世界で最もAirbnbの物件登録数が多い地域の一つ、ニューヨークのマンハッタンでは、Airbnbの拡大が意外にもホテル業界にほとんど影響を与えていない。そんな興味深い調査結果が明らかになった。
ホテル業界のリサーチを手がけるSTRが2月11日に公表した調査結果によると、一般的な予想とは裏腹に、Airbnbの浸透はマンハッタンのホテルの稼働率や高稼働時の価格プレミアム設定力にほとんど影響を与えていないという。
現在マンハッタンには約17,000件の物件が登録されており、わずか87平方キロメートルの島内に日本全体の物件登録数の半分以上の物件がひしめく世界一のAirbnb密集地となっている。
それにも関わらず、Airbnbは本当にマンハッタンのホテル業界にダメージを与えていないのだろうか?STRは、マンハッタンのホテルの「Compression Nights(稼働率が95%以上の日数)」のデータに着目し、Airbnbの物件の中でもホテルの宿泊需要と最も近いと考えられる「個室」「まるまる貸切」タイプの物件を分析対象として、Airbnbとホテルの稼働状況の関係性について分析した。
STRによると、2015年のマンハッタンにおける「Compression Nights」は52日となっており、2014年の78日よりも26日減少していたものの、過去10年間のマンハッタンの平均「Compression Nights」は47日となっており、これはAirbnbの浸透により減少したというよりも2014年の数値が異常値だったとの見方を示している。また、過去10年間において「Compression Nights」の売上は年間売上の18%を占めているが、2015年にはこの数値が19%となっているという。
さらに、STRは「Compression Nights」時のホテルのプレミアム価格設定力にも着目している。STRによると、2014年の「Compression Nights」時のマンハッタンのホテル価格はそうでない時期と比較して平均24.4%だったが、2015年にはこの価格プレミアムが27.6%まで上昇したとのことだ。この数値はAirbnbがまだマンハッタンで浸透する前の2012年、2013年とほぼ同数値となっており、Airbnbの存在がホテルのプレミアム価格設定力影響を与えたとは考えにくい結果となっている。
一方で、マンハッタンのホテルが「Compression Nights」時のAirbnbの価格プレミアムは2015年11月までの1年間で3.8%となっており、さらに「Compression Nights」時のAirbnbの稼働率は57.2%で、それ以外の日の稼働率と比較して0.8%しか増えていなかった。
また、「Compression Nights」時の価格プレミアムをホテルのランク別(最高級/超高級/高級/中級/エコノミー)に見てみると、全てのランクにおいて20%以上のプレミアムを達成しているほか、高級/中級/エコノミーの3ランクについては2015年に過去10年間で最高の価格プレミアム率を達成している。
これらの事実を基にして、STRはAirbnbの浸透はマンハッタンのホテルの稼働率減少やプレミアム価格設定力に影響を及ぼしていることを示す証拠はほとんど見当たらないとしたうえで、むしろ2015年にはマンハッタンで新たに3,000以上のホテル部屋が増えたことのほうがよりそれらの数値に影響を及ぼしている可能性があると結論付けている。
日本でもAirbnbをはじめとする民泊の普及は、既存の旅館やホテル業界への悪影響が懸念されているが、STRの調査では、世間の想定とは裏腹に、Airbnbのユーザーとホテルの利用者はそれほど重なっておらず、互いにあまり影響を及ぼしていない可能性を示している。
【参照記事】STR: Airbnb’s impact on Manhattan compression
(Livhub ニュース編集部)
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