飛行機代に「環境チャージ」を含めます。ルフトハンザ航空が始めた持続可能な世界のための対応

ルフトハンザ

島国に住む私たちは、日本国外に出るためには飛行機という移動手段を取らざるを得ない。船という選択肢もなくはないが、飛行機の価格と利便性を考えると、その選択を取れる人はまだ多くないだろう。しかし、気候変動の問題が加速する現代において飛行機に乗ることによる環境負荷は大きく、排出した分と同量の温室効果ガスを削減、吸収、回避する「カーボンオフセット」の個人での対応も推奨されはじめている。

ただ、カーボンオフセットを行うには、「カーボンオフセットをする」と自ら決定のうえでチケット代金とは別で追加料金を支払わなくてはならず、その選択を下すのはハードルが高いと感じる人も多いだろう。

環境チャージを料金に組み込んだ、ルフトハンザドイツ航空

ドイツの航空会社ルフトハンザは「環境チャージ」の導入を決定した。2025年1月1日以降にEU(欧州連合)加盟27カ国、ノルウェー、スイス、英国から出発するフライトに最大72ユーロのサーチャージが適用される。

これは、持続可能な航空燃料(SAF)の導入、欧州域内排出量取引制度(EU ETS)、国際民間航空のカーボン・オフセットおよび削減スキーム(CORSIA)などの環境規制に対応する費用をまかなうための処置だ。

オーストリア航空など、ルフトハンザグループの各航空会社でも同様に環境チャージが導入される。航空運賃の金額に応じて、低めのものは環境チャージも低く設定され、金額が上がると環境チャージも高くなる仕組みだ。

エールフランス-KLMは、2022年1月にSAFチャージを導入した初の大手航空会社になった。ここに来てルフトハンザも同様のチャージを導入したことで、今後は他の航空会社が追随する可能性があるだろう。

カーボン・オフセットを個人が追加で行うのはハードルが高いが、料金に組み込まれることで公平に負担され、利用者と航空会社、そして地球にとっても妥当な解決策だろう。

航空業界で高まるSAFの供給量増加の重要性

航空業界は、温室効果ガスを排出による環境負荷が大きいことが課題になっている。ヨーロッパの国の中には短距離フライトを禁止する動きもあるが、長距離フライトは有効な代替の移動手段がなく、SAFの重要性が高まっている。

2023年のSA​​F生産量は全世界で約6億リットルで、2024年は3倍の18億リットルを超えると国際航空運送協会(IATA)は見積もっているが、それでも燃料需要のわずか0.53%に過ぎない。

従来の化石燃料を代替する航空バイオ燃料であるSAFは「再生可能代替航空燃料」とも呼ばれるが、EUが定める法定混合割当量は、2025年以降が2%、2030年以降が6%、2035年以降が20%、2050年以降が70%と段階的に上昇していく。

SAFは従来の石油ではなく植物由来の燃料のため環境負荷が小さいが、現状として供給量が不足しており、生産コストは従来のジェット燃料の最大5倍になっている。今後、生産量が増えるにつれて燃料需要に占める割合が上昇し、コストも低下していくことだろう。

飛行機に乗るならば、自動的に環境チャージを支払う。そうすることでSAFの開発や導入が進み、飛行機とともにある未来をはじめて想像できるようになる。外を見ることで内の価値をはじめて理解できる。島国日本においても、同様の取り組みが進んでいくことを願う。

【公式サイト】Lufthansa Group introduces Environmental Cost Surcharge
【参照サイト】Lufthansa is adding up to €72 to ticket prices to pay for sustainable fuel
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拓馬

昔からつい遠くに趣いてしまう癖があり、気がついたら海外でノマド(遊牧民)に。インターネットという大自然の恩恵に浴し、世の中を斜に眺めながらの独り言。リアルの大地とデジタルという名の大空のはざまにさすらい、いまだ見ぬ世界への旅路を今日もゆく。