長い歴史を持つ建物は人の手で守られ、現代を生きる私たちに伝統が目に見えるカタチとなって残っている。その伝統を未来にもっともっと長く残すために技術の伝承を、私たちは守らねばならない。
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一般社団法人高畑トラストが奈良市の文化財建築「藤間家住宅」を拠点に、海外からの参加者を対象としたアーティストインレジデンス(滞在制作)のプログラム提供を開始した。このプログラムでは、海外の参加者が日本の伝統的な東洋絵画の修復や金継ぎの専門知識を学んで、その技術を深く理解してもらうことを目指している。
参加者は、中長期滞在を通じて日本独自の修復技術を学べるだけでなく、異文化交流を体験できる。また、観光都市のオーバーツーリズム対策としても有効なコンテンツとして期待されている。歴史建築の維持管理費への還元が行われ、長期的な建物維持へも効果的なプログラムだ。
奈良の歴史的建物の保全を目的として発足
一般社団法人高畑トラストは、2017年に無住化により倒壊の危機に瀕していた奈良市高畑町の歴史建築、藤間家(とうまけ)住宅の保全を目的として発足した。建築調査と奈良県文化資源活用補助金、朝日新聞文化財団の助成、土塀保存のためクラウドファンディングによって建築の修復を進めた。発足当初から建築の活用にも力を注ぎ、改修中の歴史建築の一般公開、アート展示、講演会など様々なイベントを実施している。
修復が進んだ近年では海外アーティスト向けにテーマ型滞在プログラム(アーティストインレジデンス)を企画し、2023年には日本の水性木版画や、奈良の杉・檜材をテーマにした滞在制作プログラムを実施している。
インバウンド観光客の体験によって文化財を保全して利活用
今回のプログラムは、文化財の保存と活用に向けた再投資を目的としている。インバウンド観光客の旺盛な知的好奇心を満たし、文化財の高付加価値化を図る、2つのプログラムを紹介する。
1)装潢修理技術を学ぶ、修復レジデンスプログラム
1つ目は、奈良市の文化財建築「藤間家住宅」に2週間~1ヶ月の期間滞在し、日本独自の文化財である「装潢(そうこう)文化財」の修理理念と技法を学ぶレジデンスプログラム。
「装潢文化財」とは、掛軸や屏風、折本などに仕立てられた美術品を指すもので、これらの修復技術は日本固有の選定保存技術だ。古来より日本の美術品や文化財は海外に多く流出しており、世界中の美術館に所蔵されているが、それを扱える人材が不足していることが課題となっている。このプログラムを通じ、日本の伝統的な技術の国際的普及に貢献するとともに、海外からのニーズの増加など、伝統技術の継承を促進してくれるだろう。
【滞在プログラム】
① 装潢修理の基礎理論と実践 ~掛軸~
② 実践する装丁 ~屏風の構造理解と制作~
③ 修復と創造 ~金継ぎ~
●期間 2025年10月以降、4週間及び2週間の滞在プログラムを定期的に実施
※金継ぎのみ単日ワークショップも実施
●場所 藤間家住宅(630-8301奈良県奈良市高畑町1325-1)
●定員 各プログラム最大4名まで
●主催 一般社団法人高畑トラスト
●協力 株式会社文化財保存(文化庁選定保存技術保存団体・国宝修理装潢師連盟加盟団体)
クレメンタイン ナトル(東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス修士号)
●募集 2024年12月以降、TOMA HOUSE AIRで募集開始予定
2)金継ぎを学ぶレジデンスプログラムと1日ワークショップ
2つ目は、日本独自の修復技術として海外でも注目を集める「金継ぎ」の理論と、技法を学ぶレジデンスプログラム。金継ぎは、欠けた陶器の修復箇所を装飾的に仕上げることで新たな美を生み出す技法で、世界的にも「KINTSUGI」として知られているものだ。
この技法は、欠けた部分を美の一部とする日本独自の美意識に基づき、現代のサステナビリティやアップサイクルの概念とも共通している。本プログラムでは、最大1ヶ月の滞在プログラムや、外国人観光客が1日のみでも参加できるワークショップを通じて、参加者にこの技法の奥深さを感じてもらう。
その金継ぎの奥深さの一端を感じたい方は、講師のクレメンタイン ナトル氏が出演するこのショートムービーをぜひ観て欲しい。
【トライアルワークショップ】
金継ぎワークショップ in 藤間家住宅
●期間 2024年11月24日(日)10:00~16:00
●場所 藤間家住宅(630-8301奈良県奈良市高畑町1325-1)
●参加 無料
●定員 定員4名
●主催 一般社団法人高畑トラスト
●参加: 2024年10月24日(月)からTOMA HOUSE AIRにて応募受付
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日本のものづくり文化は、世界に類いのない特別なものと言える。この日本の誇らしい伝統を後世に伝えていくべく、より多くの人が日本の伝統技術に触れる機会はとても貴重だ。次の休みにふらっと奈良へ、日本の伝統技術に浸る旅はいかがだろう?
【参照サイト】TOMA HOUSE AIR
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高橋 真理
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