YoutubeやSNSなどで国外の情報を目にしては、またいつか旅立てる日を楽しみにしていたパンデミックの真っ只中。あるオーストラリア人がYoutubeで魅力的に紹介していた、インドネシア・バリ島のチャングー地区が目に止まった。
チャングーは、プラントベースカフェやレストラン、洗練されたアパレルショップが立ち並ぶ、バリ島の最先端という雰囲気のビーチタウンで、夕陽が美しいことでも知られている。世界を暮らすように旅する筆者は、「これぞまさに、私が思い描いていた町なのではないか!」と、ワクワクしながらクリスマスから年越しまでを過ごす地にと、嬉々として滞在先を抑えた。
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2023年12月の一週目、念願かなってバリ島に到着。しかし、空港からチャングーにある宿までの道中でこの町の洗礼を受けることとなる…。
ングラ・ライ国際空港から滞在先までは約14キロ。スムーズに車が進めば、約30分で着くはずだったのが、渋滞にはまってしまい結局1時間弱の時間をかけてようやく到着。訪れた年末はハイシーズンかつ、コロナ禍が明けて小さなバリ島に世界中から旅行者が押し寄せていることも聞いていたため、想定内ではあったのだけれど序盤から痺れた…。
タクシーのドライバーに話を聞いてみると、「これはまだ序の口だね。これからクリスマスにかけてもっと人が増えるよ」とのこと。
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チャングーに滞在していた一ヶ月の間、オーバーツーリズムの影響を痛いほど感じた。
現地のキャパシティを大幅に超えた量の人々が集中して現地を押し寄せている影響で、人が人として健全な暮らしが営める線を越えているように感じられるほどだった。しかしバリ島は観光産業で成り立っている場所。ローカルの暮らしに影響が出ていようと、増え続ける主に西洋からの観光客を受け入れ外貨を取り入れるため、外からの来島者向けの内容・値段設定・インテリアのカフェやレストラン、アパレルショップなど、店が次から次に新しくつくられている。いち観光客として私もそうしたお店にお世話にはなるけれど、そればかりだとバリにいることを忘れてしまう…。
また西洋人向けのお店が多数できる一方で、歩道や道路の整備は進んでおらず、安心して歩くのが難しく、筆者は少しの移動でも配車アプリのバイクタクシーを利用した。観光客のなかにはバイクをレンタルして自ら運転している人たちも多く、普段バイクに乗らない彼らはよく事故を起こしており、巻き込まれないかとヒヤヒするのだった。
「昔はこの辺もずっとライスフィールド(田園)だったんだけどね」
移動時、ローカルのドライバーに話を聞くと笑いながらそう答えた。「観光客が増えることについてどう思うか」という質問には、どのドライバーもおおむね好意的で「それは嬉しいよ」とのことだった。
人々が素朴に暮らしていた田園風景が豊かな村に、似たような建物を作り続ける。それにより経済的な豊かさがローカルの住民に還元されていることを願いつつ、その土地に昔からあった暮らしや文化が「観光」によって上塗りされたり、混雑により暮らしが圧迫されている状況にどこか違和感を感じずにはいられなかった。
対向車線のバイクとは袖振り合う距離
しかし、だからといってチャングーの町に魅力がないという話では決してない。
今回筆者が一ヶ月の滞在先に選んだ、通りから少し入った場所にあるホームステイ先は、ユートピアのようだった。
美しい中庭を挟んでバリ人の家族とゲストの建物が対峙して別々に建てられていて、適度な距離感でコミュニケーションが取れる心地よい造り。ホストファミリーもとても感じが良く、今まで色々な土地を旅してきたが、そのなかでも一番のお気に入りの一軒になった。
外がどれほど騒々しくても、部屋には明るく柔らかい光が降り注ぎ、そのなかを蝶々が飛び交う。チャングーにいた一か月、私はこの“いるだけで癒されていく”ホームステイ先に、多く救われた。
近所のカフェスタッフの笑顔は、素晴らしいことがはじまりそうな予感がするほどピュアな輝きに満ちていたし、毎日毎日、海に沈む太陽が染め上げる夕暮れの空は見飽きないダイナミックな美しさだった…。
夕陽をみるためだけに、多くの人がビーチへ集まる
チャングーの素敵な部分を見たからこそさらに、「町全体がローカルも観光客も含め、もう少し快適に過ごせる場所になればなぁ」と思わずにはいられなかった。
実際に行って、見て、体験して得た自分の答えというものは強い。今回のチャングー滞在でも、オーバーツーリズムの現状とそれがもたらすものを見たのと同時に、自分が旅や暮らしに求めるものに気づくきっかけにもなった。
これからも、私の旅はつづく。
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