朝起きてすぐにスマホを手に取ってSNSをチェックし、夜寝る前にもスマホをお供にする生活。
「スマートフォン利用に関する生活者実態調査(PR TIMES調べ)」によると、現代人がスマホに触れてる時間は、一日約6時間だという。たった10数年前には持っていない人も一定数いたのに、いつのまにスマホはこれほどに私たちの生活に入り込んでいたのでしょう。
遡ること15年ほど前、もちろんスマホやWi-Fiなど便利なテクノロジーのなかった時代。計4年ほどかけて世界を一周した筆者が、提案したいのが「オフライントラベル」つまりは「スマホなし(オフ)旅」です。
今なぜアナログ旅なのか
スマホが一台あれば撮影、地図、情報収集と旅に必要なことがすべてできる便利な時代。
ネット環境さえ整っていれば、という条件はあるものの、国内外でたいていの都市部においては苦労なく必要な情報を手に入れることが可能だと思います。
かつての私のように日本にいる家族や友人にテレホンカードで公衆電話から電話しなくても、連絡や情報収集のためにネットカフェに駆け込まなくてもいい。現代の旅は、あの頃の夢でもあるのです。
利便性を手に入れたのと同時に、この10数年で失われたものがあるとしたら、私たちの感覚かもしれません。不便で不自由な旅は、人の感覚を研ぎ澄ませてくれます。旅を続けるほど面白そうなもの(場所)には鼻が利くように、危険なもの(場所や人)には近づかないようになっていきます。それが旅人の勘、と呼ばれるものです。
そんな勘を取り戻し、旅を五感で味わうためにも、あえて今スマホを切って旅してみませんか。
数日の国内旅行なら持たないという選択肢もありですが、緊急の連絡が届かないのは困りますよね。その場合は、スイッチオフにしてバックパックの奥底に潜ませておくといいでしょう。
経験を元にしているため、主に国外旅行の前提で進めますが、もちろん国内旅行でも応用できるはずです。
ネットなし!情報の集め方
不便・不自由な旅において情報をいかに集めるかは、旅の質を左右するカギ。そのヒントを旅の前と道中にわけて紹介します。
【旅の前】
ガイドブック
スマホ、ネットなしの旅において主な情報源はガイドブックでした。日本人は「地球の歩き方」、英語がわかる人は「ロンリープラネット」が主流。主な観光地だけでなく、実際にその地を旅した人の声が掲載されていることもあり、特にバックパッカーに重宝されていました。ただ紙の媒体というのは取材してから出版までにタイムラグがあるために、いざガイドブックを手に旅に出る頃には、内容が変わっているということは多々ありました。それも旅のだいご味という大らかさが必要に。
また旅先が一ヶ国の場合は一冊でまかなえますが、複数の国を一度に旅する場合には、何冊も必要になります。なるべく身軽に旅したい場合には、図書館で複数のガイドブックを借りて必要なページをコピーして携帯する旅人が多くいました。
【旅の途中】
旅人やスタッフと交流
旅の途中でさらなる情報が必要になる場合、一番効率がいいのはほかの旅人から情報を得ること、つまり生きた口コミです。ゲストハウスやホステルなど旅人が集まる宿泊施設のほか、各地に旅人が集まるカフェなどもあるため、そういう場所へ出向いて交流するのがおすすめ。
私が実践していたのは、宿のスタッフと仲良くなること。彼らは必ずしもローカルではないですが、日々旅人たちからさまざまな情報を吸収しているため、豊富な情報や現地とのコネを持っているのです。仲良くなり、地元の人のみ知るようなスポットに一緒に出掛けることもよくありました。
宿にある情報ノートを読む
宿や飲食店にある情報ノートは、かなり重要な情報源でした。ネット環境がここまで進んだ今、需要は明らかに減ったと思いますが、もし残っていたらぜひ一度は手に取ってもらいたいのが情報ノート。それは、旅人同士を繋ぐ存在だったのです。
