奥会津のローカル線沿線で、自然と共生する暮らしを体感。暮らすように旅する「奥会津ワーケーション」の魅力

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「奥会津」という地域を旅したことがあるだろうか?

奥会津とは福島県南西部の只見川流域、伊南川流域7町村「柳津町」「三島町」「金山町」「昭和村」「只見町」「南会津町」「檜枝岐村」の総称のこと。

手つかずの原生林が残る豊かなブナの森、国内有数の豪雪がつくりあげる独特の自然景観、そして険しい山々の間を流れる清流が織りなす幻想的な風景。その圧倒的な自然が創りあげた風景と人々の営みが見事に調和する奥会津は、日本の優れた風景地として「越後三山只見国定公園」に指定されている。

越後三山只見国定公園エリアマップ、濃い黄色が今回紹介する福島県側の国定公園エリア
Image via 越後三山只見国定公園ビジターセンターwebサイト

そして奥会津を語る上で、欠かせない幾つかの要素がある。それは上で挙げた豊かな自然を有する越後三山只見国定公園に加えて、その中を通り抜ける、地域の営みの支柱的存在である只見川と、その側を走る秘境路線「只見線」だ。

只見線路線図 image via 只見線ポータルサイト

JR只見線は、福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶ全長約135kmの路線。自然の恵みを運ぶ只見川と、その川に沿って絶景の中を走り抜ける列車とが、地域と地域、観光客と住民をゆるやかに繋いでいる。

今回はこの国定公園周辺の奥会津の魅力や過ごし方を伝えたいのだが、一般的に「国定公園」と聞いた時に、そこでの楽しみ方はどんなものを想像するだろうか?おそらく自然の中を散策するハイキングなどのイメージがまず浮かぶはず。

ただ日本の国定公園の中でも最も広い面積を誇る越後三山只見国定公園では、豊かな自然と地域の人々が暮らす人里とが溶け合うように近接している。その自然と人里を行き来しながら、観光以上移住未満の多様な滞在ができるのが、越後三山只見国定公園の特徴だ。

もちろん「奥」会津というくらい奥まった地域だけに、交通の便がいいとは言えない。だからこそ、その不便さを逆手にとり、この地域にゆったりと滞在することで、貴重な自然と地域の人々の営みを同時に味わえるのが奥会津の魅力なのでは、と筆者は今回の奥会津滞在の中で感じた。

そこでこの記事では、一般的なワーケーションの定義である「休暇中、特に旅行先でテレワークを行うこと」という解釈を少しだけ拡大解釈し、「地域で『オン』と『オフ』、『旅』と『暮らし』の境目を曖昧にしながら、ゆったりと過ごす滞在」≒「ワーケーション」と捉えてみることにする。

「ワーケーション?せっかくの旅で仕事なんて….」という方もいるかと思うが、旅の中で仕事をするかどうかは一旦横に置いておこう。そしてかつて主流だった「1泊2日でせわしなく観光スポットを巡る旅」から少し逸脱した旅、くらいに考えてみてはどうだろうか。

よってこの記事では、越後三山只見国定公園エリアを周遊しながらその地域に「暮らすような」滞在の旅の魅力を伝えたい。ここからはこの地域を実際に訪れたLivhub編集部が注目した「絶景」「宿」「食」「人」「ワークスポット」などの魅力を紹介していく。

奥会津の「絶景」

奥会津といえば、山深い豊かな自然と、冬の豪雪がもたらす豊かな水源。そしてその自然と重なり合う人々の集落や建造物、鉄道などが、その独特の風土や美しい景観を見事に形づくっている。その絶景は、国内外からの観光客をこの奥会津まで引き寄せている。ここでは奥会津の数ある絶景スポットをLivhub編集部おすすめの3箇所に絞って紹介する。

