ここではAirbnbを初めとする欧米圏発の民泊仲介サイトについてまとめています。欧米圏発の民泊仲介サイトは非常に数多く存在しており、最大手のAirbnbをはじめ、大手のオンライン旅行会社に買収された企業や、引き続き独立系として奮闘している企業など様々で、全体像を掴むのが非常に難しいのですが、ここでは資本関係をベースとした区分で主要なプレイヤーを整理してみました。
なお、現在世界では既存の旅行プラットフォーム事業者やホテル関連企業による民泊仲介サイトの大型買収が相次いでおり、今後も業界全体の勢力図は大きく変わっていく可能性があります。
独立系世界最大手
Expedia(エクスペディア)グループ
Trip Advisor(トリップアドバイザー)グループ
- Flipkey(フリップキー):アジア圏に強み
- Holiday Lettings(ホリデーレッティングス):欧州圏に強み
- Niumba(ニュンバ):スペイン語圏に強み
- House Trip(ハウストリップ):欧州圏に強み
Priceline(プライスライン)グループ
- Booking.com:オンライン旅行予約最大手。民泊以外も扱う
- Agoda(アゴダ):アジア圏に強み。民泊以外も扱う
AccorHotels(アコーホテルズ)グループ
- OneFineStay(ワンファインステイ):高級物件に特化
その他独立系
- Wimdu(ウィムドゥ):ドイツ発
- 9flats(ナインフラッツ):ドイツ発
- StopSleepGo(ストップスリープゴー):イギリス発
- Interhome(インターホーム):スイス発
- BedyCasa(ベディカーサ):フランス発
- Cities reference(シティーズ・リファレンス):イタリア発
- WaytoStay(ウェイトゥステイ):スペイン発
独立系にして世界最大手のAirbnb
Airbnb(エアビーアンドビー)
Airbnb(エアビーアンドビー)は言わずと知れたバケーションレンタルサービス世界最大手のサービスです。2008年にアメリカのサンフランシスコでスタートしたサービスで、2022年3月時点で世界10万の都市に600万以上のリスティングが掲載されています。日本法人のAirbnb Japanは2014年5月に東京に設立されました。
Airbnb設立以来、2022年3月時点でAirbnbのホストが得た収益は約1,800億米ドルを超え、Airbnbを通じてゲストがチェックインした回数は10億回を突破しました。リスティング(物件)を貸し出すホストには最大1億円の補償もついており、ホストは安心して物件を貸し出すことができます。
Expedia(エクスペディア)グループ
Expedia(エクスペディア)はBooking.comで知られるプライスライングループと並んでオンライン旅行予約プラットフォームとして世界最大手の企業ですが、そのエクスペディアは2015年12月、Airbnbに次ぐ民泊仲介サイト大手のHomeAwayの買収を完了し、傘下に入れました。
HomeAway自体はAirbnbよりも早い2005年に米国テキサス州で設立されたサービスで、VRBOやVacationrentals.com、Travelmobなど過去20以上の民泊仲介サイトの買収を重ねることで成長してきた企業のため、エクスペディアはHomeAwayを傘下に収めたことで一気に数多くのブランドを手にしています。
今後、エクスペディアは同社が保有する航空券からホテルまでの予約プラットフォームの集客力を活用し、単一のプラットフォーム上で民泊物件も検索、予約できるようにすることで民泊物件への送客力を高めていく戦略を掲げていますので、そうしたバックボーンがないAirbnbにとっては大きな脅威となる可能性もあります。
Home Away(ホームアウェイ)
HomeAway(ホームアウェイ)は2005年にアメリカのテキサス州オースティンで始まったバケーションレンタルサイトです。設立以降、急速にユーザー数を拡大し、アメリカやイギリス、フランス、ドイツ、ブラジル、オーストラリア、シンガポールなど各地のバケーションレンタルサービスの買収を進めました。その後、2015年12月、オンライン旅行予約世界最大手のExpedia Group(エクスペディアグループ)の仲間入りをしました。2016年に日本支社を設立し、日本語版サイトをスタートしています。
2019年6月時点で世界190ヶ国、200万件以上の物件が掲載されており、毎月4,000万人以上の旅行者にリーチできる世界最大級のバケーションレンタルサイトであるホームアウェイは、ホテルの半分のコストでおよそ2倍の宿泊スペースを楽しめる宿泊物件を多数掲載しています。バケーションレンタルを利用した旅行者の満足度は高く、82%がまた利用したいと回答しています。
ホストは無料で物件を掲載でき、宿泊予約が入った場合のみ手数料が発生します。支払いは手数料を差し引き、旅行者の宿泊後24時間以内に行われます。
VRBO
