Hello,World. 日本のなかで世界と出会う。札幌と世界が化学反応を起こし続けるゲストハウス「waya」

札幌中心部から少し外れた、閑静な住宅街にひっそりと佇む、国内外から旅人が集まる札幌の有名ゲストハウス「waya」。築60年のアパートを改装した建物には、南インドにゆかりのある旅人が運営する本格的な雰囲気のカレー屋が隣接している。

1階がバーで2階が宿泊エリア。手作り感のある内装が印象的だ。バーには大きな流木のようなものが飾られていて、これは世界中を歩いて巡った旅人が「杖」として使っていたものだそう。国内外から旅人が集まるwayaには、訪れた人たちが旅の土産を置いていく。

写真提供:札幌ゲストハウスwaya

今回取材を引き受けてくれたのは、wayaスタッフの前田 わかなさん。彼女がこの場所に出会ったのは、高校生のときだ。高校時代、wayaのオーナーが前田さんの学校へ講演に来たのがきっかけで、この場所に興味を持った。

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前田 わかなさん/写真提供:札幌ゲストハウスwaya

講演会をきっかけにwayaを訪れた前田さんは、すぐにwayaの空間に魅了された。

「ここにいる旅人たちは、自分の知らないことを教えてくれて、新しい風を吹かせてくれる」

そんな風に感じたのだという。

もともと旅に特段の興味はなかったが、ここに来ると彼らがサイトに掲げる「Hello,World」の言葉の通り、世界中から訪れる旅人たちから面白い話を聞ける。国内外のまだ見たことのない景色や、会ったことがないような人たちに出会い話すなかで、札幌の町の外に広がる世界にわくわくして、気づけばいつの間にかwayaに通うようになっていた。そして気づけばインターンシップやヘルパー経験を経て、2023年からは、正式なスタッフとして本格的にwayaで働くことになっていた。

旅と日常、世界と札幌が化学反応を起こす「カオスな空間」

旅好きな筆者は、今までいろいろなゲストハウスに泊まってきた。景色の良いゲストハウスに、内装がおしゃれなゲストハウス、世界中から旅人が集まるゲストハウス。コンセプトはどこも違ったが、どのゲストハウスにも共通していたのが「ゲストハウスは『旅人同士』が交流する場所」という認識だ。なので、wayaには旅人だけでなく、地元民も集まっていると聞いてとても興味深く感じた。客層としては10~20代が多めだが、50代の地元の人々も訪れ、観光客の若者と地元のおじさんで飲みに行くこともあるそう。

写真提供:札幌ゲストハウスwaya

「wayaのコンセプトは“新しい冒険の始まり”。このコンセプトの先に、旅人と地元民の交流が存在しているんです。wayaを訪れれば、地元民は多種多様な文化や価値観を持つ旅人と出会える。そして旅人は、ガイドブックには載っていないようなローカルな情報を地元民から仕入れられる。旅人と地元民が交流することで、両者にメリットがある。そういった理由で、うちでは旅人と地元民の交流を大切にしています」

前田さん自身もwayaで働いていて、日本人の旅人と海外の旅人、札幌の地元民などが、お互いの言語がわからなくても一緒にボードゲームで遊んだり、みんなで地図を広げて次の旅先を相談したりしている姿を見て「言葉が通じなくても人と人はつながれるんだな」と実感したそう。

旅人に快適に過ごしてもらうだけでなく、旅人も地元民も思い出を作れる。世界と地元が同じ空間に同居することで生み出されるカオスが、wayaが多くの人から愛され続ける理由なのかもしれない。

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写真提供:札幌ゲストハウスwaya

コロナ禍でも守り続けた「集い」の場づくり

旅人の間で名の知れたゲストハウスとして長年運営してきたwayaだが、2020年に始まったコロナウイルス感染拡大の影響で営業をしばらくの間休止。2023年4月に営業を再開するまでは、宿としてではなく、シェアハウス兼シェアキッチンとして宿泊施設を活用していた。

「コロナ禍で宿として営業できなかった間は、飲食店を目指す人を応援するためのシェアキッチン、不特定多数ではなく知り合い同士で交流を深められるシェアハウスとして営業していました。宿の営業はできませんでしたが、今までとは違う形で交流の場を守りたかった。この期間、旅人とは出会えませんでしたが、形を変えて交流の場を残し続けていたんです」

一時的に宿を休むことになったwayaだが、今では人々の交流の場としての宿を再開し、イベントも続々と開催している。

国籍や言語が違っても、ともに笑いあえる「Boardgame Night(ボードゲーム ナイト)」。世界中を見て回った経験を持つ旅人と、外からは見えにくい札幌の良さを広める地元民が出会う「WAYA CROSS PARTY(ワヤ クロスパーティー)」。多様なバックグラウンドを持つ人が集まる、カオスなwayaが戻りつつある。

ここに来れば、新たな世界に出会える。コロナ禍を経て新たに生まれ変わったゲストハウスwayaの進化が今後も楽しみだ。


ゲストハウスwaya
公式サイト:https://www.waya-gh.com/
住所:札幌市豊平区豊平2条4丁目1-43
電話番号:070-6607-0762
評判・口コミ:じゃらん

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佐藤 ひより

フリーライター。数時間に1本しか電車が走らない田舎に生まれたこともあり、その反動で都会や海外など外の世界に興味を持つ。大学時代にインドネシア語を学び、それからバリの虜になり今ではよく通うように。海外や日本各地を旅しながらその土地の人の価値観に触れること、美しい自然を見て心が震える体験をすることが好きです。