民泊は「届出制」で解禁へ。管理者・仲介事業者は「登録制」。厚労省検討会

厚生労働省および観光庁は5月13日、「民泊サービス」のあり方に関する検討会を開催した。第10回目となる今回は、民泊をめぐる新たな制度枠組みとして民泊の事業者・仲介事業者ともに「届出」または「登録」のみで民泊の営業を可能にするという方向性が示された。

今回提示された制度案では、民泊サービスが住宅の提供者本人が管理する「家主居住型」と管理者に管理を委託する「家主不在型」に区別され、それぞれのタイプに応じた制度の骨子がより具体的となった。

「家主居住型」は届出のみで営業可能に

「家主居住型」は「住宅提供者が、住宅内に居住しながら、当該住宅の一部を利用者に貸し出すもの」と定義され、家主居住型の場合は行政の許可を受ける必要はなく、インターネットを活用した手続きを基本とする届出のみで民泊サービスの提供ができるようになる。住宅提供者には宿泊者名簿の管理や最低限の衛生管理、「民泊」施設であることが分かる標識の掲示などを求め、届出制とすることで匿名性を排除する。また、現在同時並行で検討中の営業日数や宿泊人数制限などの一定の要件に違反した場合や、家主居住型と偽って家主不在型の民泊を提供した場合の業務停止命令処分、罰則なども検討するとしている。

「家主不在型」は管理者を登録制に

一方、出張や長期休暇による住宅提供者の不在期間中の住宅の貸出しなども含む「家主不在型」の場合、家主居住型と比較して騒音やゴミ出し等による近隣トラブルや施設悪用等の危険性が高まることを想定し、住宅の提供者は管理者に管理を委託することを求める。管理者は登録制とし、居住型の場合と同様に宿泊者名簿の管理や衛生管理、標識掲示に加え、苦情受付窓口の設置などが求められる。また、住宅の提供者自らが管理者として登録をし、自宅で家主不在型の民泊を提供することも可能になる。

「仲介事業者」は旅行業登録の必要なし

上記に加え、今回の検討会では仲介事業者に対する規制の方向性についても示された。民泊の仲介事業者は家主居住型・不在型に関わらず登録制とし、取引条件の説明義務や新たな枠組みに基づく民泊であることをサイト上に表示する義務を課すことを検討するという。また、無届出による民泊や一定の要件に違反した民泊についてはサイトからの削除命令を求めるほか、不適切であることを知りながらサイトに掲載している場合は、業務停止命令や登録取消、罰則なども検討するとしている。

今後の焦点は営業日数・宿泊人数制限など「一定の要件」

今回の検討会により、民泊は許可制ではなく届出制、管理者は登録制とすることで全面解禁になる方向性が明確に示された形だ。しかし、まだ民泊関連事業者にとってはこれで「全面解禁」と手放しには喜べない論点が残されている。それが、民泊サービスの提供に関わる「一定の要件」だ。検討会では「営業日数」の制限について、イギリスの「年90泊以内」、アムステルダムの「年60泊以内」といった事例なども交えながら、不動産業界と旅館・ホテル業界関係者との間で議論が交わされた。

公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会の川口氏は、家主不在型の賃貸マンションを民泊利用した場合の収支状況の実例を見せながら、年間の営業日数制限がある場合、経営的観点からビジネスとしての参入は不可能だとし、営業日数制限の長期化を求めた。一方、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の北原氏は、ビジネスとしての採算性を求めるのであれば、簡易宿所の営業許可を取得すべきだと主張した。

営業日数制限や宿泊日数制限の要件については今後も検討が進められるが、最終的に既存の旅館・ホテルと民泊とがどのように線引きされるのか、引き続き業界関係者の思惑も絡んだ激しい攻防が続きそうだ。

【参照ページ】第10 回「民泊サービス」のあり方に関する検討会

(Livhub ニュース編集部)