Vrbo(ヴァーボ)はアメリカ発のバケーション・レンタルサービスです。1996年創業と他社よりもスタートが早く、アメリカ最大手のサービスに成長していました。2006年11月、当時約65,000件のリスティングを抱えていたVRBOはHomeAwayに1億6000万米ドルで買収され、HomeAwayファミリーの一員となりました。以降はHomeAwayのサービスの一部として運営されていましたが、2020年にHomeAwayからVrbo(ヴァーボ)にリブランディングして運営されています。
VacationRentals.com
VacationRentals.com(バケーション・レンタル・ドットコム)はアメリカ発のバケーション・レンタルサービスです。2007年5月、当時約30,000件のリスティングを抱えていた同サービスは、同じバケーション・レンタル大手のHomeAwayによって買収され、HomeAwayファミリーの一員となりました。
HomeAwayの創業者兼CEOのBrian Sharples氏が、VacationRentals.comドメインの購入に3,500万ドルを支払ったと公表したことで「世界で最も高いドメイン代」として話題になりました。以降はHomeAwayのサービスの一部として運営されており、2015年12月時点で日本の物件は約1,100件掲載されています。
VacationRentals.comへのリスティング掲載についてはHomeAwayに一本化されています。50の提携サイトを通じて毎月7700万人以上の旅行客にリーチできる点が魅力です。
Trip Advisor(トリップアドバイザー)グループ
Trip Advisor(トリップアドバイザー)は旅行領域の口コミサイトとして世界最大手の企業で、一度はExpedia(エクスペディア)グループとなりましたが、2011年には独立しています。Trip Advisorは複数の民泊仲介サイトを買収することで、同領域のサービス展開を拡大してきました。アジア圏に強いFlipkey(フリップキー)、欧州圏に強いHoliday Lettings(ホリデーレッティングス)、スペイン語対応のみのNiumba(ニュンバ)など、各地域に強身を持つ民泊仲介サイトを買収しているのが特徴です。
Flipkey(フリップキー)
Flipkey(フリップキー)は、2007年にアメリカのボストンで始まったバケーションレンタルサービスです。2008年8月に宿泊口コミサイト世界最大手のTripAdvisor(トリップ・アドバイザー)に買収されました。以降はTripAdvisorが提供するサービスブランドの一つとなっています。梟マークで同じみのTripAdvisorの口コミが見れるようになっています。
2017年5月時点で全世界で11,000都市、300,000件の物件が掲載されており、日本の物件は約2100件程度となっています。Airbnbと比較すると物件数では劣りますが、予約カレンダーが6か月分表示されており、少し先の旅行日程でも見やすい点、アメニティの検索機能が充実している点などが特徴です。
TripAdvisorが保有する25のウェブサイトを通じて、月間3億4000万人のユーザー数に対して自社の物件をアピールできる点が魅力です。また、5物件以上を運用する場合、自動リスティング、専門家からのアドバイス・技術サポート、写真掲載数無制限など様々な特典・機能を利用できるようになります。
Holiday Lettings(ホリデーレッティングス)
Holiday Lettings(ホリデー・レッティングス)は、1999年にイギリスのロンドンで始まったバケーションレンタルサービスで、イギリス最大手のサービスに成長しましたが、2010年6月に宿泊口コミサイト最大手のTripAdvisor(トリップ・アドバイザー)に買収されました。以降はアメリカボストン発のFlipkeyやスペイン発のNiumbaと同様、TripAdvisorが提供するサービスブランドの一つとなっています。梟マークでおなじみのTripAdvisorの口コミが見れるようになっています。
2015年12月時点で、世界150ヶ国以上で43万件以上の物件が掲載されており、うち日本の物件数は160件程度となっています。TripAdovisorが保有する25のウェブサイトを通じて、月間3億4000万人のユーザー数に対して自社の物件をアピールできる点が魅力です。また、5物件以上を運用する場合、自動リスティング、専門家からのアドバイス・技術サポート、写真掲載数無制限など様々な特典・機能を利用できるようになります。
Niumba(ニュンバ)
Niumbaは、2005年にスペインのインターネット企業、Grupo Intercomが開始したサービスで、その後スペイン最大のバケーションレンタルサービスへと成長し、2013年に宿泊口コミサイト最大手のTripAdvisor(トリップ・アドバイザー)に買収されました。以降はアメリカボストン発のFlipkeyや英国発のHoliday Lettingsと同様、TripAdvisorが提供するサービスブランドの一つとなっています。梟マークで同じみのTripAdvisorの口コミが見れるようになっています。TripAdvisorの完全子会社ではありますが、現在もスペインのマドリッドに本拠を置いて独立ブランドとして運営されています。
