タイ・チェンマイ在住者おすすめ、サステナブルスポット【建築・場編】

Chiang mai

旅は感情を豊かにする。驚き、畏敬の念、喜び、切なさ、そうした感情をあわせもつ自分への気づき。旅や、旅から得られる気づきを、こよなく愛しているからこそ、「人類がこの先も、旅ができる世の中であればいいな」と心から思う。筆者にとってのサステナブルとは、そんな未来への願いだったりする。

いまを共に歩むあらゆる生命と、これからの未来も豊かに繁栄しつづけたい。さまざまな奇跡が重なって出会えた景色、人々、古代から受け継がれてきた伝統文化が、このさき何百年、何千年と末永く豊かにつづいてほしい。

そうした願う未来に少しでも接続しながら、自分の人生もそこに暮らす人々の生活や環境も豊かにする、サステナブルな旅。本記事では、タイ・チェンマイ在住の筆者が、現地でサステナブルな「建築・場」を2つ紹介する。

100種の植物と50種の鳥類が生きる、元たばこ加工工場「Kaomai Estate 1955」
estate-detail20

画像引用:Kaomai Estate 1955

チェンマイの郊外にひっそり佇む、元たばこ加工工場「Kaomai Estate 1955」。50年ほど前、タイ北部ではタバコ産業が栄えていたそうで、この建物はそのときの名残のひとつ。日本にいる建築好きの友人に勧められてから何度も訪れているのだが、まさにチェンマイのオアシスのような場所だ。

広い敷地内には丁寧に手入れされたトロピカルな自然、歴史を感じるレンガ造りの納屋、美味しいコーヒーとチーズケーキのあるお洒落なカフェ、レストランなどが並ぶ。建物を遺産として残すとともに、敷地内に生息する100種以上の植物と50種以上の鳥類や野生動物の保全も行っている。

チェンマイにあったたばこ工場のほとんどは取り壊されたそうだが、地域住民の方々からの協力もあって、「Kaomai Estate 1955」は現在でもきれいな状態で跡地として残っている。敷地内にはたばこ乾燥用の納屋を改装してつくられたリゾートホテル「Kaomai Lanna Hotel and Resort」もある。

画像引用:Kaomai Tea Barn – a tea shop with a touch of tobacco processing plant estate

また、「Kaomai Estate 1955」は、場所の特性を尊重しつつ、周囲の生態系、景観、既存の建物を結びつけていることが評価され、2018年には、ユネスコのアジア太平洋文化遺産保護賞を受賞している。現在も「Kaomai Lanna Community Project」という地域コミュニティを持続可能な形で支えていくための活動を行っており、地元で収穫されたフルーツや野菜、手工芸品、お菓子などの商品を開発・活用、敷地内のカフェやホテルでそれらを提供している。毎回訪問するたびに、採れたての新鮮フルーツを使ったチーズケーキを頂くのだが、これがまた絶品……!

毎月第2日曜日には「Rong Bom Market」というマーケットを開催しており、タイの伝統的なクラフトグッズや食、ワークショップなども楽しむことができる。ぜひチェンマイに訪れる際は、ゆっくりお立ち寄りあれ。

画像引用:Kaomai Tea Barn – a tea shop with a touch of tobacco processing plant estate

Kaomai Lanna Resort
住所:HV9H+JRG 1 หมู่ที่ 6 ถนนเชียงใหม่ – ฮอด Ban Klang, San Pa Tong District, Chiang Mai 50120
地図:Google Mapでみる
公式HP:https://www.kaomailanna.com/estate.php

先祖代々の知恵を受け継ぐ場「Kalm Village」で、タイの伝統文化とモダンの融合を見つめる
Kalm Village

Photo by S. LAU on Shutterstock

チェンマイには、至るところにインスピレーション溢れる粋なスポットがあるが、そのなかでも一際魅力的なのが、アート・クラフト・カルチャーセンター「Kalm Village」。場を通じて、先祖代々の知恵を受け継ぎ、地域コミュニティや作り手を活性化するべく運営されている。

「Kalm Village」はチェンマイ旧市街の閑静なエリアに位置し、タイの家庭料理を味わえるレストラン、図書館が併設されたカフェ、タイの建築や食、アートを展示するギャラリーなどがあり、タイの芸術、工芸、文化への理解と認識を育むきっかけとなるようなワークショップも適宜開催されている。

