多様な地域との関わり方と働き方の新しいカタチ

ライター: 萬里小路 忠昭

Thinking Design Lab 代表|思考設計士
物事の背景・構造と人の思考・行動を探究することが好き。神奈川県藤沢市と茨城県大洗町の海街で二拠点生活とまちづくりを実践中。「見えないものを見えるようにする」をコンセプトに、地域で活動する人たちや多様な生き方や働き方をする人たちの思いや考えをお伝えしていきます。

この2年間で自身の生き方や働き方を見つめ直した人はたくさんいるんだと思う。

自分もその1人で、転機となった出来事の一つとして2020年1月に会社員を辞めて独立した。それまで毎日、オフィスで働くのが当たり前の環境だったのが、自宅やカフェなどで働く環境になった。さらに、それまでやっていた広告やマーケティングの仕事だけでなく、組織開発や能力開発、コミュニティづくりの仕事もするようになり、1つの仕事から複数の仕事をする働き方になった。

また、人とのコミュニケーションはオンラインが中心になってリアルで話す機会が自然と減った。ふと、自身と同じように心境や環境の変化があった人がいるのではないかと思って、それまでに仕事で出会った30人くらいの人たちと1対1でオンライン対話をして話を聞いてみた。

普段、仕事で出会った人の思いや価値観、いま考えていることなど、人の本質的な部分に触れる機会ってなかった気がして、とても新鮮だった。コミュニケーションの中心がオンラインになったことで、コミュニケーションの新しいカタチを発見した感じがした。

自粛期間中に行った、いろんな方の思考や活動を深ぼるオンライン対話(PlayTalk

住まいも地方に移して、ゆったりと海沿いを散歩するようになって、時間の流れが少しだけゆっくりになった気がする。そんな感じで仕事や生活、人とのコミュニケーション、住まいと色々と変化があった2年間。自分で変えたところと変えざるを得ないところの両方の環境変化と共に、自分は「時間と場所にとらわれない」生き方と働き方という価値観になっていた。

その感覚がより強くなった体験が、自分の場合は「地域」にあった気がしている。それまでオフィスや自宅で仕事をする、年に1回海外旅行に行く、その繰り返しだったから国内の地域に行くことはほとんどなかった。たまたま奥さんが地域に関わる仕事をし始めたことや地域に関わる人たちと繋がっていたこともあって、徐々に自分も「地域」に触れる機会が増えていった。現地に視察やフィールドワークをしに行ったり、ワーケーションをしに行ったり、海が目の前に見えるコワーキングスペースで仕事をしてみたり、そこのコミュニティ活動に参加してみたり。

宮城県気仙沼市大島で奥さんと海と自然を見ながらのワーケーションの模様

そこでの体験はとても不思議で、いつもならどこかに行く時って「その場所に行くことが目的でそこでどう楽しむか」だったのが、「その地域にいる人に会うことが目的でそこでどう関わるか」に自然と変わっていった。

人口1500人を切る町で自然を体感できるアクティビティやツーリズムを企画運営している方だったり、20年近く勤めた大手食品メーカーを辞めて、人口1万人の町にIターン移住してカレー屋を始めた方だったり、東京の大手電機メーカーに勤めながら、地方で農業やカフェなど地域に根付いた活動をしている方だったり。「なぜそこで活動し始めたの?」「どんな生き方、働き方なの?」「どんな思いで今活動しているの?」とその人に聞きたいことがどんどんと出てくる。

それまではどこか地方に行っても現地にいる人と会話することがなかったし、その地域の歴史やそこでどんな人がどんな活動をしているのかを知ろうという意識すらなかった。なんとなく「地方に旅行に行くってそういうものでしょ!」というバイアスを持っていたんだと思う。ただ、違う視点や見方があるんだと気づいて、目に見える部分だけでなく、「人」の内面だったり思いみたいな目に見えない部分に徐々にアンテナが立っていった。

神奈川県茅ヶ崎市にあるコワーキング&ライブラリースペース「Cの辺り」 でライブラリーオーナー活動をしている

その意識の変化があってから、今度は自分の仕事にも変化があった。全国各地の地域の自治体、企業、働き手を取材する仕事や地方自治体の地域活性化に係る事業を推進する仕事など、地域との関わりが増えていった。さらに、これも人とのご縁から生まれて、今年5月から茨城県大洗町で関係人口の創出やまちづくりの仕事もすることになった。

この一連の変化を自分なりに整理してみると、地域との関わり方が「場所」から「人」に、地域に行く理由が「旅行する」から「ワークする/コミュニケーションする/クリエーションする」の3つに、地域に行った後の感覚が「リフレッシュ」から「学び」と「刺激」に、働き方が「本業」から「複業」に、さらに働くスタイルが「決まった時間と場所」から「いつでもどこでも」に、いろんな要素で変化が起きていたのだと思う。

海を中心とした観光資源が豊富な茨城県大洗町でまちづくりや地域活性化の仕事をスタート

一方で、客観的にこの変化をみた時に、自分と同じようにこの期間に、地域との関わり方や自身の働き方に変化があった人はたくさんいるはず。これまで当たり前と思われていた「地域に行く=旅行や観光をする」、「働く=本業のみで特定の時間と場所で働く」といったことがより多様化している。しかも、ただ多様化しているだけでなく、一人ひとりがより「自分ごと化」しているのだと思う。広い視野でいろんなジャンルの情報を収集・学習し、いろんな経験や視点を持った人たちと対話をし、そこでインプットしたことを自分なりに考えて整理し、自分なりの表現でアウトプットをし、自身の感性や特性を活かして行動する。

そうは言っても、自身の生き方や働き方を見つめ直したけど、なかなか行動できないというのも現実問題としてある。自分は石橋を叩きまくって渡る、場合によっては叩きまくったのに渡らないなんてことも今でもよくある。でも、その度に思うのは結局、自分から動いたり、自分から関わったりと「自分ごと化」できていないんだなと気づかされる。

だから、どんなに思ってもどんなに考えても行動しない時は「自分ごと化」できていないからだと思えば、そうなるための自分のトリガーみたいなものをまず見つけないといけない。自分の場合はおそらく「地域」が一つトリガーになっていて、地域との関わり方が場所から人になって、そこでの対話の中で新しい学びや刺激をもらい、今の自分にできることは何かと内省し、まずは小さくても成果が出なくていいからアクションしてみようと。

大洗町で地域課題解決プログラムに参加し、笑顔をつくる遊びイベントを開催

地域との関わり方を変えてみると働き方が変わるかもしれないし、働き方を変えてみると地域との関わり方が変わるかもしれない。順番はどっちでもよくて、この2つが重なった時に「自分ごと化」が起こり、多様な地域との関わり方や働き方のカタチが生まれるのではないか。そのカタチがより一人ひとりのウェルビーイング(幸福度)につながるのでないかというのが自分の実感として強くある。ここをもっと実践して探究して見える化するのが今一番関心があること。

今後このLivhubでの執筆では、地域で複業をする、ワーケーションをする、地域活性化の活動をする、多拠点生活をするなど、地域で活動をする人たちや時間と場所にとらわれない多様な働き方を実践している人たちを取材し、その思いや考えをお伝えしていきたいと思う。

【参照サイト】Thinking Design Lab

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Tadaaki Madenokoji

物事の背景・構造と人の思考・行動を探究することが好き。神奈川県藤沢市と茨城県大洗町の海街で二拠点生活とまちづくりを実践中。「見えないものを見えるようにする」をコンセプトに、地域で活動する人たちや多様な生き方や働き方をする人たちの思いや考えをお伝えしていきます。