1、只見第一橋梁ビュースポット

只見第一橋梁を走り抜ける只見線車両 Photo by Kazuto Ishizuka

JR只見線が通る鉄橋の中でも最も人気が高いのが、アーチ型鉄橋「第一只見川橋梁」だ。もし鉄道に興味がある方なら、フォトコンテストなどでその写真を1度は目にしたことがあるかもしれないくらいに有名なスポット。過去には「紅葉の美しい鉄道路線ベストテン」第1位、「雪景色のきれいなローカル線ベストテン」第3位にも選ばれるなど、国内外のカメラ愛好家や鉄道ファンに圧倒的人気を誇る。

実はフォトスポットへのアクセスは簡単。「道の駅 尾瀬街道みしま宿」から徒歩数分で気軽に展望台に辿り着ける。トンネル横の登山道のような階段を登った後に振り返ると、時が経つのを忘れてただ呆然と立ち尽くしてしまうくらいの圧倒的な自然が目に飛び込んでくるはずだ。

このスポットでは、季節ごとの風景の中を走る只見線をカメラに収めるため、列車が来る時間帯にはたくさんの観光客やカメラマンで賑わっている。筆者も20分ほど前にビューポイントに到着したが、すでに周囲には4〜5人のカメラやスマホを携えた観光客が列車を待ち構えていた。

ということで写真が目的の方は訪れる前に只見線の時間を事前にチェックし、余裕をもって撮影スポットを探した方がいいようだ。また冬は雪が積もり足元が滑りやすくなるので、防寒対策に加えて、滑りにくいトレッキングシューズなどの準備をしておくこともお勧めしたい。

・撮影スポットへのアクセス

住所: 第一只見川橋梁:第一只見川橋梁展望台(福島県大沼郡三島町大字川井) 

2、霧幻峡の渡し

川霧の中を進む渡し船
image via 福島観光情報サイト ふくしまの旅

時代劇でしか目にすることのない「渡し舟」と「船頭」。笠を被った船頭が漕ぐ渡し舟が、漂う川霧の中をゆるゆると進んで行く。もしこの舟に乗ったら自分がタイムスリップしたかのような錯覚に陥るのではないだろうか。

2番目に紹介する絶景ポイントは、金山町と三島町の境を流れる只見川を渡る手漕ぎ舟に乗ることができる「霧幻峡(むげんきょう)」。夏の朝夕、川霧に包まれる渓谷が夢か幻のように儚く美しいことからこの名前が付けられたとか。ちなみにこの渡し舟は、元々は住民が対岸に渡るためのものだったが、観光用として復活させたそうだ。特に川霧が発生しやすいのは、6〜8月の早朝か、もしくは夕暮れ時なので、その時間帯を狙っていくことをお勧めしたい。

筆者は冬期休業期間中の来訪だったため残念ながら体験できなかったが、絶景とともに昔ながらの地域の暮らしを味わえるのがこの霧幻峡だとも言える。もし春から秋に訪れる際にはぜひ予約の上、体験してほしいアクティビティだ。

・「霧幻峡の渡し早戸船着き場」へのアクセス
住所: 福島県大沼郡三島町早戸19

3、金山町 大志(おおし)集落

川面に反射する大志集落 Photo by Kazuto Ishizuka

会津川口駅と会津中川駅のちょうど中間あたりに位置する、急勾配のカラフルなトタン屋根が特徴的な大志集落。40戸ほどの小さな集落だが、その周囲に積もった雪の白と、屋根の赤と青とが入り混じりながら只見川の水鏡に反射するその美しい様子は、日本の原風景を思い起こさせる。

また、会津川口駅から2kmほどの距離にある尻吹峠を下ったビューポイントからは、「大志俯瞰」と呼ばれる壮大な風景を見渡すことができる。この場所もまた沢山のカメラ愛好家に人気となっている場所だ。ぜひこの風景をカメラに収めながら、地域の暮らしを身体いっぱいで感じてみてはどうだろうか。

・撮影スポットへのアクセス
①尻吹峠付近(福島県大沼郡金山町大字川口字大平道下)②かねやまふれあい広場(福島県大沼郡金山町大字大志字境沢)

