サステナブルツーリズム研究の現在地。注目の論文と持続可能な観光の展望

サステナブルツーリズムに関する研究は、2015年の「国連持続可能な開発サミット」における「2030年アジェンダ」の発表以降、急速に発展を遂げています。その2015年を契機にして、環境への意識の高まりと共に「サステナブルツーリズム」というキーワードを含む論文や出版物の発表数が著しく増加しました。

「持続可能な観光」に関する年別出版物の公表状況(出典: Sustainable tourism progress: a 10-year bibliometric analysis

ツーリズムの研究論文を把握することの重要性

観光産業は気候変動や生物多様性、地域社会に大きな影響を与える産業です。そのため、持続可能な観光の実現には、専門家の最新の研究成果を理解することが不可欠です。

特にサステナブルツーリズムの文脈から、環境保護、地域コミュニティの支援、文化の保全という3つの側面からの総合的なアプローチが求められており、専門家による研究の成果を、地域におけるツーリズムとその他取り組みの実践に活かすことが重要となります。

注目の研究論文紹介

1、”Sustainability as a building block for tourism – future research”

著者:Sara Alonso-Muñoz, María Torrejón-Ramos, María-Sonia Medina-Salgado, Rocío González-Sánche

発表年:2022年

この論文は、サステナブルツーリズム研究の現状を包括的に分析し、2030年アジェンダの達成に向けた課題を明らかにしています。特に、環境劣化や社会的格差の解消に向けた具体的な指標の確立の必要性を指摘しています。
Sustainability as a building block for tourism – future research: Tourism Agenda 2030 | Emerald Insight

2、”Progress in Sustainable Tourism Research”

著者:Yuetao Yang, Gowhar Ahmad Wani, V. Nagaraj,Mohammad Haseeb, Sameer Sultan, Md. Emran Hossain, Mustafa Kamal, Syed Mehmood Raza Shah
発表年:2023年

観光産業の急速な成長に伴うサステナブルツーリズムの進展について分析した論文です。特に、デジタル技術の活用や地域社会との協働に関する新しい知見を提供しています。
Progress in Sustainable Tourism Research: An Analysis of the Comprehensive Literature and Future Research Directions

3、「ポストコロナ時代におけるサステナブルツーリズムの展望」

著者:ANA総合研究所
発表年:2022年
日本における持続可能な観光の現状分析と、特にオーバーツーリズム対策としての具体的な施策について考察しています。
サステナブルツーリズムに関する一考察 ~現状と今後のあるべき方向性について~

4、「サステナブルツーリズムの現状と北海道における今後の方向性」

著者:日本政策投資銀行北海道支店
発表年:2023年
この論文は、サステナブルツーリズムの国際的動向と北海道における実践可能性を詳細に分析しています。特に注目すべき点として、外国人旅行者の年齢層や所得層によるサステナブルツーリズムへの志向性の違いを明らかにし、若年層×高収入者層における需要の高さを指摘しています。
サステナブルツーリズムの現状と北海道における今後の方向性

これらの研究論文から得られる示唆

これらの研究から、以下の重要な示唆が得られます。

・サステナブルツーリズムの実現には、環境・経済・社会文化的側面のバランスが不可欠
・観光地の持続可能な発展には、地域住民の受容と満足度が重要
・サステナビリティの達成度を評価する測定指標の確立と、それに基づく政策フレームワークの構築
・オーバーツーリズム対策や、観光に関する規制と満足度のバランスの重要性

サステナブルツーリズム研究のあり方

サステナブルツーリズム研究は、理論から実践へとシフトしつつあります。特に、デジタル技術の活用や地域コミュニティとの協働による新しい観光モデルの構築が注目されています。また日本国内では、地域固有の文化や自然を活かしながら、観光による経済効果を地域に還元する仕組みづくりが注目されています。

サステナブルツーリズムの研究成果を地域での実践に活かし、その実績を信頼できる評価基準で精査しながらその結果をもって研究を継続する、というような理論と実践の循環をさせることで、より良い持続可能な観光の実現が期待できるといえるでしょう。

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サステナブルツーリズムとは

サステナブルな旅をしたい個人向け

【参照サイト】Taylar&Francis Online
【参照サイト】emerald insigt
【参照サイト】mdpi
【参照サイト】株式会社ANA総合研究所
【参照サイト】日本政策投資銀行

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いしづか かずと

Livhubの編集・ライティング・企画を担当。訪れた場所の風景と自分自身の両方を豊かにする旅を探している。神奈川と長野をいったりきたりしながら二拠点生活中。GSTC Sustainable Tourism Training Program修了。環境再生医初級。