ある夕暮れ、インドネシアバリ島にある小さな村アメッドのメインストリートを歩いていると、大きなサインを掲げ何かの告知をしているグループに遭遇。ふと気になって見てみると、「Small Eco Festival(スモール・エコ・フェスティバル)」というタイトルが目に飛び込んできた。
「まだまだ小さな観光スポットであるアメッドで、エコフェステイバル!」と驚きながら眺めていると、イベントの開催初日はなんと今日!
「もう始まったイベントの告知を、今してるの?」とその場にいたボランティアに質問すると、「実は、そうなんだ」と笑っていた。そのゆるい感じがいかにも、バリ島の田舎という感じがした。
スモール・エコ・フェスティバルの主催者
「Small Eco Festival」は3日間に渡って開催され、初日はワークショップやビーチと水中のごみ拾い、2日目はエコファッションショーとワークショップ、最終日は表彰式含むスピーチなどの閉会式が行われる。
イベント主催は、非営利団体「Peduli Alam」と「Blue School」の共同で、アメッド村の自然派カフェやダイビングショップ、エコ活動を行うその他団体など12団体がスポンサーとなっていた。「Small」と謳っているが、この規模の村にしては大きいイベントと言えそうだ。
共同主催者である「Peduli Alam」は、豊かで美しいバリ島の自然がプラスチックの大量使用により苦しめられている現状を改善すべく2009年に設立されたフランス人によるNGOの環境保護協会で、拠点はバリ島のアメッドとフランスにある。プラスチックが自然や健康に与える影響について、シンプルで簡単に手に入る解決策を提供しようと活動している。
具体的にはバリの地方住民のために廃棄物収集システムを構築し、分別センターへの廃棄物収集を組織することなどがある。2013年からは、回収したプラスチックの一部をリサイクルし、バッグやアクセサリーに生まれ変わらせている。
もう一つの共同主催者「Blue School」は、サステナブルなダイビングを提案する「Calypso Diving Bali(カリプソダイビングバリ)」が抱いていた長期に渡る環境問題への課題意識から誕生した、5~15歳までの地元の子供たちのための補完的な教育ツール。海に対する強い意識と尊敬の念を育むことをゴールに活動している。
ごみドレスを纏った子どもたちが堂々と歩く、エコファッションショー
イベントのことを知った翌日、イベント2日目に催された「エコファッションショー」を見に会場に向かった。
海に面した開放的な野外ステージ。観客はほとんどいない。
歓迎され促されるように観客席に座り、先生と思われる女性たちと、お手製のドレスを着た子どもたちがステージを歩いたりポーズを取ったりしている様子をしばらく眺めていた。
一応確認してみると、まだリハーサルとのこと。ポスターに書かれた開始時間を過ぎてもまだリハーサルをしている、こういうゆるさもバリらしい。本番の開催時間を聞き、改めて戻ることにした。
立派な半野外ステージ
時間になり再度訪れると、観客席にたくさんの人が集まっていてホッとする。ステージの真ん前には審査員席が用意されており、ファッションショーはどうやらコンテスト形式のようだ。
司会の挨拶でファッションショーがはじまった。子どもたちは紹介されると、ひとりずつカーテンの向こうから姿を現し、観客がよく見えるようにステージ上をウォーキングする。
先ほどリハーサルを見てしまっていたので、どのようなファッションを身に着けているかは分かっていたものの、音楽とともに先ほど練習した動きを子供たちが堂々とステージで披露する姿を見ながら、保護者か先生になった気分で思わず拍手を送った。
ごみとは思えない華やかなドレス
さっきまでリハーサルしていたとは思えない堂々たる振る舞い
彼女たちのドレス、原料はなんと目の前にあるアメッドのビーチより拾ってきた「ごみ」。漁業の盛んな村であることからネット、そしてさまざまな種類のプラスチックが原料として使われている。
自らが拾ってきたごみで思い思いに制作したドレスをまとう子どもたち。シックな黒色ネットのロングドレスから、パンキッシュなものまでスタイルも多種多様。頭にお菓子のパッケージで可愛く作られたリボンがちょこんと乗っている子もいた。子どもたちは誰もが楽しそうで、そして少し誇らし気だった。
海に浮かんでいるごみ、浜に流れ着くごみを見ていると悲しい気持ちになることがある。もちろんごみを捨てないことが一番望ましいのだが、ごみがごみとして景観を汚すだけでなく、このようにワクワクするようなドレスに生まれ変わったこと、なにより子どもたちが創造性を生かしてごみを自分好みの「なにか」に生まれ変わらせたことは、とても意義のあることのように感じた。
それぞれが素晴らしく、悩む審査員たち
ショーの後は、子どもたちのパフォーマンスが繰り広げられ、歌やダンスが延々と続く。アメッドでは毎夜毎夜、どこかからカラオケの歌声が聴こえてくるのだが、どうやらこの地域の人たちは子供から大人まで、歌うことが好きみたいだ。
バリ島、伝統のダンスを見せてくれた2人
ごみが創造力と誇りを子どもたちに
コンテスト形式で行われたエコファッションショーの結果発表はイベント最終日に行われた。スタッフに確認していた時間にステージを訪れるとすでに式は始まっていて、アメッドの村長がスピーチをしていた。「Small Eco Festival」という控えめな名前だが、村長が参加するほどのイベントだったとは。
話はほとんどがインドネシア語なので、全く分からないのだが、とにかくショーの結果を見届けたくて、客席の後ろの方で発表を待った。敷地内には、スポンサーであるアメッドにあるエコストアも併設するカフェ「Good Staff」がブースを出していて、途中で覗きに行ったりもした。アップサイクルグッズや、スポンサーのロゴ入りTシャツなどが並んでいた。
カフェのスタッフも今日は出張
スポンサーのひとつ、スイスを拠点とし東南アジア中心に活動する「TRASH HERO」のグッズも
いよいよ先日行われたファッションショーの表彰がはじまった。トップ3名が呼ばれてステージへ。
後ろ姿まで手をかけられた、アップサイクルドレス
誰もがユニークなアップサイクルファッションを身に着け、パフォーマンスも堂々としたもの。このなかで順位をつけるのは、審査員にとってさぞ大変だったことだろう。
登場と同時に拍手が上がった画像一番左の子が優勝、漁師の使うネットを使いシックに仕上げた画像真ん中の子が2位、個性が際立っていた3位と続く
「こうして自分たちで創造し表現したものを、誰かに見てもらえるだけで子どもたちの意欲につながる」とイベントのボランティアの一人は言っていた。上位3名の表情はどこか誇らしげにみえた。
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イベントへの参加後、同じくアメッド村にてフリーダイビングのコースを受けたのだが、雨季というのもあってか見たのは海に漂う無数のプラスチックごみだった。受講者みんなで、目に見えるごみをとっては陸に引き上げた。でも、キリがない、それが現実だった。
小さなこの村で行われたエコフェスティバルも、ある意味では無数に漂うプラスチックごみを拾うことのように、全体の問題からすれば小さな事なのかもしれない。それでもこの小さな催しが、関わったすべての人に「楽しかった経験」と共にその後環境問題への取り組みを継続して進めるきっかけになり、少しでもいい方向に向かう火種となることを私は願ってやまない。
私にできることは何なのだろう。参加者としてイベントに居合わせ、アメッドの海に癒された身として、私自身も思い返し行動しつづけようと、小さく、誓った。
バリ島の最高峰、アグン山とアメッドのビーチ
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mia
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