世田谷区、第2回「住宅宿泊事業検討委員会」を開催。民泊ルールを協議

世田谷区は9月27日、第2回世田谷区住宅宿泊事業検討委員会を開催した。当日は、学識経験者や町会・商店会・管理組合、不動産団体関係者らが出席し、『住宅宿泊事業を適正に運営するためのルールづくり』について話し合った。

2020年にオリンピック・パラリンピックを控える東京では宿泊施設不足が課題だが、その中でも新宿、渋谷へのアクセスがよい世田谷区は特に民泊需要が高いエリアとして注目を集めている。しかし、検討会では「安心」「安全」が魅力のいわゆる「世田谷ブランド」を維持するため、慎重に条例を策定していく必要があるという前提で議論が進んだ。

今回の議題は、6月に開催された1回目の会合で課題とされた「共同住宅の住居形態への対策」「騒音・治安・ゴミ問題」「区域と期間の制限」の3点だ。

世田谷区内の民泊に対する苦情数を住宅形態別に見てみると、マンションやアパートといった共同住宅が最も多いのが現状だ。騒音やゴミ問題のほか、仲介業者がオートロックの番号をスマホに入力するケースや、鍵のやり取りを暗証番号付のキーボックスに入れて行う違法民泊など、防犯面を懸念する声もある。

そのため、共同住宅における民泊については不動産事業事業者や観光協会関係者らからは賛成意見が挙がった一方で、環境や治安を重視する区民や自治体からは反対意見が挙がった。また、条例と対策は民泊に関わる当事者や対象施設の種別ごとに変えるべきだという共通意見もあった。

さらに、民泊事業の規制対象を「住居専用地域/商業地域」「家主居住/不在」「共同住宅/戸建」の3つに区分し、それぞれの条件に応じて条例を分けることも提案された。特にもっともトラブルが起こりやすい「住居専用地域、家主不在、共同住宅」では民泊の許可は難しいとし、現時点では共同住宅の民泊利用について禁止する意向が強かった。

続いて、民泊をめぐる騒音・治安・ゴミ問題について話し合われた。世田谷区は防犯対策として住宅宿泊事業者の連絡先等が記載されたステッカーの設置を義務づける方針だが、その設置場所については景観なども考慮した詳細な検討が必要だとしたほか、ゴミ問題については宿泊者に部屋内の所定位置にゴミを置いてもらい、管理者がゴミ捨てをするという案が出た。そうすることでゴミ捨て時のトラブルを防ぐことができるほか、正しいゴミ捨てが行われていない場合は役所が事業者を特定して指導することもできる。

そして、最後の論点となったのは区域と期間の制限についてだ。住宅宿泊事業法第18条では「都道府県が条例により生活環境等の悪化を防止するために合理的に必要と定められる限度において区域と期間を制限することができる」と定められている。現在、世田谷区内の民泊施設は渋谷、新宿に近い三軒茶屋、下北沢がもっとも多く、住宅街である二子玉川周辺は少ないという状況だ。

区域について、世田谷区は「住居専用地域」と住居専用地域を除く「住居系地域」が約9割を占めているが、これらの地域での民泊の実施は困難ではないかという意見が大半である一方で、「商業施設エリアは防犯カメラが多く防犯面も優れているためよいのでは」「空き家の多い商店街は物騒な印象があるため、民泊で人が増えることで地域活性化にもつながる」という意見もあった。また、大田区と同様に特区申請することで、不動産業者が参入し活性化するのではという案も出た。なお、世田谷区は宿泊施設が少ないことからホテル業者が反対するといった動きはない。

期間については、観光客向けの区内イベントが週末に多く、金・土・日曜日に利用が増えることが予測され、また防犯面においては子供が犯罪に遭うのは放課後が多いことから、平日日中・夜間と土・日・祝日の場合で分けて検討すべきだという意見があった。

世田谷区は民泊事業に対する需要は大きいが、一方で世田谷区民が住みにくく感じる状況は防がなければならない。目先の利益を優先した結果、生活環境の悪化や不動産価値の低下などにつながるのではと危惧する声もある。

ただし、条例や罰則を厳しくすることで逆にアンダーグラウンド(違法業者)が増加する可能性もあるため、賛成派、反対派の双方の意見を考慮しながらバランス感覚のある意思決定が求められそうだ。全3回を予定している「世田谷区住宅宿泊事業検討委員会」は、今回の内容を踏まえて次回が最終の協議となる。

【参照ページ】世田谷区住宅宿泊事業検討委員会の開催について

(Livhubニュース 編集部)

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