今や世界最大の民泊仲介プラットフォームとして誰もがその名を知るところとなったAirbnbだが、そのAirbnbが唯一苦戦を強いられている巨大な市場がある。それが中国だ。中国には途家(Tujia)など国内発の民泊仲介サイトが多数存在しており、地元の不動産企業らとの強力なネットワークも武器にしながら急激な成長を遂げている。
Airbnbは先日も中国市場におけるシェア拡大とブランド強化に向けて中国向けサービスブランド名を「Aibiying(愛彼迎)」に変更したばかりだが、あいにくこの名前については賛否両論があり、中国においても未だにAirbnbという名前のほうが知名度は高い。
しかし、その中国市場におけるサービス拡大に向けて、Airbnbは中国からのアウトバウンド先として日本に注目していることが明らかになった。すなわち、日本の立場からはインバウンドとなる。Airbnb のPolin Mehtaディレクターが、シンガポールで開催されていたカンファレンス「InnovFest unBound」のなかで、CNBCのインタビューに対して語った。
Mehta氏は、中国には国外への旅行者という巨大なアウトバウンドのマーケットがあり、アジアの旅行者の3分の1が日本であることを考慮すれば、中国の日本向けアウトバウンド市場は非常にエキサイティングだと言う。
また、同氏は日本のホストを増やしていくことは高齢社会に向けた日本政府の政策とも合致するとしている。たしかに日本のシニアホストによるおもてなしは海外からやってきたAirbnbゲストからの評価も高く、高齢者が多い農村部では地方創生の手段として民泊の活用が期待されている。
空き家などの資産をうまく活用することで高齢者の貴重な収入源になる上、観光客が一極に集中するのではなく地域に分散することで地域経済が活性化し、観光客もその地域ならではの特色を活かした多様な経験をすることができるというメリットがある。
Airbnbは全世界で300万件以上のリスティングを掲載しているが、現在中国のリスティングはそのうちわずか8万件と事業全体のごく一部に過ぎない。しかし、中国観光学院の公式データによれば、2016年にはおよそ2億2200万人の中国人が海外旅行をし、約1098億米ドル(約12兆2860億円)を費やしたという。日本のデータによれば、2016年に27.6%増の約637万人の中国人が訪れたとのことで、巨大な2つの市場に太いパイプラインがあることが分かる。
アウトバウンドでAirbnbを体験し、そのよさに気づいた中国人観光客が地元に帰ってから、次は民泊のホストとしてゲストをもてなす側に転換する可能性も大いにある。アウトバウンド市場を狙うというのは一見遠回りのようにも思えるが、中国市場において長期的にAirbnbのブランド力を高める上では重要な戦略の一つだと言える。
欧米では既に一定のシェアを獲得しているAirbnbが、アジア、そして中国という潜在性の高い市場にかける意気込みの強さが感じられる。Airbnbの中国における積極的な日本向けアウトバウンドプロモーションが実施されれば、日本の民泊ホストも大いに恩恵を受けることになる。今後の同社の展開に期待したいところだ。
【参照サイト】To expand in China, Airbnb is eyeing Japan and its aging population
(Livhub ニュース編集部)


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