住宅の空き部屋やマンションの一室を利用して旅行者を宿泊させる「民泊」のルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月9日、参院本会議で可決、成立した。これにより、民泊ホストは都道府県に届出をすることで年間180日を上限として合法的に民泊運用をすることが可能になった。新法は来春にも施行される見込みだ。
これまで日本において民泊を合法的に行うためには、イベント民泊や農家民泊など一部の特例を除けば国家戦略特区における特区民泊の仕組みを活用するか、旅館業法の簡易宿所免許をとるしか方法がなく、実情としては日本にある民泊施設の大半が無許可にて運営されている状況だった。新法が施行されれば、民泊ホストに届出が求められるだけではなく、民泊ホストに代わって物件を管理する住宅宿泊管理業者にも国土交通省への登録が義務づけられ、Airbnbなどの住宅宿泊仲介業者も官公庁への登録が義務づけられる。無許可民泊が横行していた日本の民泊市場も、今回の法整備により大きく状況が改善されることが見込まれる。
なお、年間180日の営業日数上限については各自治体が条例により引き下げることが可能で、具体的な基準はまだ未定なものの、今後政令や省令などで定める予定だ。民泊推進派の自治体と慎重派の自治体でも大きく判断が分かれることになりそうだ。
今回の新法成立を受けて、Airbnb Japanの代表を務める田邉氏は「日本のニーズを反映したシンプルでわかりやすく現実的な本法律が成立したことを大変嬉しく思います。これは、日本のホストコミュニティ、そしてこれからホストになりたいと考えている方々にとって素晴らしいニュースであると考えます。」と語る。Airbnbによると、2016年だけでAirbnbのホストコミュニティによる日本経済への押し上げ効果は約9200億円に上り、過去1年間で500万人がAirbnbを通じて日本を訪れ、各都道府県の地域経済の活性化に貢献したという。
同氏は今後の方針について「新法に基づき、住宅宿泊事業が日本全国に広まると、中長期的にも多岐にわたる便益を生み出すきっかけになると考えています。地域社会に配慮し、持続可能な形で、ホームシェアを含む住宅宿泊事業が日本全国で普及するよう、引き続き日本政府、地方自治体や関係者の皆様と協働させていただく」としている。
また、バケーションレンタル大手のHomeAwayも「『住宅事業法』が成立した事を歓迎し、世界最大級のバケーションレンタルサイトとして、民泊市場の健全な発展と政府の掲げる観光立国としての目標を支えるため、インバウンド支援に全面的に貢献していく」と表明している。同社は今年の4月に広域連携DMOの「せとうちDMO」の事業支援を担う瀬戸内ブランドコーポレーションと業務提携し、瀬戸内地域のインバウンド活性化に向けた取り組みを発表していたが、今後も自治体との協業を通じて経済効果の創出や観光振興に貢献していく構えだ。
民泊ホスト・事業者にとって最大の関心事は、民泊新法施行後の180日という年間営業日数制限が、民泊運用にどのように影響するかという点だ。既に新法施行後の民泊市場を見越して「マンスリーマンション+民泊」「サービスアパートメント+民泊」といった新たなスキームも登場しているほか、もともと季節による稼働率変動が大きく、180日制限の影響が想定的に大きくないリゾートエリアにおける民泊施設への注目なども集まっている。
さらに、新法成立を受けて「民泊市場=合法」という認識が広がれば、今後はこれまで民泊に対して慎重な姿勢を見せていた大手の旅行・不動産関連企業が新たに参入することも想定され、市場はますます盛り上がっていきそうだ。民泊事業者向けの融資や保険サービスなど、金融関連のサービスの充実にも期待したい。
具体的な施行のタイミングはまだ明らかになっていないものの、来年春までの一年弱という期間でそれぞれの企業がどのような仕掛けをしていくのか、引き続き市場の動向から目が離せない。
【参照サイト】民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?
【Airbnb登録ページ】Airbnbへのホスト登録・物件掲載
(Livhub ニュース編集部)
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