これからにつながる輝く“なにか”をもらった。バリ島ウブドのエシカルホテル「Mana Earthly Paradise」滞在記

「泊まるだけで社会貢献ができる次世代のエシカルホテル」があると知り、どうしても実際に泊まってみたくなった。

Livhubで以前も「バリ島ウブドに旅立とう。心で ”良さ” を感じるエシカルホテル「Mana Earthly Paradise」」の取材記事で取り上げた「Mana Earthly Paradise(マナ・アースリー・パラダイス)」。ウブドの郊外にありながら日本人の夫婦が運営するとてもユニークなホテルだ。

前回取り上げた記事のなかに、「頭で考えすぎずに感じて欲しい」という創業者からのメッセージがあった。ライターという職業柄、つい情報を収集しようと効率的なアクションを「考えて」しまうのだけれど、この場所の力を借り、今回の滞在ではいつも以上に「感じて」過ごすことを意識しようと思いながら現地へ向かった。

ウブドより車で15分のパラダイス

mana循環型の宿泊施設と聞き、さぞ遠方にあるのではと思っていたら、ウブドの市街地より車で15分ほどの場所にある農村地域、サヤン村にあると知り驚いた。実際にタクシーを利用すると15分と少しで到着した。

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Manaと業務提携を行う、Earth Companyについての説明書き

改めて、今回滞在するのは、Earth Company(アースカンパニー)の共同創設者である濱川明日香さん、知宏さん夫婦がはじめた「Mana Earthly Paradise(マナ・アースリー・パラダイス、以下Mana)」。アースカンパニーは日本、インドネシアで活動する2つの独立した法人の総称で、日本においては一般社団法人 Earth Companyとして、アジア太平洋地域のチェンジメーカー支援事業と、企業や学校を対象とした研修事業を行っている。活動方針として、ネイティブ・アメリカンの格言「この地球は、先祖から継承したのではなく、私たちの子供たち、子孫から、借りているのである」を共有し活動している。

借りているのだから愛でよう、丁寧に扱おう、傷つけないでいよう、捨てないでいよう、循環させよう。滞在していると、Manaにもしっかりとその言葉が息づいているのがわかる。Manaのなかにいると、自分までそんな優しいパラダイスの一部になれているような気がしてくる。

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アップサイクル商品や地域の作り手の顔が見えるアイテムが揃い、量り売りも可能な「Mana Market」

インドネシアと日本が出合う美味しく巡るランチ

manaManaには、施設内にレストランがある。そこで筆者は昼食後に濱川明日香さんにインタビューをする機会を得た。はやる気持ちを抑え、まずはゆっくりとランチをいただくことに。

目の前のガーデンから届く新鮮野菜を味わう

mana命を育むレストラン「Mana Kitchen」では、施設内にあるパーマカルチャーガーデンで、遺伝子組み換えされていない在来種のタネから自然農法で育てた食材をはじめ、その他オーガニック食材、発酵食材を使い調理された料理をいただくことができる。

永続可能な循環型の農業(パーマカルチャー)で栽培した野菜を、目の前のレストランでいただく。食べ切ることが前提だけれど、どうしても残す場合や調理途中で出た廃棄物はコンポスト化され、その肥料で食材を育てるという。ここにいると、そうした命の循環のなかにある「食べる」という行為にも、強い意味があるように思えてくる。

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メニューを読むだけでも楽しい

初めてならやはり「Lunch Set(ランチセット)」を試したい。サラダ、酵素玄米に自分で選べるスープ、前菜2種、メイン料理がワンプレートに盛られて提供される。

訪れた日はスープがマナストローネ(ベジブロスを使ったオリジナルのミネストローネ)、甘酒ガスパチョ、かぼちゃの冷製スープから選べ、甘酒ガスパチョをチョイス。前菜はショーケースで確認してからみそフムス、テンペファラフェルに決定!メインはチキン、ラム、フィッシュなど肉類から海鮮までバラエティに富んだ選択肢。ベジタリアンメニューを確認し、勧めてもらった「ジャックフルーツのルンダン」にしよう。ルンダンはインドネシア料理で、通常牛肉をココナッツミルクと香辛料で長時間煮込んで作られるが、こちらは、煮込むと歯応えがお肉のようになるジャックフルーツを使用している。

日本人として懐かしい食材も、この地らしいアレンジと手法で調理し、提供される。インドネシアのスパイスと日本の伝統的な食が出合うところ、というMana Kitchenのテーマが響いている。

「Lunch Set」98,000IDR(約900円)

甘酒のガスパチョ、トマトのみずみずしさで口内をスッキリさせてから、丁寧に作られた料理をひとつずついただく贅沢さ。目の前のファームで採れたサラダはカラフルで歯ごたえもいい。ビーツはゼリーのような弾力だし、レタスはザクザクしている。
メインのレンダンは心地いいピリ辛の味つけに、ジャックフルーツがごろごろと!味、歯ごたえ、食べ応えどれをとっても満足度が高い。