サイトはスペイン語のみで、2015年12月時点で世界150ヶ国以上、約32万件の物件が掲載されており、うち日本の物件は約150件程度となっています。TripAdovisorが保有する25のウェブサイトを通じて、月間3億4000万人のユーザー数に対して自社の物件をアピールできる点が魅力です。また、5物件以上を運用する場合、自動リスティング、専門家からのアドバイス・技術サポート、写真掲載数無制限など様々な特典・機能を利用できるようになります。
House Trip(ハウストリップ)
HouseTrip(ハウストリップ)はスイスに本拠を置くバケーション・レンタルサービスで、2010年に、当時ホスピタリティ専攻の名門校、 スイスのエコール・オテリエール・デ・ローザンヌ校に在籍していた Arnaud Bertrand氏とJunjun Chen氏によって設立されました。現在ではポルトガル、イギリスにもオフィスを展開しています。
HouseTripはヨーロッパ最大級のバケーション・レンタルサービスに成長しており、2015年12月時点で全世界20,000都市以上で30万件以上の物件を掲載しています。日本の物件は47件と少なくなっています。他社とは異なりホスト手数料が0%となっている点も魅力です。2016年4月、旅行口コミサイト世界最大手のTripAdvisor(トリップ・アドバイザー)に買収されました。
Priceline Group(プライスライングループ)系
プライスライングループはBooking.comやKAYAK(カヤック)、Agoda(アゴダ)などのブランドを複数抱える、オンライン旅行予約分野の世界最大手企業グループです。Booking.comやAgodaは民泊に特化したサイトではありませんが、予約可能な宿泊施設形態の中に民泊物件を含めています。圧倒的な集客力を持つこれらのサイトを活用して集客できるという点で、民泊ホストにとっても見逃せないサイトです。Agodaはシンガポール発の企業で、特にアジア圏の集客に強みを持っています。
Agoda(アゴダ)
Agoda(アゴダ)は、シンガポールに本拠を置き、アジア市場を中心に急成長中のオンライン宿泊予約サイトです。全世界で200万件以上、日本国内では約10万件を販売し、39言語でサービスを提供しています。2005年に設立し、2007年からは世界最大手の旅行会社プライスライン・グループ(現ブッキング・ホールディングス)の傘下に入っています。日本においてもAgoda International Japan(アゴダインターナショナルジャパン)として2010年に日本オフィス設立、2015年4月に大阪オフィス設立、2015年7月に福岡オフィス設立、2016年4月に札幌オフィス、沖縄オフィス設立と拡大しています。
AccorHotels(アコーホテルズ)グループ
AccorHotels(アコーホテルズ)グループは「グランドメルキュール」や「ノボテル」「メルキュール」「イビス」などエコノミーからラグジュアリーまで幅広いクラスのホテルブランドを展開しているフランスのホテルグループ大手ですが、同社が2016年4月、イギリス発の民泊仲介サイト、OneFineStay(ワンファインステイ)を買収しました。
OneFineStay(ワンファインステイ)
OneFineStay(ワンファインステイ)はロンドン、ニューヨーク、パリ、ロサンゼルス、ローマの5都市の物件のみを扱っているイギリス発のバケーション・レンタルサービスです。取り扱っている物件は立地も良い高級物件が多く、富裕層が長期休暇時に自宅を貸し出しているケースが多いようです。2012年時点で、ロンドンとニューヨークで1,000以上のホストが物件を掲載しており、130ヶ国のユーザーが利用しているとのことです。2016年4月、フランスのホテルグループ大手のアコーホテルズに180億円で買収されました。
その他
上記の他にも独立系の民泊仲介サイトは数多く存在しています。特に欧州では複数のサイトが併存しており、今後も大手の民泊仲介サイトやオンライン旅行プラットフォーマー、ホテルなどに買収される可能性は十分にあると言えます。
Roomorama(ルーモラマ):現在シンガポール本社
Roomorama(ルーモラマ)は2009年に設立されたバケーションレンタルサービスで、創業者の Jia En Teo氏とFederico Folcia氏がニューヨークにあった自宅のアパートを既存のサイトを活用して貸し出したのが始まりです。シンガポールに本拠を置き、アメリカ、フランス、タイ、フィリピンへと事業拡大してきましたが、2017年7月下旬にサービスの停止を同社サイトで明らかにしました。
Wimdu(ウィムドゥ):ドイツ発
Wimduはドイツ発のバケーションレンタルサービスで、2011年の創業以降サービスは急拡大し、現在ではベルリン本社とリスボン支社で250名以上のスタッフを抱える大手バケーション・レンタルサービスの一角に成長しました。世界100ヶ国以上に30万件の掲載物件、10万人のユーザー数を抱えています。
現在はベンチャー・キャピタルグループのロケット・インターネット社のグループ企業となっています。Wimduによると、Wimduのホストは平均毎月900ユーロ(約12万円)を稼いでいるとのことです。2015年12月調査時点で日本の掲載物件数は約280程度とあまり多くないため、ヨーロッパからのゲストを獲得したいホストの方にとっては穴場のおすすめサービスです。
9flats(ナインフラッツ):ドイツ発
9flatsはドイツのハンブルグに本拠地を置くバケーションレンタルサービスです。2012年にYelp!に買収されて話題を呼んだ口コミサイトQypeの創業者、Stephan Uhrenbacher氏が2010年にカナダのトロントで創業、2011年にローンチしました。その後サービスは急拡大を遂げ、ヨーロッパ最大級のサービスの一つに成長しました。
2015年12月時点で約22万件の物件が掲載されており、日本の物件数はうち70件と少なくなっています。9Flatsは支払い方法としてビットコインを受け付けています。ホストの手数料が15%と高い点がネックですが、Instant Booking(即時予約)を有効にする場合は手数料が12%となり、現状多くの物件が即時予約可能となっています。
StopSleepGo(ストップスリープゴー):イギリス発
StopSleepGoはイギリス・ロンドンに本拠を置くバケーションレンタルサイトです。15年にわたりバケーションレンタルサービスを運用してきた経験から2012年9月にニック・ハーグリーヴズによって設立されました。
2016年2月現在はアジア圏に進出しておりアジアにもオフィスを構え、世界90か国でサービス展開し、5万人以上のホストが登録し、5万件以上の物件を掲載する大規模なサービスとなっています。
Interhome(インターホーム):スイス発
Interhomeはスイス・チューリッヒに本拠を置くバケーションレンタルサイトです。1965年に設立され、1999年にオンラインサービスを開始し、現在まで約50年にわたりバケーションレンタルだけでなく、不動産賃貸関連のサービスを展開し、スイス、オーストリア、エジプト、フランス、ドイツ、イタリア、スペインに事務所窓口があります。
2016年現在、24時間問い合わせに対応し、リスティング数は全世界34か国で約33,000件、ホストは約42,000人が登録し、今までの利用者数は5,000,000人、年間の宿泊者数は約600,000人という規模で運用されています。
BedyCasa(ベディカーサ):フランス発
BedyCasaはフランス・モンペリエに本拠を置くバケーションレンタルサイトです。Magali Boisseau氏によって、2007年4月に設立されました。旅行者、学生、下宿人、ホームステイを目的とした人々と物件のオーナーとのコミュニティの中で文化交流が促進されることを理想とし、人々が世界中を旅して現地の家庭に滞在できればという想いから、始めは個人のブログサービスから始まり、口コミによって広がっていきました。
2016年現在は世界185か国8542都市に、ホスト数は約50,000人、リスティング件数は約66,000件、利用者数は330,000人、宿泊者数は250,000人という規模で展開しています。日本でも2016年2月現在、16件の物件が登録されています。物件掲載料は無料、ホスト手数料率は15%というシンプルな料金形態が特徴です。
Cities reference(シティーズ・リファレンス):イタリア発
Cities Referenceはイタリア・ローマに本拠を置くバケーションレンタルサイトです。”Trust, No Hassle, No Frills”を理念として1996年に設立され、2006年にオンラインサービスを開始し、現在まで約20年間不動産賃貸業を行ってきた実績があります。
ヨーロッパとアメリカを中心に世界27か国500都市でリスティング数11,092件(2016年2月調べ)という規模でサービスを展開しています。
WaytoStay(ウェイトゥステイ):スペイン発
WaytoStayはスペインのバルセロナに本拠を置くバケーションレンタルサイトです。2004年にオランダ人のロナルドとマイケルがスペインのバルセロナ南部にあるバルセロネータ地区の1軒のアパートからスタートし、現在もバルセロナにオフィスを構え、ヨーロッパの人気都市18都市(2016年2月調査時点)にバケーションレンタルサービスを提供しています。
WaytoStayは「快適で、特徴があり、ロケーションのよいアパートのみ」を厳選してサイトに掲載しており、6カ国語対応、年中無休、100%セキュリティ保護されたオンライン決済と安心して利用できるサービスが整っており、毎年34.000件以上の予約実績があります。高いサービス満足度を維持するために全てのカスタマーレビューを読み、レビューの削除や修正をすることもなく、サービスに反映させるというスタイルで運営されています。
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