サステナブルとは持続可能という意味を持つ。しかし今一度考えてみたい。私たちは現状を“持続”させるだけで良いのだろうか。それほどまでに、現状は未来まで“持続”させたいと思えるような状況にあるのだろうか。
近年そうした懐疑などを発端に、「今を持続させるだけでなく、よりよくしていく『リジェネラティブ=再生させる』ように動いていこう」といった考え方が分野横断的に出てきており、観光も例外ではない。
イギリスの国立公園は、今年8月「リジェネラティブツーリズム(再生型観光)」の新しいビジョンを発表した。
英国立公園の観光責任者であるトム・ハインド氏は「適切に管理すれば、観光は人と場所を変える力を持つ。コミュニティにポジティブな影響を与え、富を生みだし、人々と自然を結びつけ、景観保全を促し、私たちの最も貴重な景観を大切にするよう促すことができる。よい変化のためには、観光の悪影響を最小限に抑えることから、訪問者が訪れることで国立公園がよりよい場所なっていくように変化していく必要がある」とNational Parks UK公式サイトにて述べる。
National Parksのサイトにはこうした記述もある。「簡単に言えば、観光開発は『害を少なくする(doing less harm)』という立場から『受け取る以上のものを還元する(helping give back more than it takes’)』という立場へと移行する必要がある」。
本ビジョンにおいて、国立公園当局は以下の6点を注力活動として掲げている。
・国立公園当局が与えるインパクト(影響)の測定
・より回復力、耐久力のある地方ビジネスの開発
・低炭素、カーボンフリーな旅の支援と促進
・あらゆる人々が利用可能な目的地の開発
・自然に恩恵をもたらす低炭素な体験の開発
・地域固有の独自性を大事に
具体的には、観光客が直接参加できる自然回復プロジェクト(植樹、池の造成など)や、自然との触れ合いや健康増進を目的とした体験開発、地域の伝統や遺産とつながりを感じる体験の開発など、再生型観光を促進するためのさまざまな取り組みが行われる予定だ。
意識をしないと忘れてしまうが、私たちは地域や自然環境、文化など、多くのものごとから日々多くを与えてもらって生きている。旅においてもそれは同様だ。受け取るものに対してお金を還元することも重要だが、それだけでいいのだろうか。
課題だらけの今を持続させることに留まらず、よりよい状態にしていくためには、「あれができてない、これもできてない」といった後ろ向きの減点方式から一度離れ、「どうすれば、よりよくなるだろう?どんなアイデアがあるだろう?」といった前向きな問いと共に変革していけるほうがよいのかもしれない。
【参照サイト】UK National Parks set out new vision for regenerative tourism
【参照サイト】Regenerative Tourism in UK National Parks
拓馬
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