サテライトオフィス型ワーケーションとは?個人・企業・自治体のメリット・課題を解説

サテライトオフィス型ワーケーションは、企業が設置しているサテライトオフィスや、一般的なシェアオフィス、コワーキングスペースなどを利用してテレワークを行うワーケーションスタイルのことを指します。

近年では自宅以外の環境で集中して仕事をしたいという従業員のニーズに応えるためにサテライトオフィスを開設したり、シェアオフィスとの法人契約を行ったりする企業なども増えており、従来のオフィス通勤を前提とした働き方に代わる新たな働き方として注目を集めています。

企業のサテライトオフィス開設パターンとしては、主に営業など外回り活動を担当する社員の業務効率を上げる目的で都心部の本社近くに開設するケース、社員の通勤時間削減や働きやすさの向上を目的として社員の自宅が多い都市の郊外部に開設するケース、新規事業やBCP対策などを目的として本社とは離れた地方部に開設するケースの3つがあり、サテライトオフィス型ワーケーションの場合は、主に2つ目と3つ目のパターンが該当します。

サテライトオフィス型ワーケーションの場合、主に企業が自社専用のサテライトオフィスを開設するケースと、シェアオフィスやコワーキングスペースといった共用型のサテライトオフィスを法人契約するケースの2パターンに分かれます。シェアオフィスやコワーキングスペースを法人契約する場合、自社の専有スペースを用意するケースもあれば、完全に共有スペースの利用のみとするケースもあります。

サテライトオフィスの運営主体は、企業を誘致したい地方自治体が直接運営しているケースと、民間企業が運営しているケースの双方があります。地方自治体が運営するサテライトオフィスの場合は無料で利用できるところもあります。

サテライトオフィス型ワーケーションのメリット

サテライトオフィス型ワーケーションに取り組むメリットを個人・企業・自治体それぞれの立場から整理すると、下記のようになります。

個人のメリット

  • お試し移住ができる
  • 自宅から近い場所で働ける
  • 他企業との交流機会があることも

都心部の企業が地方部にサテライトオフィスを開設している場合、その地域に一定期間お試し移住し、働きながら地域の暮らしを体験することも可能となります。また、企業がより柔軟な働き方の実現を目指して自社のオフィス以外にシェアオフィスやコワーキングスペースを法人契約している場合、従業員としてはより自宅に近い場所で仕事をすることができ、通勤の負担も減るというメリットがあります。また、シェアオフィスやコワーキングスペースによっては、会員企業や会員同士の交流機会を用意しているケースもあり、企業の垣根を超えたつながりをつくることもできます。

企業のメリット

  • 地方における新たな事業機会の創出
  • 柔軟かつ多様な働き方の実現
  • 離職率低下・採用力の向上
  • コスト削減
  • BCP対策

都心部の企業が地方部にサテライトオフィスを開設する場合、進出地域において自社の強みを活かした新たな事業を展開できる可能性があります。都心部のIT企業が地方部にサテライトオフィスを構え、地域課題の解決につながるITサービスを開発するといった事例があります。

また、サテライトオフィスの開設やシェアオフィス・コワーキングスペースの契約により自宅と普段の職場以外にも働ける環境を増やすことで、より柔軟かつ多様な働き方を促進することができ、結果として離職率の低下や採用力の向上につなげることができます。従業員がライフスタイルやライフステージの変化に関わらず働き続けられる環境を整備するという意味でも、サテライトオフィス型ワーケーションは大きな効果を発揮します。

さらに、サテライトオフィスの開設場所によってはオフィスの追加賃料を上回る従業員の交通費を削減できる可能性もあるため、コスト面を特に意識する企業の場合は、事前にサテライトオフィスの開設により経費にどのようなインパクトが生まれそうかをシミュレーションすることも重要です。

他にも、複数拠点にオフィスを分散させることで、災害発生時にも継続して業務運営が可能になるなど、BCP(事業継続計画)対策の観点からサテライトオフィス開設を推進している企業もあります。

