日本人の誇り “祭” の裏側はごみだらけ?大阪・天神祭「ごみゼロ大作戦」をレポート

天神祭アイキャッチ

日本の夏を彩る風物詩のひとつ、祭り。特に関西では日本三大祭りと呼ばれるうちの2つ、祇園祭と天神祭が京都・大阪で開催されている。

祭りによる人々の一体感や、わき上がるような気分の高揚感はなにものにも代えがたい。ただ、その盛り上がりの裏で、毎年大量に出されるごみやマナーの悪さなどが問題視されているのも事実だ。

そうした問題を解決するべく、祇園祭と天神祭でごみを少しでも減らそうとする取り組み、「ごみゼロ大作戦」が実施されているのをご存じだろうか。市民自らが考え行動し、大阪の誇りとなるきれいな天神祭を目指して「天神祭ごみゼロ大作戦実行委員会」を2017年に設立。ごみを減らすための仕組みづくり、実践を率先して行っている。また、祇園祭においては2014年より取り組みがスタートしている。

今回は2023年7月に行われた、天神祭の「ごみゼロ大作戦」の様子を現地よりリポートする。

日本三大祭りのひとつ、天神祭とごみの現状

ごみゼロ大作戦

会場の周りにもごみ箱が設置されている

日本各地の天満宮で開催される天神祭り、なかでも大阪天満宮の神事として催される天神祭は、日本三大祭のひとつ。現在では、奉納花火のイメージが強い天神祭だが、1,000年以上の歴史を持つ日本を代表する祭りだ。

露天商の出店は日本でも最大数とされ、来場者の人数も例年100万人以上で、4年ぶりの通常開催となる今年は130万人の来場が見込まれた。ただ屋台数は例年より3~400店舗少ない1,000店舗。それでも、混雑と賑わいが予想されていた。

天神祭の期間中に発生する「ごみ」は2日間で60トン。これはデータとして確認ができるもののみのため、実際にはこの数字をさらに相当上回ることが推測される。また、その量の多さだけではなく道や広場に広がる散乱ごみの状況も深刻でニュースでもたびたび取り上げられている。

回収されたごみについては適切な分別はされず、ほとんどが焼却処分せざるを得ない状況だ。ただこれまでも、それぞれの関係者や市民・団体・企業によって、ごみ箱やその他の資材の用意・提供、そして祭りで出たごみなどの廃棄物を早期に撤去し原状回復する業務などが行われている。しかしこうした努力にも限界があり、これらのごみ問題は、天神祭りの存続問題へと発展しつつある。

ごみゼロ大作戦とは

年々深刻化する、天神祭のごみ問題を改善するためにと設けられた「天神祭ごみゼロ大作戦実行委員会」。天神祭を誇りに思う気持ちを共有することで、その文化的な意義を来場者に再認識してもらうこと。さらにごみを減らし、祭りにかかわる全ての人が気持ちよく楽しめることを目指している。

エコステーションの設置
祭り当日には、エコステーションを設置。人が常駐し参拝客に向けて資源の分別の呼びかけ、案内を行う。参加者自身が分別活動を行うことで、ごみを捨てることへの意識が生まれるきっかけづくりにも。また分別を呼びかけることによって、ごみ箱の存在が周知され散乱ごみの増加を防ぐことも期待している。

リユース食器の導入
回収し洗浄して繰り返し使用するリユース食器を導入し、使った後に回収する仕組みを採用している。
ごみゼロ大作戦

画像出典:天神祭ごみゼロ大作戦実行委員会

①洗浄所で洗浄されたリユース食器がイベント会場に納品
②売店では飲食物をリユース食器に入れて来場者に販売する
③来場者は飲食後リユース食器を売店もしくは回収所に返却
④回収したリユース食器は洗浄所に運び、洗浄・保管される


7年前、2016年に同祭りで出たごみは4割が飲料容器。そこで翌年に分別回収や再利用できるコップ・食器を屋台に配布したところ、回収したごみの65%を再利用できた。今年は再利用できる食器を16,000個配布。屋台への交渉はボランティアが一店舗ずつ行った。

回収された皿などの食器は吹田市リサイクルセンターでの洗浄を経て、別の祭りにて再利用される。

天神祭り本宮、当日の様子

ごみゼロ大作戦

ごみゼロ大作戦のボランティアの皆さん

規制のない天神祭りは4年ぶりとなることもあり、その場に集う誰もが子どもみたいなワクワクした表情を浮かべていた。

夕方4時頃、京阪天満橋駅から出て天満橋を渡り切り、川沿いの道を歩くべく右に折れたところにエコステーションを発見!ボランティアの人たちが、これから多忙を極めることを予想し手順などを確認している様子だった。撮影をお願いすると、快く笑顔を向けてくれた。思わずこちらも笑顔になり「頑張ってくださいね」と声をかける。

ごみゼロ大作戦

たくさんの子供たちも参加

ごみゼロ大作戦

分別の声かけを行うボランティアさんたち

分別ボックスに入れに行くと、「楽しんで!」と声をかけてもらい人と人の温かい交流ができることも嬉しい。

リサイクル食器はこのようにいくつかの飲食店で提供されており、使用後にリサイクルボックスへ戻すかどうかはお客に託されていた。実際の回収率が気になる(天神祭ごみゼロ大作戦実行委員会のリポートが発表され次第、報告予定)。

ごみゼロ大作戦

ボランティアたちがごみを拾って歩く姿も

天神祭りの名物、天神祭奉納花火も4年ぶりに復活。夜空を彩る、3,000発の花火が打ち上げられた。ただ夜になるにつれ賑わいは増し、その時間帯を訪れた友人によると地面にごみが溢れていく様も見られたそうだ。こちらの結果も併せて、委員会のレポートを待ちたいと思う。

今年の天神祭のごみ事情が実際の数値的にどういった結果になったとしても、「ごみゼロ大作戦」という取り組み自体は素晴らしく、実際に容器を回収ボックスに持ってくる人々も多く現地で目にしたのは事実。ボランティアの人たちの声かけやごみ拾いの様子を見て、ごみ問題に対する意識が向いた人もたくさんいたに違いない。それだけでも実施した価値はあるだろう。

ただ来場人数が増えるほどごみも増加し、いくらリサイクル食器を用意してもごみ箱を用意しても追いついていない現状があるように感じる。例えば、マイ容器を持参すると割引をつけるなど、目に見えるメリットをつけてでもごみを出さない方向へ持っていけるといいのかもしれない。いずれにせよ、まずはこの取り組みがより多くの人に知られることが、その一歩につながると期待している。

【参照サイト】天神祭ごみゼロ大作戦実行委員会
【参照サイト】天神祭ごみゼロ大作戦実行委員会Instagram
【参照サイト】祇園祭ごみゼロ大作戦
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mia

旅するように暮らす自然派ライター|バックパックに暮らしの全てを詰め込み世界一周。4年に渡る旅の後、オーストラリアに移住し約7年暮らす。移動の多い人生で、気付けばゆるめのミニマリストになっていました。ライターとして旅行誌や情報誌、WEBマガジンで執筆。経験をもとに、旅をちょっぴりエコにするヒントをお届けします。