アクセス①車:只見線会津川口駅から約20分(県道小栗山宮下線~太郎布地区経由)②車:只見線会津川口駅から約1分
徒歩:只見線会津川口駅から約10分

奥会津の「食と宿」

奥会津の風土を五感で楽しむ滞在に欠かせないもの。それは豊かな自然の恵みを活かした郷土料理と、厳しい寒さを乗り切るためには欠かせない極上の温泉を備えた宿や温泉施設。今回はLivhub編集部が実際に立ち寄って体験した、3つのおすすめの温泉宿をご紹介する。

1、季の郷 湯ら里(ゆらり)

湯ら里外観 Photo by Kazuto Ishizuka

規模や原始性において国内随一といわれるブナ林のある奥会津・只見町。その広大なブナ林から発せられる太古の息吹を感じられる宿が「季の郷 湯ら里」だ。

酒井智也支配人は、この施設の特徴と魅力について「ワンフロアで風呂、食事、宿泊のすべての機能を完備しているため、宿泊客が過ごしやすい設計になっているのが特徴。また、別棟の掛け流し温泉やブナ林を含む広大な敷地を有し、自然の景観を楽しみながら滞在できる環境が整っている」と語ってくれた。

ロビーで雪景色を眺めながらのデスクワークの後は、ブナ林での森林浴で心を癒したり、掛け流しの露天風呂で身体を温めながら気分転換もできる。ここ湯ら里では、そんな自然に癒されながらのワーケーションを楽しめそうだ。

湯ら里本館の露天風呂 Photo by Kazuto Ishizuka

気になる食事の方は、夕食は厳選した地元の食材を用いた郷土料理をはじめとした湯ら里ならではの会席和膳、朝食は山菜料理を含めたバイキング形式となる。とくに夕食では只見町の郷土料理である「お平(おひら)」と呼ばれる海・川・山・里のものが合わさった煮しめなど、地域の風土に根差した伝統料理を味わえるのが大きな魅力。

奥会津地域の郷土料理の一つ「お平(おひら)」Photo by Kazuto Ishizuka

ちなみに厨房スタッフ手作りの野菜ジュースも絶品だったので、もし見かけたらぜひ試して欲しい。

住所 福島県南会津郡只見町大字長浜字上平50
電話番号 0241-84-2888
アクセス 東武線~会津鉄道会津田島駅より送迎バスあり(要予約)
URL https://www.yurari.co.jp/

2、宮下温泉 栄光館

栄光館外観 Photo by Kazuto Ishizuka

誰にも教えたくないほど居心地のよい、宮下温泉の穴場的な温泉宿が「栄光舘」だ。趣のある昔ながらの木造建築の落ち着きと、源泉掛け流しの出で湯(いでゆ)の組み合わせは、旅館好き、温泉好きにはたまらない。ちなみに宮下温泉の泉質は、炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物の3つの成分が一つになった濁りのある温泉が特徴で、さっぱりとした湯上がり感が楽しめる。

温泉は全て源泉かけ流し Photo by Kazuto Ishizuka

創業60年を誇る栄光舘の女将である長峰京子さんは、両親から継承した旅館の伝統を守りながらも時代のニーズに応える形で切り盛りしてきたそうだ。最近では、アジアを中心としたインバウンド観光客の受け入れに積極的に取り組み、かけ流しの温泉と地元の食材を活かした料理、きめ細やかなおもてなしが数多くのリピーターを生んでいる。また栄光館での夕食の際に注文できる日本酒のラインナップには、女将さんのコネクションを活かしたかなりレアな地酒が並んでいたので、日本酒好きにとっても要注目な宿だともいえる。

