未来へつなげたい、農泊の魅力。JTB総合研究所が選ぶ、5つの農泊モデル地域

朝、目覚める。外では小鳥が鳴いている。窓から差し込む朝の光を感じ、体を起こす。一杯の水を口にし、朝の活動をはじめる。火をつけて、コトコトやかんでお湯を沸かし、みんなのコーヒーの準備。外は今日も青々とした葉と鮮やかな緑の木々が生い茂る。

ここは、自然豊かな山々に囲まれた農村。その日食べる分だけの野菜や山菜を採りに行って、朝ごはんの支度。今日も1日を大切に丁寧に過ごそう。そんな気持ちにさせてくれる。

株式会社JTB総合研究所は、農泊を持続的な取組として実施できる地域の確立に向けて、モデルとなる農泊地域を創出・育成すべく、農山漁村振興交付金を活用し「持続可能な農泊モデル地域創出支援事業」を実施している。全国5つの農泊地域をモデル地域に選定し、2024年10月22日(火)に開催した選定発表会で発表された。

地域のありのままの姿を楽しむ「農泊」

「農泊」とは、農山漁村に宿泊して、滞在中に豊かな地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農山漁村滞在型旅行」のこと。農家民宿に泊まって、郷土料理作りや農作業を体験する形だけでなく、古民家を活用したゲストハウスに泊まりながら地域の文化を体験したり、旅館に泊まって地域の農水産物を味わったりと、さまざまな楽しみ方があり人気も高い。

2024年3月31日現在、農泊に取り組む地域は656地域あり、「農泊実行計画」において誘客増大・消費機会拡大・高付加価値化に向けた農泊地域の磨き上げに注力されている。

5つの農泊地域をモデル地域として選定

農泊地域モデルの実現に向けた取組みへの支援と、全国への情報発信・横展開を進めるにあたり、全国に多数ある農泊地域からモデルとなる農泊地域の選定が行われた。

農泊モデル地域の選定にあたっては、以下の観点の通り。

1.協議会のこれまでの取組に対する評価(取組の実績・成果)
2.協議会のこれから目指す取組に対する評価(計画の妥当性・目標の妥当性・取組の波及性)
3.協議会の実施体制、地域課題解決等への貢献に対する評価(協議会の運営体制・地域課題解決への貢献や地域の農林水産業への裨益)

選ばれた地域を紹介する。

(1) 遠野ふるさと体験協議会(岩手県遠野市):
多様な世代が「ありのままの遠野旅」を体験できる農泊

市内に約100軒の実践者がおり、教育旅行や合宿免許、個人旅行客等の受入を行ってきた。2019年にできた「旅の産地直売所」を拠点とし、「ありのままの遠野を旅しよう」をキーワードに、まちぶらやサイクリング等の体験を提供。旅の産地直売所のコーディネート・情報発信・販売に関する機能を拡充させ、体験と農家民宿を組み合わせた滞在プログラムを国内外の個人旅行者に訴求する。また、地域づくりの取組に対する団体や企業の視察・研修も増えていることから、企業等の受入体制も強化していく。

Webサイト:https://tono-yamasatonet.com/tabisite/

(2) 逢瀬いなか体験交流協議会(福島県郡山市):
いなかのