「JATA(日本旅行業協会) SDGs アワード」優秀賞を獲得した4つの取り組み

旅行需要の拡大と旅行業の健全な発展などを目的に活動する一般社団法人日本旅行業協会は、2023年より「JATA SDGsアワード」を開催している。

JATA SDGsアワードは、旅行業界におけるSDGs達成を促進するための表彰で、「社会・人権部門」「経済・産業部門」「地球環境部門」「共創部門」の4カテゴリーに、それぞれ優秀賞・特別賞・奨励賞が用意されている。

部門分けはSDGsの目標に沿っており、たとえば社会・人権部門はSDGsの目標のうち1(貧困をなくそう)・2(飢餓をゼロに)・3(すべての人に健康と福祉を)・4(質の高い教育をみんなに)・5(ジェンダー平等を実現しよう)・11(住み続けられるまちづくりを)・16(平和と公正をすべての人に)に関連した取り組みが対象だ。審査においては、持続性や他社でも取り組める汎用性などが評価のポイントとなる。

本記事では、2024年6月に発表された第2回JATA SDGsアワードの優秀賞を4つ紹介していく。

1.【社会・人権部門】株式会社エイチ・アイ・エス:聴覚障害があっても旅を楽しめるように 手話で学ぶトラベル教養講座「しゅわ旅カレッジ」

画像引用:しゅわ旅カレッジ | HISユニバーサルツーリズムデスク

社会・人権部門にて優秀賞を受賞した「しゅわ旅カレッジ」は、聴覚に障がいのある方・中途失聴・難聴者の方を対象としたHISのトラベル教養講座だ。旅にまつわる不安を解消し、海外旅行への第一歩を踏み出せるようサポートしている。これまでに、手話対応ガイドを招いてのトレッキング説明会や航空会社の訓練施設見学といった活動が行われてきた。

その他にも、神奈川県横浜市のホテルニューグランドでランチフルコースを楽しみながらテーブルマナーを学べる講座や、国際手話ガイド同行で首都圏で水害を軽減することを目的とした治水施設である「外郭放水路」などをめぐる防災ツアーも開催する予定だ。

本取り組みを行うHISユニバーサルツーリズムデスクでは2002年の設立以降、介護・福祉関連の専門知識を持つスタッフや、手話のできるスタッフが、旅の相談や手配を行なっている。詳しくは、HISのユニバーサスツーリズムデスクのWebサイトからご確認を。

2.【経済・産業部門】株式会社読売旅行:被災地復興・風評の払拭を目指す福島県・浜通りツアー

画像引用:【福島県浜通り】ふくしま常磐をまるごと味わう旅|読売旅行

経済・産業部門の優秀賞及受賞した読売旅行の福島県浜通り地域でのツアーは、大賞にも輝いている。

【福島県浜通り】ふくしま常磐をまるごと味わう旅」は、東日本大震災で大きな被害を受けたこの地域の魅力を体験する1泊2日のツアーで、震災からの復興と農業の再生を目指し、町の新たな特産物として栽培を開始した東北初の無農薬バナナなどがなる「広野町・トロピカルフルーツミュージアム」や、震災により甚大な被害を受けたにもかかわらず、全員が無事避難することができた奇跡の学校「請戸小学校」などを訪れるなど、新たなふくしまを堪能できるツアーとなっている。同様のツアーを2024年内にも開催予定だ。

3)【地球環境部門】ベルトラ株式会社:環境に配慮した「大人の修学旅行」や癒しの体験

画像引用:大人の修学旅行『世界一サンゴと人にやさしい村で学ぶSDGs』|ベルトラ

地球環境部門の優秀賞を受賞したベルトラは、アドベンチャーツーリズム・サステナブルツーリズム・ガストロノミーツーリズム・ウェルビーイングツーリズムという4つの軸で次世代につながるツアーの積極的な造成を評価された。

特に「大人の修学旅行」という名のサステナブルツアーでは、楽しさに加え学びの要素がふんだんに盛り込まれている。例えば沖縄県・恩納村で行われる「大人の修学旅行 世界一サンゴと人にやさしい村で学ぶSDGs」では、サンゴ植付けシュノーケリングや赤土対策現場の見学といった環境活動の体験やビーチクリーンなど、旅を楽しみながらも沖縄の未来に繋がるアクションができる。

他にも、心身ともに満たされた状態に導くウェルビーイングツーリズムなど、環境・社会・経済そして自分自身の持続可能性につながるツアーが多く造成されている。

4)【共創部門】トヨタファイナンシャルサービス株式会社:乙女よ駆けろ!野うさぎスタンプラリー

画像引用:\高校生企画/ 野うさぎスタンプラリー開催!! | my route 富山

共創部門の優秀賞、「乙女よ駆けろ!野うさぎスタンプラリー」は、トヨタファイナンシャルサービスのおでかけアプリ「my route」を使って映えスポットをめぐるツアーだ。このスタンプラリーが実施された富山エリアでは、公共交通機関の利用者が少ないという課題を抱えていた。そこで、地元の高校生の協力のもと電車沿線のカフェや展望台を計18か所ピックアップ。集めたスタンプの数に応じて、景品をプレゼントした。

イベント期間中は、1日乗車券の利用が前週比310%と大幅に増加。公共交通機関の利用を促すことで、CO2排出量を減らせたのはもちろん、地域経済の活性化にも寄与している。参加者の移動データを今後の観光戦略に活用できる点も、高く評価された。

サステナブルな旅の選択肢が溢れる未来へ

サステナブルな暮らしの選択肢は少しずつ社会に増えつつある。一方サステナブルな旅はどうだろうか?
より多くの人が強く意識せずともサステナブルな旅の選択をしていけるように、今後も本質的に社会や環境により良い影響を与える旅が造成されることを願ってやまない。

【参照サイト】JATA SDGsアワード | 一般社団法人日本旅行業協会
【関連ページ】ゼロから始めた “ふくしま” の人たちにパワーをもらいに。ふくしま・浜通りワーケーション
【関連ページ】人と人の想いを共有し、未来へつなぐ旅。「サステナブルな旅AWARD」2023年受賞商品決定

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Hiroko ASATO

元保護猫と暮らすライター。好きな野球・サッカーチームの遠征についていって、その街を旅するのが楽しみ。最近は大河ドラマ関連の史跡めぐりと、気軽に行ける地元の銭湯サウナに夢中。