自治体のメリット

  • 域外企業からの投資呼び込み
  • 関係人口・雇用増加・移住促進
  • 遊休資産の活用

地方自治体が都心部の企業のサテライトオフィス誘致に成功すれば、家賃収入だけではなく、従業員の継続的訪問による交流人口・関係人口の増加、雇用の増加など、地域への経済波及効果を期待することができます。

また、サテライトオフィスの開設をきっかけに社員がその地域に移住するという事例もあり、サテライトオフィスの誘致は移住促進政策としても効果が期待できます。

さらに、最近では地域内の廃校や空きビル、古民家などを活用したサテライトオフィスの開設も増えてきており、うまくサテライトオフィスを稼働させることができれば自治体が保有する遊休資産の活用にもつなげられます。

サテライトオフィス型ワーケーションの課題

サテライトオフィス型ワーケーションを実施する際の主な課題を個人・企業・自治体それぞれの立場から整理すると、下記のようになります。

個人の課題

  • 交通費・宿泊費などの費用負担
  • 希望する場所とは限らない

自宅から離れたサテライトオフィスでワーケーションを行う場合、企業の規定によっては現地までの交通費や滞在期間中の宿泊費の一部またはすべてを個人で負担しなければいけないケースもあります。また、せっかく自社がサテライトオフィスを開設してくれたとしても、それが自身にとって都合のよいロケーションとは限らず、恩恵を十分に受けられないこともあります。

企業の課題

  • 賃料コストの増加
  • 社内ルールの整備
  • セキュリティリスク・コストの増加

企業がサテライトオフィスを開設したりシェアオフィス・コワーキングスペースを法人契約したりする場合、通常のオフィス賃料に加えて新たな賃料が発生することとなります。最近では、サテライトオフィスの誘致に積極的な自治体が期間現地でスペースの無料利用サービスを提供しているケースもあるため、コスト面が気になる企業は、無料のサテライトオフィスを利用するのも一つの手です。

また、実際にサテライトオフィスの運用を開始するにあたっては、サテライトオフィスまでの交通費負担や移動時間の取り扱い、宿泊を伴う場合の宿泊費負担をどうするかなど、細かい社内ルールを事前に整備しておく必要があります。

さらに、共用型のサテライトオフィスの場合は必然的に情報漏洩などのセキュリティリスクが高まるため、適切なセキュリティ対策を施しておくことが重要となります。

自治体の課題

  • 企業を誘致できる魅力づくり
  • 企業の定着に向けた施策
  • 地域との交流機会の創出

サテライトオフィスの誘致に取り組んでいる地方自治体は数多くあるため、自治体の立場としては、都心部からのアクセスのよさ、恵まれた自然環境といった地域ならではの魅力に加え、高速かつ安定した通信環境、セキュリティ対策、移住者の生活支援、地元企業や地元住民とのマッチングなど、いかに企業のニーズに沿ったサービスを提供できるかが誘致成功の鍵を握るでしょう。

また、一度サテライトオフィスを開設した企業が、その後うまく地域に定着できずに短期間でオフィスを撤退してしまうという事例もあるため、企業の定着を促進する仕掛けづくりも重要となります。具体的には、地域企業や地域住民との交流機会の創出や具体的な事業の連携など、サテライトオフィスの利用価値を高められるような施策が求められます。

総務省「おためしサテライトオフィス」

総務省では、サテライトオフィスの開設を検討している企業と、サテライトオフィスを誘致したい自治体をマッチングするために「おためしサテライトオフィス」という事業を展開しています。全国の地方自治体から、サテライトオフィスのおためし利用が可能な自治体を都道府県別に探すことができるため、サテライトオフィス型ワーケーションを実施したい企業におすすめです。

まとめ

いかがでしょうか?サテライトオフィス型ワーケーションは、企業における柔軟かつ多様な働き方を促進するうえで大きな可能性を秘めたワーケーションスタイルだと言えます。また、サテライトオフィスの開設を通じて異なる地域の企業や人同士がつながり、新たなイノベーションが生まれる可能性もあります。今後、企業の働き方改革や地方自治体によるサテライトオフィスの推進により、さらに働き方の選択肢が増えることを期待したいところです。

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