世界190ヶ国、34,000都市以上で200万件以上の物件を掲載しており、未上場企業ながら既に時価総額240億米ドル(約3兆円)とも言われる世界最大手のバケーションレンタルサービス、Airbnb。その共同創業者、ネイサン・ブレチャージク氏が、Airbnbの日本市場における今後の展開と見通しについて語っている。
英国のビジネス誌「CITY.A.M」が3月7日に公開した同氏のインタビュー記事によると、Airbnbの2016年の注力テーマは「ホリデーレンタル」「出張」、そして「アジア」の3つとのことだ。そして、Airbnbは昨年中国において700%成長を果たし、特に中国から海外へと旅行する観光客の利用が劇的に増加したが、旅行の目的地として最も成長しているのが、ずばり日本だという。
しかし、海外では日本政府による民泊に対する規制のニュースが流れ、日本市場の今後については懸念視する声も多い。実際に、2月18日にブルームバーグが配信した”Airbnb Faces Major Threat in Japan, Its Fastest-Growing Market“という記事は世界中で波紋を呼んだ。日本のAirbnbホストの中にはこの記事を目にした海外のゲストから「自分の予約は大丈夫なのか?」「6泊7日以上でないとだめなのか?」といった問い合わせを受けて、対応に追われたという方も多いのではないだろうか?
このような日本を取り巻く現状を、Airbnbのネイサン・ブレチャージク氏はどのように見ているのだろうか。同氏は記事の中で、日本市場の展開の今後について楽観的な姿勢を示している。その理由は2つだ。一つは、日本では2020年の東京五輪に向けて準備を進めているが、既にホテルなどはキャパシティの限界に達しており、そのためにAirbnbのようなホームシェアリングサービスに対する強い関心が生まれていること。
そしてもう一つは、高齢化する日本の人口構成にあると説明している。日本では高齢化により住宅が余っており(空き家)、かつ高齢者を支えるための収入も必要となっている。この2つの問題を解決するうえで、Airbnbは役割を果たすことができる、というのが同氏の考えだ。実際に、同様に高齢化が進んでいる英国ではホストの30%が50歳以上となっており、その多くが70代や80代だという。彼らにとって、Airbnbを通じて部屋を貸し出すことは大きな家計の足しになるとのことだ。
Airbnbをはじめとする民泊は、テロへの利用など安全面における問題や、旅館業法を遵守している既存のホテル産業との公平な競争の観点など、様々な点から議論を呼んでおり、政府は4月1日から旅館業法のもとで全国的に民泊を解禁するものの、この解禁は実質上の規制強化にあたるとの見方も強い。
一方で、日本経済の今後を考えれば、インバウンド需要をいかに最大限に取り込むか、地方の空き家などをどのように有効活用するかといったテーマは非常に大事であり、その解決策として「民泊」が担いうる可能性の大きさもしっかりと考慮すべき点であることは間違いない。
従来のホテル産業との公平な競争の確保という観点は非常に重要だが、Airbnbのように世界中で広がり続ける「シェアリングエコノミー」という新たな経済秩序のなかで、日本が再びガラパゴスになってしまうことだけは避ける必要がある。Airbnbが戦略的な注力市場として定めている日本が、今後どのように民泊が抱える課題とうまく折り合いをつけながら実需をしっかりと取り込んでいくのか、政策側のバランス感覚ある舵取りに期待したところだ。
【参照記事】Airbnb co-founder Nathan Blecharczyk talks Japan, business trips and blockchain
【参照記事】Airbnb Faces Major Threat in Japan, Its Fastest-Growing Market
(Livhub ニュース編集部)
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