サステナブルツーリズムとSDGsの関連性 | SDGsに貢献する観光のあり方とは?

観光産業は世界経済の重要な柱である一方、環境負荷や文化的影響など、様々な課題も抱えています。本記事では、世界的に注目度と重要性が増している2つの概念、「サステナブルツーリズム」と「SDGs」の関連性について、具体的な項目を挙げながら解説します。

目次

  1. サステナブルツーリズムの定義と成立背景
  2. SDGsの定義と成立背景
  3. サステナブルツーリズムとSDGsの関連性について
  4. 日本政府観光局によるSDGsに向けた取り組み
  5. SDGs達成に貢献する観光のあり方:必要なアクション
  6. サステナブルツーリズムの実現とSDGs達成に向けて

サステナブルツーリズムの定義と成立背景

サステナブルツーリズムとは、「環境」「文化」「経済」の3つの観点から持続可能で発展性のある観光を目指す取り組みです。国連世界観光機関(UN Tourism、旧UNWTO)は、「業界、環境、訪問客を受け入れるコミュニティに対応しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光」と定義しています。

サステナブルツーリズムが成立した背景には、マスツーリズムの台頭があります。第二次世界大戦後の経済発展により、それまで富裕層の特権であった観光が大衆化しました。マスツーリズムがもたらした諸問題への解決策として、また持続可能な社会の実現に向けた新しい観光の在り方として、サステナブルツーリズムが発展してきたと言えます。

SDGsの定義と成立背景

SDGsは2015年の国連サミットで採択された、2030年までの達成を掲げた「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」です。1972年のローマクラブによる「成長の限界」の警鐘から始まり、1987年の「持続可能な開発」概念の確立、2000年のMDGs(ミレニアム開発目標)採択を経て誕生しました。「誰一人取り残さない」を理念に、経済・社会・環境の3つの側面のバランスを重視し、17のゴールと169のターゲットで構成されています。

サステナブルツーリズムとSDGsの関連性について

image via 国際連合広報センター

サステナブルツーリズムは、その性質上、SDGsの多くの目標達成に貢献する可能性を秘めています。特に密接な関連性を持つ8、12、14の目標を以下に詳しく解説します。

目標8:働きがいも経済成長も

SDGs目標8の項目9は「2030年までに、雇用創出、地元の文化・製品の振興につながる持続可能な観光政策を立案・実施する」ことを目指しています。このSDGsの項目に対して、サステナブルツーリズムは、地域資源を活用した観光や、地域住民によるサービス提供を促進することで、雇用を創出し、地域経済を活性化させるというができます。

目標12:つくる責任 つかう責任

SDGs目標12の項目bは「雇用創出と地元の文化・製品の振興につながる持続可能な観光のための持続可能な開発の影響を監視するツールを開発・導入する」ことを目指しています。この項目に対して、サステナブルツーリズムは、資源の効率的な利用、廃棄物削減、環境負荷の低い交通手段の利用などを促進することで、持続可能な消費と生産パターンに貢献できます。

目標14:海の豊かさを守ろう

SDGs目標14の項目7は「2030年までに、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続可能な利用による経済的利益を増大させる」ことを目指しています。この項目に対して、サステナブルツーリズムは、海洋環境の保全、海洋資源の持続可能な利用、沿岸地域の環境保護などを促進することで、海洋資源の持続可能な利用に貢献できます。

日本政府観光局によるSDGsに向けた取り組み

世界各地で「サステナブルツーリズム」への関心が高まる中、日本政府観光局(JNTO)は、2021年6月に「SDGsへの貢献と持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)の推進に係る取組方針」を策定しています。JNTOはこの方針に基づき、「責任ある観光(レスポンシブル・トラベル)」の奨励、ユニバーサル・ツーリズムに関する情報発信等を強化し、2022年1月には部署横断型の「サステナブル・ツーリズム推進室」を設置しています。こういった動きからも、日本国内でのSDGsとサステナブルツーリズムとの関連性は今後より深まっていくと予想されます。

SDGs達成に貢献する観光のあり方:必要なアクション

サステナブルツーリズムを実現し、SDGs達成に貢献するためには、以下のようなアクションが必要です。

環境保護への意識向上と行動

観光事業者、旅行者、地域住民が一体となって、環境保護の重要性を認識し、省エネルギー、省資源、廃棄物削減など、具体的な行動に取り組む必要があります。

地域社会への貢献

地域資源を活用した観光や、地域住民によるサービス提供を促進することで、地域経済を活性化させ、地域社会の生活向上に貢献する必要があります。

文化の尊重と継承

地域の文化や伝統を尊重し、観光客と地域住民との交流を促進することで、文化の相互理解を深め、文化の継承に貢献する必要があります。

責任ある観光消費の促進

旅行者は、環境や社会に配慮した商品やサービスを選択し、責任ある観光消費を行うことで、サステナブルツーリズムの実現に貢献することができます。

多様なステークホルダー同士の協働

政府、観光事業者、NGO、地域住民、旅行者など、多様なステークホルダーが連携し、共通の目標に向かって協働することが、SDGsとサステナブルツーリズムの実現には不可欠です。

UN Tourismは各国政府、官民のパートナー、開発銀行、国際および地域の金融機関、国連機関、そして国際組織と協力してSDGsの達成を支援しており、観光が主要テーマとなる目標8、12、14に重点を置いています。

国内においては特に各地方自治体や観光地域づくり法人(DMO)に向けては、持続可能な観光地マネジメントを行うことができるよう、観光庁が国際基準に準拠した「日本版持続可能な観光ガイドライン(Japan Sustainable Tourism Standard for Destinations,JSTS-D)」を開発し公開していますので、こちらを参照することをおすすめします。

サステナブルツーリズムの実現とSDGs達成に向けて

サステナブルツーリズムの実現には、ツーリズムに関わるすべての関係者の協力が不可欠です。そのためにも多くの人がサステナブルツーリズムの概念を理解しながら、環境への配慮、文化の保全、経済的な持続可能性などを同時に達成することが、SDGsの目標達成を前進させるために必要です。

そしてSDGsと密接な関係にあるサステナブルツーリズムは、SDGs達成に大きく貢献できる可能性を秘めています。 私たち一人ひとりが責任ある行動を心がけ、持続可能な観光を実現していくことが、より良い未来を創造することにつながるでしょう。

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サステナブルツーリズムとは

サステナブルな旅をしたい個人向け

【参照サイト】外務省| SDGsとは?
【参照サイト】UN Tourism
【参照サイト】観光庁 | 日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)
【参照サイト】UNTourism 駐日事務所
【参照サイト】日本政府観光局(JNTO)

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いしづか かずと

Livhubの編集・ライティング・企画を担当。訪れた場所の風景と自分自身の両方を豊かにする旅を探している。神奈川と長野をいったりきたりしながら二拠点生活中。GSTC Sustainable Tourism Training Program修了。環境再生医初級。