カルム・ビレッジ

画像引用:Kalm Village

建築とインテリアには、現代アジアと伝統的なタイのデザインが取り入れられており、建築の一部には古い家屋を解体して再利用したチーク材を使用しているという。

「Kalm Village」のKalm(カーム)とはイサーン(東北)の言葉で「村」を意味し、まるで地元の人の家に迎えられたかのような、タイの伝統的な雰囲気と旧市街の雰囲気を味わえるよう設計されているのだとか。中庭にはボードゲームや机と椅子が配置してあり、レストランの雰囲気もアットホームだ。

この場所は、初めてチェンマイを訪れたときに一目惚れしてから、筆者も足繁く通っているお気に入りスポット。朝いちばんに、カフェでコーヒーを飲んで一息ついたり、仕事をしたり、チェンマイ移住仲間たちと集まって雑談したりするのだが、時間の流れを忘れてしまう居心地の良さがとても気に入っている。敷地内をひとしきり堪能したら、屋上まで登って、チェンマイ最大の仏塔「Wat Chedi Luang(ワット・チェディ・ルアン)」とトロピカルな自然を見渡してみて。

Kalm Village
住所:14 Phra Pok Klao Rd Soi 4, Phra Sing, Mueang Chiang Mai District, Chiang Mai 50200
地図:Google Mapでみる
公式HP:https://www.kalmvillage.com/

今年の5月から筆者が住まいを置いているチェンマイでは、5月から11月頃までが雨季。
ありがたいことに、いままで自然災害とはほぼ無縁で生きてきたのだが、人生ではじめて、ここチェンマイで大洪水を経験した。インフラがぴしっと整備された日本の都市で、人生の大半を過ごしていたわたしには、かなりショッキングな出来事だった。

ザーザーと降りそそぐ大雨のなか、家のすぐ近くに流れる川は氾濫。雨と川の水が、どっと生活圏のあらゆる場所をのみこんでいく。いつもバイクで駆け巡っていた石畳の道、参拝者で朝から晩まで賑わっていた寺院、行きつけのごはん屋さん、カフェ、ムエタイジム。あらゆるなじみの場所たちが、タイミルクティー色の水にのみこまれる。

「そっちのエリアは大丈夫?」「飲みものと食べものたくさん買っといたからあとでもっていくね」
一時帰国していた日本からチェンマイ空港に到着すると、友人たちからメッセージが。なんとかタクシーをひろってアパートまで帰れたものの、大洪水への備えをする暇もなくあっという間にまちは水にのみこまれていく。

アパートから出られない状況が数日ほどつづいたが、ふと窓から外の様子をうかがうと、大雨と洪水のなかで天真爛漫にぱしゃぱしゃと水遊びする地元の子供たちの姿が。自然の力、恐るべし。子どもの好奇心、恐るべし。なんとなく憂鬱気味だった気分も少し和らぎ、まさにタイ人の「マイペンライ精神(日本でいう、なんくるないさ精神)」に心打たれた瞬間でもあった。

そして次の朝、寝ぼけまなこをこすりながらカーテンを開けてみると、気持ちのいいほど澄みきった青空がひろがっていた。数日は真っ白なもやでかすみがかっていた山々も輪郭がはっきりと見渡せる。洪水被害でまちは大ダメージだが、自然はなんだかイキイキとしている。

晴れたり、曇ったり、嵐がきたり、くるくると天気が変わっていくように、わたしたちの人生においても波はある。でも、そんな波にのみこまれながらもご機嫌に、豊かに日々を過ごしていきたいと思うこの頃だ。

【関連記事】タイ・チェンマイ在住者おすすめ、サステナブルスポット【飲む、食べる編】
【関連記事】チェンマイの隠れ宿、自然と調和した「Leafy Greens Chiangmai 」のマッシュルームハウスに泊まる
【関連記事】「悟りとは何ですか?」タイで瞑想修行をしながら考えた私の宗教観
【関連記事】すべては“自分を労わる”ことから始まる。タイで循環型社会を目指す日本人が運営する農園とビストロ「Saiun」

The following two tabs change content below.

鷹永愛美

神奈川県横浜市出身。日々旅にして、旅をすみかとするデジタルノマド。わたしはどこから来たのか、わたしは何者か、わたしはどこへ行くのか探究中のスナフキン系女子です。文章やデザインを創りながら、世界の片隅で読書、バイク、チェス、格闘技に明け暮れている今日この頃。旅暮らしの様子はこちらから。