フランスと日本の地方都市を繋ぐ「窓」。世界に触れる機会を開くNOMADOプロジェクト

日本とフランスをつなぐ窓

「地球の反対側にいる人たちと話をしたんです」

とあるプロジェクトで日本の学生と対面した後、そう嬉しそうに話したのはフランスの田舎の村、ノルマンディー地方の中学生。今回、日本とフランスを繋いだのは丸い「窓」だ。

繋がるきっかけを作ったのは、「人生を変える出会いをつくる」をコアバリューとしたツナガル株式会社の「NOMADOプロジェクトチーム」。NOMADOプロジェクトは、文化交流とテクノロジーを通じて人と人がつながることで、社会の壁に窓をあけることを目指すプロジェクトだ。

「窓」の形を模したスクリーンの両側でコミュニケーションを行い、これまでつながる機会のなかった人々の間に関係を創出することで、異文化への想像力と思いやりを持てる社会を実現することを目指している。

NOMADOプロジェクト

過去のNOMADOプロジェクトの様子

2022年7月、パンデミックにより国境を超えた移動が制限されていたなかで始まった本プロジェクトが、同年11月7日~28日の期間中に4回に渡って繋いだのが大分県日田市にある日田高校と、フランス・ノルマンディー地方にあるスルドゥヴァル中学校。

日田高校の生徒

日田高校の生徒たち

スルドゥヴァル中学校の生徒

スルドゥヴァル中学校の生徒たち

両校の生徒たちは、4回のツナガリを通じて2023年10月6日から9日に福岡・熊本・大分を舞台に開催される国際サイクルロードレース大会「ツール・ド・九州」の大分ステージ関連グッズのデザインを考案した。

ツール・ド・九州は、1903年からフランスで毎年行われてきたサイクルロードレース「ツール・ド・フランス」にインスパイアされた大会。3県の景勝地や大自然を含む走行距離約400キロメートルのコースを、プロ選手も含め国内外の約20チームが駆け抜ける。

今回は、自転車文化の聖地であるフランスと、ツール・ド・九州のホストシティである日田市を結ぶことで、自転車という共通テーマで、二つの学校で国境を越えたつながりを育むことなどを目的にNOMADOプロジェクトが開催された。

ワークショップはまずチームビルディングを行うことから始まった。ジェスチャーゲームで窓越しに笑い合ったり、チームの名称をそれぞれ考えたり。言葉、年齢などの背景が違うメンバーが同じチームだと感じられるように、感覚を共有する時間をたっぷりととった後にグッズデザインを考えるためのセッションを行った。

遠く離れた二国を繋ぎながらみんなで考え、そのアイデアをもとに最後に人工知能を使って生み出された初期ビジュアルがこちら。

Golden leopards Light sharks

颯爽と町を駆け抜けていく自転車の姿が思い浮かぶようなクールなデザインに仕上がった。ワークショップ後、参加した日仏の学生からはこんな感想が紡がれた。

「言葉は通じなかったけれど、みんなでアイデアを出すのは楽しかったです」

「もともとは違う意見だったけど、組み合わさってできる感じがいいなと思いました」

「地球の反対側にいる人たちと話をしたんです。決して彼らと出会うはずがなかったのに。それでチームでつくった、そのロゴを実際に使うことになるってかっこいいです。NOMADOに感謝しています。だって地球の反対側にいる学生と話すチャンスをもらうなんて珍しいですから」

フランス側に設置した窓 スルドゥヴァル中学校の生徒たち

体験前、ツール・ド・九州を知っていた生徒は0人だったが、体験後には「ツール・ド・九州を応援したいと思いますか?」という問いに全員が「もちろん応援する」と回答した。

また、「フランスに興味を持ちましたか?」という質問には、3人が「フランスが大好きになった、フランスに住みたい」、6人が「フランス文化を知るために現地に行ってみたい」と回答。「フランスの子供たちと繋がりを感じることができましたか?」という質問には、半数が「とても親密に感じた」と答え、言語・距離の制約を超えて心理的距離を縮め、相手文化への興味関心が育めたことが分かった。

異文化交流や海外経験は新しい気づきを生み、自分を知り世界や他者を知るきっかけになる。それはもちろんそうだろう。しかし、全ての人にそうした機会が開かれているかと言われると疑問が残る。

外国人居住者や観光客が多く居る都市部などに住んでいれば外国人を目にしたり異文化に触れたりする機会が日常的にあるかもしれないし、両親が海外旅行好きであれば海を越えて海外に行く機会もあるかもしれない。

けれど、場所や状況によっては異文化交流の機会が少ない人がいる。

NOMADOプロジェクトは、そうした機会の格差を是正し、新たな関係創出を通じて世界をツナグ素晴らしいプロジェクトだ。これからもこうした取り組みが広がっていくことを心から願う。最後にNOMADOプロジェクトのミッションを記しておこう。

“旅、それはわたしたちに自己変革をもたらし、異文化への想像力と思いやりを育むものでした。

一方長期化するパンデミックはわたしたちから出会いの機会を奪い、孤独、貧困、教育、文化格差など社会の壁が露呈しました。

いま、つながりへの欲求や、思いやりを中心にした人間関係の重要性を改めて感じている方も多いのではないでしょうか。

NOMADO PROJECTは、テクノロジーと体験デザインによって人と人をつなげ、社会の壁に窓をあける社会活動です。”

【参照サイト】ツナガル株式会社
【参照サイト】NOMADプロジェクト
【参照サイト】ツール・ド・九州

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飯塚彩子

“いつも”の場所にずっといると“いつも”の大切さを時に忘れてしまう。25年間住み慣れた東京を離れ、シンガポール、インドネシア、中国に住み訪れたことで、住・旅・働・学・遊などで自分の居場所をずらすことの力を知ったLivhub編集部メンバー。企画・編集・執筆などを担当。