスペース設置など、ワーケーションにやってきた個人がスムーズに仕事に取り組める環境を整備することは、ワーケーション需要を獲得するうえで大きな武器となります。

まとめ

いかがでしょうか。ワーケーションの元祖とも言える福利厚生型ワーケーションは、個人のウェルビーイング向上につながり、企業の生産性向上につながり、地域の新たな観光需要創出につながるとても優れた仕組みだと言えます。一方で、このワーケーションタイプがさらに浸透するためには、企業や個人の「働き方改革」も重要となりますし、受入先となる地域の通信環境の充実なども鍵を握ります。今後、福利厚生型ワーケーションの導入に成功している企業の事例などが広く共有されることで、よりその裾野が広がることを期待したいところです。

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