その地を訪れた旅の先人たちにより、ガイドブックでは決して手に入らないような細やかな情報が記録されています。近所のお得なスーパー、サービスのいいネットカフェ、現地の味を食べられる屋台などあらゆるおすすめや実体験が、イラスト入りのマップなどと一緒に書き込まれているのです。また要注意人物なども書き込まれていて、旅先でのトラブルを回避するのにも役立つ、旅人同士の交換ノートのような存在でもありました。
そしてガイドブックには載っていないけれど旅人が求める地、というのも少なくありません。もしくは行き方が詳しく記されていない場所なども、幾度となくこれらの情報ノートに助けられました。
現在は数は減っていると思いますが、世界中にある日本人宿、日本食レストランなどを訪ねて探してみるのも面白いかもしれません。
スマホなし!散策のお供に
スマホのない旅とは、グーグルマップなどオンラインのマップが使えないということです。今となっては想像するのが難しい状況ですが、そうした不便な環境でも散策を楽しむことは可能!経験を元にその方法をいくつか提案します。
ガイドブック
情報収集の仕方にも書きましたが、オフラインの旅においてガイドブックは重宝します。ガイドブックが重いなら、地図のページをコピーして持ち歩くという手も。必ず訪れたい飲食店などはその地図に書き込んでおくといいでしょう。また旅のあいだはメモを取る機会が多いので、使い終わった地図は裏紙として利用すると無駄が出ずおすすめです。
紙製のマップ
スマホを持っていると意識することもありませんが、紙のマップはさまざまなところで配布されています。例えば主要駅やその近くにあるインフォメーションセンター、滞在先のホテルなど。それらの場所で入手できるマップは、コンパクトに折り畳んでバッグやポケットに忍ばせておくと安心です。
選べるほど選択肢がある場合は、位置関係がよくわかるものを優先的に選んで。イラストや文字が派手に配置されているものではなく、しっかりと地図の役目を果たしてくれるものを選びましょう。
またインフォメーションセンターのものは広告も多めですが、宿に置かれているものはゲストハウスが独自で作っているものもあり、ローカル目線でおすすめのカフェや飲食店が載っていることも。地元の人になった気分で町の散策を楽しむのに一役買ってくれます。
記録は目とカメラで
スマホは片手に持ったまま散策できるので、何気ない風景など次々と撮影してしまいがちに。ですがカメラを使っていた頃は「この瞬間を残したい!」と思うたび、わざわざバッグから出して撮影していました。特に心に残る瞬間をメインに撮影する、それ以外は目でしっかりと楽しむことに集中してみてはどうでしょうか。
食事するときは味わうことに、人と交流するときはその会話に集中するなど、その瞬間を積極的に味わってみるのです。撮影にばかり気を取られていると、目の前の感動を取り逃してしまうことになりかねません。
無計画さも旅のエッセンス
毎日でなくてもいいし、時間に余裕があるときでいいのですが、旅のあいだに一日くらいはなんの予定も立てずに過ごす、という贅沢な経験をしてみてるのもおすすめです。
現地の言葉や方言に耳を傾け、その土地の熱気に身を浸し、地元の人が愛するソウルフードを堪能する……。道端で出会う人が、新しい場所や人とのご縁を繋いでくれることも。
そんな可能性に満ちた旅は、環境が不便だからこそできることかもしれません。
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今回はスマホを切って旅をする、オフライン旅を提案しました。旅は感覚を研ぎ澄ますチャンス。多少の苦労を伴う旅路は、そうでないものより心を動かし、鮮明に記憶に刻み付けられるように思うのです。全工程でなく旅のある日の午後だけでもいい。スマホが手放せない今だからこそ、アナログな旅を体験してみてはいかがでしょうか。
【参考サイト】スマホを1日何時間使っている?意識と実態に3時間差「スマートフォン利用に関する生活者実態調査」 公開
mia
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