水産業を支えるロックな「空港メシ」を食べに仙台まで

空港はこれから旅に出る者の背中を押し、そして訪れた者を両手で受け入れる場所。

いそいそと行き交う人々を眺めていると、どんな想いを胸に空港に降り立ったのだろうと想像を膨らませてしまう。

まだ見ぬ国や地域へと旅立つ人は、おそらく旅先への期待感や緊張感が溢れているだろうし、自分のホームへと帰る、または無事にホームへと戻ってきた人は、安堵感でいっぱいかもしれない。

言わば、空港を訪れている人々は普段よりも気持ちが高まっている状態。だからこそ空港でいただく食事、つまり「空港メシ」も旅人たちにとって記憶に残るスペシャルな存在なのではないかと思う。

今回は、筆者の住む宮城県の仙台国際空港における、サステナブルでロックな「空港メシ」を紹介する。

牡蠣と海鮮丼の店「ふぃっしゃーまん亭」

仙台国際空港は1957年に開港後、1986年には東北初の国際空港となった。その後、2016年7月に民営化されたことで空港としての基本的な役割に加え、施設をもっと楽しめる地域に根ざした魅力がグッと増した。

特に魅力的なのが飲食店。日本国内に限らず世界中の人々に「東北の食材」を味わってもらおうと、個性豊かなレストランとカフェ全9店舗が並ぶ(※2024年3月時点)。

なかでも2021年4月に同空港2階フロアにオープンした、牡蠣と海鮮丼の店「ふぃっしゃーまん亭」は特にユニークで、ただただ旅人たちが胃袋や気持ちを満たすだけでなく、食事をすることで日本国内含め世界の「水産業のビジネス」にポジティブな変化を与える仕組みになっている。

女川産 銀ザケの王様 銀王丼/引用元: ふぃっしゃーまん亭

知る選ぶ食べることで水産業を支えていく

ふぃっしゃーまん亭では、メニューで使用する魚に持続可能な「サステナブル・シーフード」を取り入れている。

日本ではまだ馴染みが薄い存在かもしれないが、サステナブル・シーフードは、水産資源や環境そして社会に配慮し育った、または持続可能な漁業で獲られた魚介類のことを意味する。

サステナブル・シーフードと通常の魚介類との見分け方は、国際認証である「MSC」または「ASC」の証があるかどうかで判別可能だ。青色の「MSC認証」のマークがついているものは、水産資源と環境に配慮した漁業で獲られた「天然」の魚介。一方エメラルドグリーン色の「ASC認証」のついたものは、環境と社会に配慮し育てられた「養殖」の魚介という違いがある。

引用元:Marine Stewardship Council

海や川を泳ぐ魚や貝の量には「限り」がある。魚や貝は、卵を生み繁殖するので、その自然の流れや速度を超えて漁獲しすぎてしまうと、魚の量はどんどん減っていってしまい、いつかは食卓に魚が並ぶことはなくなる可能性もあるのだ。

スーパーマーケットでも、意識してみてみるとパッケージにこのマークがつくものが少しずつ出てきている。私たち消費者が「サステナブル・シーフード」を知り、選んでいくことで、海を守り、未来の食卓に魚を並ばせ続けることにもつながってくる。

ふぃっしゃーまん亭のメニュー表には、各料理名の横にMSCまたはASCのマークが併せて記載されている。「海鮮丼」という消費者にとって身近な形で料理を提供することで、サステナブル・シーフードの魅力発信を試みているという。

まるでロックバンドグループな「かっこいい」団体が運営

「ふぃっしゃーまん亭」を運営しているのは、宮城県石巻市を拠点に活動している漁師・魚屋団体の「フィッシャーマン・ジャパン」。

/引用元:フィッシャーマン・ジャパン

同団体が掲げる指針は、衰退気味な水産業を「かっこよくて」「稼げて」「革新的な」3Kな産業へと変化させ、次世代へと繋ぎ担い手を増やしていくこと。

2024年までに三陸地域に多様な能力をもつ新しい職種「新フィッシャーマン」を1000人増やすというビジョンを掲げ、新しい働き方の提案や業種を超えた関わりによって水産業に変革を起こすべく活動している。

具体的には飲食店の運営以外にも、アパレルブランドとコラボしたかっこいい漁師のウェアを製作したり、「TRITON JOB SPOT」と題して特定の船・漁村での定着を前提とせず、好きなときに、好きな海で漁師となって働くことができる働き方を提案したりと活動は多岐にわたる。

これまで水産業や農業といった一次産業に対するイメージは「かっこいい」からは遠いところにあったかもしれない。しかし、私たちはそうした産業で働く人々のおかげで食べ物を食べることができている。フィッシャーマン・ジャパンをはじめ、もっともっと「かっこいい」イメージが食の担い手に付随していくといい。

新進気鋭の「ふぃっしゃーまん亭」。

旅も好きだし、魚も好きだという方(きっと多くの人が当てはまるはず!)は、とっておきの「空港メシ」を食べに仙台国際空港までお越しください。

牡蠣と海鮮丼 ふぃっしゃーまん亭
住所:宮城県名取市下増田字南原無番地 仙台国際空港内 2階中央フロア
HP:https://www.sendai-airport.co.jp/guide/fishermantei.html

【参照サイト】Marine Stewardship Council(サステナブル・シーフードについて)
【参照サイト】フィッシャーマン・ジャパン
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Molly Chiba

日本と英国を拠点に活動中のフリーランスライター。東北地方の田園に囲まれ育ちました。東南アジア地域の国際協力活動などを転々としていく中で、言語習得のため英国に短期滞在。それをきっかけにすっかり英国の虜に。日英のSDGsに関連する執筆のほかに、国内の地域文化ニュースやサッカーコラムを書いています。