普段とは異なる場所で、余暇を楽しみながら仕事を行う「ワーケーション」。近年急速に注目が集まっているワーケーションですが、実際にどの程度の方がワーケーションを実施しており、市場規模はどの程度あるのでしょうか?ここでは、ワーケーションに関する複数の調査結果を基に、ワーケーションの実態についてご紹介します。
日本のテレワーク人口とテレワーカーの実態は?
ワーケーションは、ICT(情報通信技術)などを活用しながら普段仕事を行う事業所や仕事場とは違う場所で仕事を行う「テレワーク」の形態の一つです。国土交通省が2021年3月に公表した「令和2年度テレワーク人口実態調査-調査結果-」(n=40,000)によると、テレワーカーの割合や実態は下記のようになっています。
- 全就業者のうちテレワーカーの割合(2020年度):22.5%(前年比7.1%増)
- 雇用型就業者のうちテレワーカーの割合(2020年度):23.0%(前年比8.2%増)
- 自営型就業者のうちテレワーカーの割合(2020年度):18.9%(前年比1.6%減)
全就業者のうち、約5人に1人(22.5%)がテレワークの経験者であることが分かります。日本の労働人口は約6860万人(2021年)ですので、単純計算すると約1540万人がテレワーク経験者という計算となります。また、2019年度と2020年度を比較した際に、自営型就業者はテレワーカー比率が落ちているのに対し、雇用型就業者はテレワーカー比率が8.2%増加しており、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、企業で働く従業員の方々のテレワークが急速に浸透したことが分かります。また、テレワーカーの属性に関する主要なデータをまとめると、下記となります。
- 全就業者におけるテレワーカーの割合は、男性が28.2%・女性が15.6%
- 雇用型テレワーカーのうち特に割合が高いのは30~39歳男性(32.7%)と50~59歳男性(31.7%)
- 雇用型テレワーカーの割合は地域別に見ると首都圏が最も高い(34.1%)
- 雇用型テレワーカーの割合は業種別に見ると情報通信業が最も高い(66.1%)
- 雇用型テレワーカーの割合は企業規模別に見ると1,000人以上の企業が最も高く(32.3%)、企業規模が大きくなるほど割合が増える傾向にある
- テレワークの実施場所は在宅型が最も多く(90.3%)、サテライト型が32.7%、モバイル型が30.4%
上記データから見えてくるテレワーカーの最も典型的なペルソナは、「情報通信系の大企業に勤める首都圏在住の30~39歳の男性」です。また、テレワークの実施場所としては、ワーケーションが該当するサテライト型(自社の他事業所、または複数の企業や個人で利用する共同利用型オフィス等でテレワークを行う人)、モバイル型(訪問先・外回り先、喫茶店・図書館・出張先のホテル等、または移動中にテレワークを行う人)の割合はいずれも3割程度となっています。全就業者のうちテレワークの経験者が22.5%、そのうちサテライト型・モバイル型のテレワーク割合は3割程度ですので、両者を掛け合わせると全体のうち6~7%程度(約100万人程度)がサテライト型またはモバイル型でテレワークを実施しているという計算となります。
日本のワーケーション人口は?
日本におけるテレワーク人口や実態の概要を掴んだところで、次はワーケーション人口について見ていきます。株式会社クロス・マーケティングと山梨大学生命環境学部地域社会システム学科の田中敦教授・西久保浩二教授の研究グループが全国47都道府県に在住する男女20~64歳の就業者(指定職業・職種を除く、76,834人)を対象に実施した「ワーケーションに関する調査(2021年3月)」によると、2021年のテレワーク経験者の割合は39.6%で、そのうちワーケーションの経験率は6.6%となっています。つまり、調査対象者全体の約2.6%がワーケーションの経験者という計算となります。この数値を単純に日本の労働人口(約6860万人)と掛け合わせると、ワーケーション人口は約180万人程度と推定できます。ただし、日本の労働人口は15歳から19歳までの人口と65歳以上の人口も含まれるため、実際のワーケーション人口はより少ないと考えられます。
日本のワーケーションの市場規模は?
続いて、日本国内におけるワーケーションの市場規模について見ていきます。株式会社矢野経済研究所が2021年3月に公表した調査結果によると、2020年の国内のワーケーション市場規模は699億円と予測されており、2020年度から2025年度までの年平均成長率は約40%で推移し、2025年度の国内ワーケーション市場規模は2020年度の約5倍となる3,622億円に成長すると見込まれています。
同市場規模は、ワーケーションの滞在にかかるサービス(宿泊インパクト)、飲食費など日中の活動にかかるサービス(地域インパクト)、通常業務以外の研修や合宿などにかかるサービス(研修インパクト)、ワーケーションを推進するために各省庁で予算化された事業規模(国家予算)を対象として算出されたものとなっており、2020年度は「国家予算」の割合が最も高いものの、2025年度には「宿泊インパクト」が最も大きくなると予測されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?日本におけるテレワーク・ワーケーション人口や実態、市場規模に関する調査データをご紹介しました。上記のデータからは、ワーケーションの経験者比率はまだまだ少なく、大きな成長余地があることが分かります。今後、企業の働き方改革や自治体による受け入れ整備などが進み、よりワーケーションをしやすい環境が整っていくことを期待したいところです。
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