住所 福島県大沼郡三島町宮下字塩水4113
電話番号 0241-52-2636
アクセス 会津宮下駅から徒歩10分

郡山から車の場合: 新潟方面へ~会津坂下IC~会津坂下ICから車で20分

URL 三島町観光協会サイト

3、あいづやないづ温泉公共の宿 つきみが丘町民センター

Image via あいづやないづ温泉公共の宿 つきみが丘町民センター公式サイト

このつきみが丘町民センターでは、宿泊だけでなく日帰り温泉での立ち寄りもできるのが魅力。天然温泉の大浴場からは、只見川が一望できるのが特徴だ。また誰でも気軽に利用できる食堂では、地元住民がこぞっておすすめする会津柳津ソースカツ丼を味わえる。ジューシーでボリュームたっぷりのこのソースカツ丼は、訪れる前から「あそこのソースカツ丼は美味しいよ!」という声を何度も聞く位、地元住民から愛されている。

普通盛りでボリュームたっぷりのソースカツ丼 Photo by Kazuto Ishizuka

他にも控え目に食べたい方向けにはミニソースカツ丼も用意されていたり、さらに全国的に人気が高い福島県産のお酒を楽しめるなどの楽しみもある。ロビーにはwi-fiも完備されていて、入浴の合間のちょっとしたパソコン仕事にも対応できる利便性の高い施設となっている。

住所 福島県河沼郡柳津町柳津諏訪町甲61-2
電話番号 0241-42-2302
アクセス 会津柳津駅から徒歩20分、タクシーで5分
URL https://akabeko.info/

奥会津の「人」

旅の楽しみの1つに、訪れた地域で出会う地域の人々との交流がある。偶然入った飲食店のマスターとの何気ない会話、宿のおかみさんの温かいもてなし、そして地域に根付く地元商店でのその土地ならではのお土産探し。そんな交流は、いずれもその地域でしか味わえない旅の醍醐味でもある。

今回は、Livhub編集部が今回の奥会津ワーケーションを通して出会った、奥会津周辺を盛り上げる個性豊かな地域プレーヤーたちのほんの一部をインタビュー形式で紹介する。

1、森林の分校ふざわ 運営責任者 藤沼 航平さん

藤沼 航平さん 森林の分校ふざわ 運営責任者

福島県只見町・森林の分校ふざわの運営責任者。栃木県出身。大学3年時に只見町布沢集落との関わりを持ち、卒業後は全農栃木県本部で4年間勤務。その間も週末には只見町に通い続け、8年前に地域おこし協力隊、4年前に森林の分校ふざわの支配人として移住。現在は森林の分校を拠点に、地域の伝統文化や技術を活かした観光プログラムの開発・運営を行う。また、ふるさと只見案内人協会の副会長も務める。

──只見に移住を決意されたのはいつ頃でしょうか。

社会人3年目の時に決意しましたが、会社の要請で1年延長し、4年目で退職しました。20代前半だったので、これ以上先延ばしにすると迷いが出てくると考え、決断しました。

──森林の分校での具体的な活動内容を教えてください。

恵みの森と癒しの森という2つのブナの森を活用したイベントや企画の運営が主な仕事です。また、森林の分校自体の活性化も重要なミッションです。

館内は木造校舎ならではの懐かしい雰囲気 Photo by Kazuto Ishizuka

──地域おこし協力隊着任後はどんな活動からスタートしましたか?

まず、宿泊施設としての基盤整備から始めました。ホームページの作成、予約システムの導入など、誰でも利用しやすい環境を整えました。体験プログラムも現在では30種類程度まで増やしました。

──地域の方々との連携について教えてください。

つる細工や生活技術など、地域の方々が持つ伝統的な技術や知識を体験プログラムとして活用しています。ふるさと只見案内人協会との連携も重要で、様々な技能を持った方々とのネットワークを広げています。

──今後の展望について教えてください。

人口減少が進む中で、外部の力を活用しながら地域の伝統行事や文化を維持していきたいと考えています。観光客として来訪するだけでなく、何らかの形で只見町に関わり続けてくれる人を増やしていくことが目標です。


大学時代から長期間に渡って培った地域住民との深い信頼関係を基盤に、伝統的な技術や文化を観光コンテンツとして再構築する藤沼さん。ぜひ森林の分校ふざわが持つノスタルジックな木造校舎の雰囲気と布沢集落の営みを味わいに滞在を検討してみてはどうだろうか。
・森林の分校ふざわ公式サイト

