「朝起きたら、すぐにスマホをチェック」。あなたにも心当たりがないだろうか。米国のある調査では対象者の89%が、起床後10分以内に携帯電話をチェックしていると回答した(※)。そして、朝から無限スクロールが続く1日に引きずり込まれていくのだ。スマートフォンは便利な反面、オン・オフの境が曖昧になり人の健全な生活リズムを崩す要因になりかねない。
そうしたなか、世界中がデジタル空間に閉じ込められたコロナ禍のさなかにあった2020年にイギリスで発足したのがデジタルデトックスキャビン「unplugged」だ。
共同創業者のベンとヘクターは、テクノロジー系スタートアップでともに働いていた仲。デバイスのスイッチを切ることができずに息苦しさを覚えたヘクターは、ヒマラヤに逃避行動を起こした。まるで禅のような世界で、瞑想したり家事をしたりしながら人生の意味について深く考えた。すっかり燃え尽き症候群から回復すると、職場に復帰するのではなく逆に退職。1日14時間もスクリーンに費やしていたベンも追随した。
「どうすれば多忙な都会の人々が、地球の裏側まで行くことなくデバイスから離れて元気を取り戻すことができるだろうか」この問いに答えるべく、ロンドンやマンチェスターから1、2時間の美しい自然の中にオフグリッド・キャビンを建てることになった。
Unpluggedの滞在プランは全て3泊もしくは4泊、デジタルデトックスをするのに最適な期間を設定しているという。キャビンには「スマホを閉じ込めて、本当の時間をオフラインで過ごして」と書かれた鍵付きの箱があり、スマホなどのデジタル端末を遠ざけることができる。
窓から自然をながめながら、キャビンに準備された、焚き火台やインスタントカメラ、コンパスと地図、ラジオにカセット、本、ボードゲームなどでオフラインの生活を堪能する。緊急時の連絡のために旧式のNokia携帯電話が置かれているのも安心ポイント。
昨今インターネットで常に社会と接続されているつもりながら、リアル世界ではスマホに見入って周辺の人や物事に意識が向かない「ファビング」という行為が社会問題化していたり、オックスフォード大学が2024年の流行語に「brain rot(脳腐れ)」つまりは、スマホの画面を延々とスクロールするうち「脳が腐っていく」ように感じる状態を選定したりと、過剰なデジタル接触による悪影響が各所に見られるようになってきた。
取り残されることへの恐れFOMO(フォーモ)からソーシャルメディアやスマホにアクセスしすぎてしまう。集中力が続かない。睡眠の質が悪い。気が散りやすい。なぜだかすごく不安を感じる。
もし何か当てはまるものがあるならば、そろそろデジタルデトックスが必要なサインかもしれない。
3日〜4日ゆっくり時間をとって、オフライントラベルにでてみては?スクリーンを見つめることで見逃していた景色が、外にも中にも見えてくるはず。
(※)REVIEWS.org/Cell Phone Usage Statistics: Mornings Are for Notifications
【参照サイト】Digital detox cabins to (esc) screens
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拓馬
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