タイ・チェンマイから、土地固有の「鍛え方」を体験する旅の提案

ムエタイ

年齢を重ねるなかで「鍛える」という営みを楽しむようになった。「鍛える」とは自己を乗りこえ、自己変容していくこと。ソフトウェアが常に改良されつづけるように、一年前の自分より少しでも前進していることを実感すると嬉しいと感じる。

筆者は現在タイ・チェンマイに住んでおり、週に3日ほどムエタイに通っている。日本に住んでいた際は、精神鍛錬の手段として京都の禅寺で修行に参加させていただいたり、空手道に打ち込んだりしていた。身体、精神を鍛える方法論は国によって異なる。それぞれの社会構造や歴史、宗教、哲学などが複雑に絡み合いながら、その国独自のメソッドが生まれているのは非常に興味深い。

日本だと、柔道、剣道、空手などの武道は単なる運動にとどまらず、「礼に始まり、礼に終わる」精神が根幹にある。精神鍛錬として、禅の瞑想や呼吸法を通じて「今この瞬間」に集中し、感情をおさえ、心の安定を得る。規律や礼儀、調和を大切にする文化が至るところでみられる。

アメリカでは、筋力トレーニングやクロスフィット、マラソンなど、身体のパフォーマンスを向上させることに重きを置き、達成感を重視するイメージ。自己改善や競争の中で鍛錬し、成長するアプローチとも見て取れる。

中国では、太極拳や気功を通じて、ゆっくりとした動作でエネルギー(気)の流れを整え、無理のない動きで長期的な健康をめざす。マインド面は道教や仏教の影響を受けた瞑想法があり、無理をしないで自然に生きる「無為自然」という考えが根付いている。

地域に根付く文化、宗教や思想があらゆる独自の鍛錬メソッドを生んできており、またそれぞれの鍛え方には、その国の人々の「豊かさ」の捉えかたが映し出されているようにも感じる。

自分自身の内面や身体に向き合い、より心地のよい鍛え方、生き方を探求する行為は、どこか旅と似ている。旅先で、その土地の鍛錬メソッドに触れることは、新たな視点の獲得や、自分に合ったアプローチの探索にもつながるかもしれない。ということで、本記事では、筆者が住むタイ・チェンマイにおける「鍛え方」を2点紹介する。

自己の限界を知り、突破していくムエタイ修行

muaythai

Photo by Jose Luis Carrascosa on Shutterstock

タイ発祥の国技である、ムエタイ(Muay Thai)。「立ち技最強」とも呼ばれ、パンチ、キック、ひじ、ひざを駆使する全身をつかった攻撃技術とタイの伝統文化が融合された格闘技。

毎日のようにチェンマイでは観戦試合が行われるのだが、実際にムエタイをはじめるとその独特の魅力にはまってしまう人も多々。(筆者が証人)

日本の厳格な武道では試合や稽古中に音楽を流すことはないが、ムエタイでは縦笛や太鼓を使った民族音楽を大音量で流しながら、リズムにあわせてムエタイに没頭する、異色、独特な魅力をもつ。また、師匠や神に敬意を表す儀式として試合前に行われる「ワイクルー(舞踊)」は、お祭りなどの行事の際にも披露されることが多く、圧巻。

しかし「立ち技最強」とよばれる通り、技のバリエーションやコンビネーションを駆使するまでの道のりはとても長く険しい。筆者も日々通うなかで、「自己の限界を知り、これを突破する」ことを実感する。まさにトレーニングを通じて、肉体のみならず精神の限界を知り、自分と向き合うのがこのムエタイ時間。

限界を超えようとする過程で自分自身を深く知り、時には挫折し、また立ち上がる。その一歩一歩が、ムエタイを通じて得られる成長の証となる。心と体のバランスが整い、どんな困難にも立ち向かえる強い自分へと成長していきたいのであれば、筆者が通っているChiang Mai JR Muay Thaiジムにぜひ。初心者はもちろん、経験者もプロのコーチから実戦的な指導を受けることが可能なので、チェンマイに立ち寄った際は、本場のトレーニングを経験してみては。

Chiang Mai JR Muay Thai
住所:Mueang Chiang Mai District, Chiang PhueakHwy Chiang Mai-Lampang RdTH Chiang MaiRX5G-J3M邮政编码: 50300
地図:Google Mapでみる
公式サイト:https://chiangmaijrmuaythai.com/

森の中に静かに佇むワット・ウモーン寺院で、自分と向き合う

Image via amazing Thailand

タイには世界的に有名な瞑想センターがいくつもあるが、なかでもチェンマイは山や森林が多く、瞑想や精神修行の拠点としても有名。伝統的な寺院が多く、都市の喧騒から離れた静かな環境が整っているため、世界中の人々が瞑想やヨガの修行のためにチェンマイを訪れる。

チェンマイ郊外の森の中に静かに佇むワット・ウモーン寺院(Wat Umong)は、700年以上の歴史を持つ。チェンマイが都となった際に建てられた寺院で、1300年代には僧侶が瞑想修行できるように洞窟(地下トンネル)が掘られ、寺院は「ウモーン」(タイ語でトンネルの意味)の寺と呼ばれるようになったそう。洞窟内の至るところに、仏像が静かに鎮座しており、自然と調和した環境がとても心地のいい。

現在は隣接する寺院を合併して修行センターとして発展し、各地から訪れる僧侶も多いのだとか。英語での指導も行っているため外国人観光客の参加者も多く、数日から数週間といった短期間でも瞑想プログラムに参加できる。チェンマイ訪問の際は、ぜひ自然に囲まれた静かな環境に心身を置いてみては。

Wat Umong Suan Buddha Dhamma
住所:135 Moo 10 Suthep Subdistrict, Chiang Mai 50200
地図:Google Mapでみる
タイ国政府観光庁内施設紹介ページ:https://www.tourismthailand.org/Attraction/wat-umong

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鷹永愛美

神奈川県横浜市出身。日々旅にして、旅をすみかとするデジタルノマド。わたしはどこから来たのか、わたしは何者か、わたしはどこへ行くのか探究中のスナフキン系女子です。文章やデザインを創りながら、世界の片隅で読書、バイク、チェス、格闘技に明け暮れている今日この頃。旅暮らしの様子はこちらから。