2、合同会社メーデルリーフ 代表 酒井治子さん

酒井治子さん 合同会社メーデルリーフ代表執行役員

只見町の特産品の製造・加工・卸・販売を行う「メーデルリーフ」の代表執行役員、兼企画立案担当。只見町生まれ。大学卒業後只見町に戻って20年。只見線の運行状況と3人の子どもの成長にハラハラしながら暮らしている。よく通る声が特徴で、只見線の車内ガイドや観光のご案内をしている。人口は少ないけれど、たくさんの人たちに応援されている只見町を発信している。只見線地域コーディネーターとしても活動中。

──メーデルリーフの代表になる以前の経歴について教えていただけますか?

只見町の観光まちづくり協会で11年間働いていました。その前には只見川電源流域振興協議会で4年間勤務し、広域的な観光PRや地域文化の発信に携わっていました。

──メーデルリーフ設立の経緯について教えていただけますか?

観光協会在職中に、地域の方々と共に7人で合同会社として立ち上げました。独立指向があったわけでもなく、プライベートの状況や周囲や地域の声など、様々な要因が重なり設立に至りました。当初は只見町産の発芽玄米販売からスタートし、年間売上は20-30万円程度のかなり小規模なものでした。

──只見線での車内販売事業についてお聞かせください。

福島県の事業として始まり、秋田と青森を結ぶ五能線の視察がきっかけでした。地域の特産品を販売しながら、観光案内も行っています。

Image via 只見線ポータルサイト

車内販売中のお客様との会話を通じて、様々な利用方法や需要を知ることができます。観光客だけでなく、地域の方々の生活の足としての使い方も見えてきました。また、私自身が子供の頃に経験したのですが、只見線が地域内の温かい交流の場としても機能していると感じています。

──今後の展望は

只見町を応援してくれるファンを100人増やすことを目標にしています。移住者や関係人口を増やしながら、次世代が活躍できる受け皿となる会社を目指しています。


酒井さんの話から、只見線が繋いでいるのは物理的なものだけでなく、観光客と地域住民、また地域住民同士の交流を繋いでいるようにも思える。只見町と只見線を盛り上げながら、地域を持続可能にする取り組みを知ることができる、合同会社メーデルリーフのサイトをぜひ覗いてみてほしい。

・合同会社メーデルリーフ公式サイト

3、一般財団法人やないづ振興公社 事務局長 杉原啓輔さん

杉原啓輔さん 一般財団法人やないづ振興公社事務局長・兼 道の駅 会津柳津 駅長

やないづ振興公社事務局長 兼道の駅駅長として、奥会津ビジターセンターの運営を統括。昭和63年より柳津温泉開発株式会社に入社し、その後、町の観光施設管理を担うやないづ振興公社に異動。漁業組合の事務局や温泉管理など、地域の多様な事業に携わってきた経験を持つ。現在は、道の駅やビジターセンターの運営を通じて、地域の観光振興と交流人口の拡大に尽力している。

──ビジターセンター設立の目的について教えてください。

奥会津地域の交流人口増加と、観光客誘致が主な目的です。

館内展示 image via 福島県

この地域は令和3年に越後三山只見国定公園に編入され、現在は日本最大面積の国定公園となりました。豊かな自然を広くPRし、保全していくための拠点として、昨年7月6日に開館しました。

──施設としての取り組みについて教えてください。

地域の方々と協力しながら、奥会津の自然を案内するトレイルツアーや低山ガイドツアーの企画を進めています。また、只見線の復興支援として、館内に専用のPRブースを設置し、運転席からの映像体験など、独自のコンテンツを提供しています。

──2階の展望・休憩フロアについて、どのような活用を想定されていますか。

当初は単なる展望室でしたが、より長く滞在していただけるよう、学習やコワーキングスペースとして整備しました。読書や資格勉強、ミーティングなど、様々な目的で自由に使っていただける場所を目指しています。