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一番人気の「Charcoal Lemonade」35,oooIDR(約320円)

湿気の高いウブドの気候では、体はスッキリしたものを欲する。最も人気と書かれた、チャコールレモネードはその黒さに目が奪われるが、優しい甘さの懐かしいレモネード。チャコールがデトックスに効くそう。ごくごくと喉を潤す。

Manaを経営する濱川明日香さんとのお話

manaいよいよ、アースカンパニー共同創設者のひとり濱川明日香さん(以下、明日香さん)にお話を聞くことができた。食事中、和気あいあいとミーティングをしている席があると思っていたら、なんとその中心にいる人物こそ明日香さんだったのだ。あまりに自然に、空間に溶け込むようにニコニコとそこに座っていたので、思わずこちらまで笑顔になり挨拶を交わす。

こんがりと日焼けしている彼女、どうやら最近サーフィンに夢中で海辺の町チャングーへ通っているらしい。「海のなかにいることもバランスを取るのに欠かせない!その瞬間、すべての存在と波の流れを感じ取って、そこにアラインしてはじめて波に乗れる。あらがわず委ねる、そして一体となることで、私たちが自然の一部であることを体感することができるんです」と臨場感たっぷりに教えてくれた。

プライベートの話にも花が咲きつつ、興味深い話を色々と聞くことができたので、特に印象に残ったものを紹介したい。

「意味のある植物しかない」

Manaに到着した多くの人が、まず感動するのが、施設を囲む自然豊かなガーデンだろう。オープン当初の2019年から日々手をかけ続け、太陽の力、雨の恵みといったウブドの気候に支えられながらこのガーデンが育まれてきた。
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この場所は野菜や果物、花、ハーブなどを本来あるべき姿で育てているパーマカルチャーガーデン。「目的や意味のないものはないんです。食事やドリンクに使うものはもちろん、テーブルに飾る花も、すべてここから摘んでくる」。ガーデンのあり方として、なんと理想的なのだろう。

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訪れた日にテーブルに飾られていた植物をガーデンに発見!

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イキイキしているのが目に見えるよう!

「このシステムに私はもっと入っていたい」

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Manaではこのガーデン以外にも各所でエシカルな取り組みが行われている。
例えばManaのヴィラは、建設場所の土、土のう袋、有刺鉄線しか使わないアースバッグ工法と呼ばれる自然な建築方法で建てられており、自然素材のみで構成されている。

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宿泊施設の上にはソーラーパネルが

施設内で使う水は、雨水を貯水しタンクで濾過したうえで循環させて利用。トイレを含む滞在中に出る廃水も濾過し、施設内の植物の栽培などに無駄なく活用することで循環させている。また、施設の天井にあるソーラーパネルで施設内の照明をまかなっているなど、Manaのエシカルな活動は書き出すときりがないほどだ。

「でも、」と明日香さんが言う。「『私がそこにいない』と感じることもある」。

「レストランから廃棄物がある場合にはキッチンスタッフがガーデンに持って行き、ガーデンスタッフがコンポストにするのだけれど、その一連の流れに私が実際に手を汚して関わっているわけではないんです。本当はそうした部分に関わりたいなといつも思っていて…」

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奥に見えるのがコンポスト。食品の廃棄はこちらへ運ばれる

「とはいえ、この循環システムを創り出した張本人なのに」と筆者が言うと、「環境問題などをよく知らない人でも、気づかないうちに循環型のシステムに参加して欲しくて作った仕組みだけれど、そうすると循環されていることを知らない人、そして土に根付いた暮らしの大切さを知らないままの人もいっぱい生まれるな、と気づいて」

「でも実際は人々の暮らしがどんどん土から離れていったからこそ、こういう破壊が深刻になっているわけで…。私たちは水や空気、太陽など自然がないと生きていけないのに、それを意識していないから空気や水を汚すことに抵抗が低く、無関心な人が生まれる。みんなが関わらないとこの状況は変わらない。だから私もその一人として、システムを作るだけでなく土に触れていたいし、関わっていたい」

強い意志のこもった表情で、明日香さんはそう話してくれた。

「自分とのつながりを意識する」

「環境課題に関心を持つための、最初の一歩として何ができるでしょう」と質問すると、すぐに「つながりを意識すること」と返ってきた。

「例えば今、目の前にあるコーヒーについても、考えられることが山ほどあるんです。この豆はどこから来たのだろう、エチオピア?現地ではどんな風に栽培されているのか、輸送されるとき二酸化炭素をたくさん出したのかな、などなどキリがない(笑)」

「自分」と目の前の人、物、場所とのつながりを意識すること、そしてそうしたつながりに対しての自分の感覚を大切にする。それだと確かに、環境問題や社会問題も自分ごととして捉えやすくなる。