──今後の展望は。

地域の伝統工芸の実演や多様なイベントの開催などを計画しています。また、地域おこし協力隊の募集も検討しており、アウトドアガイド養成なども視野に入れています。さらに、旧スキー場の遊歩道整備など、地域全体の観光資源の活用も考えています。


単なる観光案内所ではなく、地域の自然や文化を発信し、多様な人々が交流する場として機能している奥会津ビジターセンター。道の駅との併設という特徴を活かしながら、地域住民との協働や近隣町村との連携を通じて、奥会津地域全体の観光振興と交流人口の拡大に貢献しているこの施設の今後に期待したい。

・一般財団法人やないづ振興公社 公式サイト
・越後三山只見国定公園奥会津ビジターセンター

奥会津の「ワークスポット」

まだ馴染みのない方も多い「ワーケーション」という旅のスタイル。旅先で本格的に仕事をするかはさておき、長期の旅の間に「ちょっとメールを書きたい」とか「落ち着いた場所で軽くオンラインミーティングをしたい」と思ったことはないだろうか。自然豊かな奥会津だが、そんなニーズに答えられる場所が点在する。今回はLivhub編集部が実際に訪れたワークスポットを施設情報を中心にご紹介する。

1、越後三山只見国定公園 奥会津ビジターセンター

ビジターセンター外観 Photo by Kazuto Ishizuka

「人」の章でも紹介した、道の駅「会津柳津」隣接の奥会津ビジターセンター内の階段を登ると、2階には大きな窓から雄大な景色を望むことができるコワーキングスペースが設置されている。wi-fiやデスクライト、電源も完備し、1階ではコーヒーも注文できる。また、個室で集中したい時やリモート会議に参加する時などは、予約をすれば1階のワークスペースが利用できる。

旅の途中で道の駅限定の名物「あわまんじゅう詰め合わせセット」を買いに来たついでに、メールチェックをしたりちょっとした調べ物などをするのに重宝しそうだ。

道の駅「会津柳津」限定のあわまんじゅう詰め合わせセット

奥会津ビジターセンターは越後三山只見国定公園の情報発信拠点なので、ここで地域の自然や文化についての新たな情報を得てから、また新たな目的地へ向かう、というような使い方もお薦めだ。

ビジターセンター2階の展望・休憩フロア。wi-fiと電源、デスクライトが完備 Photo by Kazuto Ishizuka

住所 福島県河沼郡柳津町大字柳津字下平乙179
電話番号 0241-42-7081
運営主体 一般財団法人やないづ振興公社
開館時間 開館時間:9:00~17:00
アクセス 会津柳津駅より徒歩20分
URL https://okuaizuvisitorcenter.com/

2、ワーク・ラボ早戸本村

ワーク・ラボ早戸本村外観 Photo by Kazuto Ishizuka

奥会津の静かな山間の集落で豊かな自然を感じながら仕事をしたい方には、このワーク・ラボ早戸本村を薦めたい。運営主体の一般社団法人IORIクラブは、奥会津地域を拠点に、古民家再生や地域活性化に取り組む団体で、その思想と建築技術とを活かした心地よい空間が特徴のワークスペースとなっている。

古民家と座敷蔵を生かした趣ある建物の中にあるワークスペースには、wi-fiはもちろん大型モニターやペレットストーブ、趣のある和室なども完備している。利用料金は2時間3,000円からで、長期滞在の場合は1日あたり6,000円を切る料金設定も可能。

モニターやコピー機も完備したワークスペース Photo by Kazuto Ishizuka

当時の建具がそのまま残る和室 Photo by Kazuto Ishizuka

持続可能な地域づくりにも取り組むIORI倶楽部代表の金親丈史(かねおやたけし)さんは「地域に光回線が整備され通信環境が良好なため、IT企業のサテライトオフィスとしても利用されている。今では地域の会合や企業ワークショップ、大学の合宿などの場としても活用されることもある」と現状を語る。

近隣には名湯「つるの湯」や同じ運営元の「つるのIORIカフェ」もあるため、仕事後の息抜きの際にも便利。施設は完全予約制となるため、事前の連絡が必要となるが、まさに「暮らすようなワーケーション」にぴったりな滞在場所だといえる。

住所 福島県大沼郡三島町早戸字居平546
電話番号 0241-52-3444
運営主体 一般社団法人IORI倶楽部
開館時間 ■滞在利用 最低1週間~最長6か月 ※IORI倶楽部との提携により1~2日の短期利用も可能

■日帰り利用(滞在者の利用が無い場合に限る)10:00~18:00

アクセス JR早戸駅から2.3km
mail info@ioriclub.or.jp

3、コワーキングスペース一富士

大自然を望むマウントビューのワークスペース

全室マウントビューの眺めが魅力のワークスペース「コワーキングスペース一富士」。地域の空き家対策と新しい働き方のニーズに対応するべく、元々旅館だった空き物件をリノベーションし、2022年にオープンした施設だ。ドロップインでの利用を想定した20畳の部屋と、一定期間オフィス的に利用できる6畳間が2つ、日当たりのよいテラス席を備える。只見駅からも徒歩圏内で、wi-fi環境も整備、1時間500円と手頃な価格でドロップイン利用ができる。

ドロップインを想定した20畳のスペース

一定期間オフィス的に利用できる6畳間が2部屋完備

運営元であるの有限会社セイワ電子代表の目黒 道人さんによると、現在は都内からの利用者を始め、地元の子供の勉強場所としてなども幅広い利用があり、実際に利用した方からは「静かで落ち着く」という声もよく聞くそうだ。

すぐ向かいのパン屋「パンとお食事 こみと屋」でパンとコーヒーを買ってきて、食事をしながらゆったりと仕事をするのがここでのお薦めのワークスタイル。仕事がひと段落したら、近くの入浴施設「只見保養センター ひとっぷろまち湯」で身体を温めてリフレッシュするのも良さそうだ。

住所 福島県南会津郡只見町大字楢戸字舘ノ川1562
電話番号 090-8453-7415(担当:目黒)
運営主体 有限会社セイワ電子
開館時間 開館時間:9:00〜17:00(※冬季の運営についてはお問合せください)
アクセス 只見駅から徒歩12分
URL https://www.seiwadenshi.com/services/coworking.html

暮らすように味わう「奥会津ワーケーション」への誘い

「会津」という地名の由来は古事記まで遡る。そして「会津」という地名はかつて「相津」と記されていたそうだ。諸説はあるが、そこからは「会津」とはおそらく「津」、つまり水辺や多くの川が合流するところという意味に由来した地名であることが推測できる(福島県庁サイト「只見川の歴史」を参照)。

つまり只見川だけでなく、大川、日橋川、押切川など、周囲からたくさんの川が会津盆地に流れ込むことで自然の恵みが集積し、その景観や食、文化などの魅力を形づくっている場所がこの奥会津だということ。そんな自然の恵みが豊かな場所だけに、多くの人が気づいていない価値と魅力がまだまだ隠されている場所だと今回の滞在で感じた。

冒頭にも書いたがこの奥会津では、ワーケーションだけに限らず、その場所の風土をゆったりと楽しむ長めの滞在が向いている。もしこの記事を読んで奥会津を訪れた際には、暮らすように過ごす滞在の中で、自分だけの奥会津の楽しみ方を発見してみるのはいかがだろうか。

【参照サイト】ふくしまグリーン復興構想
【参照サイト】只見線ポータルサイト
【参照サイト】越後三山只見国定公園奥会津ビジターセンター

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いしづか かずと

Livhubの編集・ライティング・企画を担当。訪れた場所の風景と自分自身の両方を豊かにする旅を探している。神奈川と長野をいったりきたりしながら二拠点生活中。the GSTC Professional Certificate in Sustainable Tourism取得。環境再生医初級。