自分が心地いい選択をするためにも、その裏にはなるべく健やかな営みがあって欲しいと願う。日々の選択をひとつずつ意識的に変えていくこと、私たちができる第一歩だろう。

「サステナブル、だけじゃない魅力を発信したい」

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「実は、Manaを訪れる理由が循環型とかサステナブルだからでなくてよくて。もっと五感で本能的に、美味しいとか楽しいとか心地いいからという理由で選んで欲しいんです」

「料理にこだわった理由もそこにあり、常にアップデートを続けてます。というのもまだ、自然派食は物足りない、というイメージが根強いじゃないですか。だからこそ料理には力を入れてます」

お話を聞きながら、先ほど堪能したルンダンのコク深い味わいを思い出す。

「スタッフたちがここを好きでいてくれること」

「やっていてよかったと思うときは」と質問をすると、明日香さんからはManaで働くスタッフの方々への想いが溢れた。

「全スタッフの40%がManaがあるサヤン村出身のスタッフで、未経験の子ばかりでトレーニングもすごい挑戦だったんです。パンデミックも一緒に乗り越え、今では本当にかけがえのない存在になりました」

「やむを得ず辞めた人たちもいるけれど、新しい職場でも循環型のシステムなどManaの活動を誇らしげに話していることを知りました。ゲストが喜んでくれることはもちろん嬉しいけれど、一番ここで時間を共に過ごしているスタッフがまずManaを好きでいてくれることが大切で嬉しいことだなと感じます」

滞在時にManaのスタッフが誇らしげに、楽しんで働いていた理由が分かった気がした。

最後に今後については「サヤン村自体をエコビレッジにしたい。地域の農家はオーガニックではないところも多いんです。本当はManaで栽培できるもの以外は彼らから買って、サヤン村のなかで経済を循環したいけれど、現状は難しくて」と明日香さん。きっとこれからも、社会をよりよくしていくためのManaの挑戦は続いていくのだろうなと話を聞きながら感じた。

室内にいても呼吸が深まる…開放感のあるドミトリー

Mana明日香さんとの有意義な話を楽しんだあと、今夜の宿泊先、ドミトリーへと移動した。
なんとこの日はたまたまドミトリーに私ひとり。贅沢!とはしゃいでしまった後「でも誰かがいてくれてもいいな」と思うほどの広さだった。天井が高い分、さらに開放感が増す。

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今夜の私のベッド

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部屋の前に広がる緑

また建物が自然由来の素材だけでできているからか、屋根と壁はあるものの自然のなかにいるような気分になる。しかも2つあるバスルームは露天で、夜にはシャワーを浴びながら星空を眺めることができた。世界各国のドミトリーに数えきれないほど泊まったけれど、こんなドミトリーは初めてだ。

Mana

夜はまた雰囲気が違う。蚊帳で眠る体験も珍しい

Manaだから叶った、思わぬ出会い

実は夜、たまたまManaに滞在されていた、日本のオーガニックコットン業界のパイオニアPRISTINE(プリスティン)の創設者である渡邊智惠子さんご一行とアースカンパニーの方たちの夕食会に同席させていただいた。

夕食会の様子

写真提供:Earth Company

渡邊さんは、現在は廃棄される服の繊維から紙を作るプロジェクト「CCF」の代表をされている。「まさかこんなところで」と思うも「そうかManaとはそういう場所なのだ」と感慨深かった。食卓を囲んだすべての人に取材をしたいほど、濃厚な会となった。そんな機会に感謝しかない。

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元衣類だった(!)、紙のサンプルを見せてもらう

Manaで過ごした一泊二日、書き尽くせないほどたくさんの宝物を受け取った。場所、人との出会い、経験すること…。頭ではわかっていても、やはり実際の経験を通して見えることはたくさんあると改めて感じた。

Manaにいるあいだは五感で感じ、その後に続く「なにか」をもらって帰って来た。ただ楽しいだけではない、心に投げかけられたさまざまなトピックを、これから自分のなかで吸収しまたアウトプットしていくのだろう。

ここまで読み進めていただけたなら、きっとManaを訪れたくなったのでは?次の旅の目的地にぜひ検討して欲しい。

Mana Earthly Paradise
公式HP: https://www.manaubud.com/
住所: JL. Raya Sayan, Banjar Mas, Gang Emas, Ubud – Bali.
電話番号: +62 361 9087788
予約: Mana Earthly Paradiseの予約ページから

【参照サイト】Earth Company
【参照サイト】Circular Cotton Factory
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mia

旅するように暮らす自然派ライター|バックパックに暮らしの全てを詰め込み世界一周。4年に渡る旅の後、オーストラリアに移住し約7年暮らす。移動の多い人生で、気付けばゆるめのミニマリストになっていました。ライターとして旅行誌や情報誌、WEBマガジンで執筆。経験をもとに、旅をちょっぴりエコにするヒントをお届けします。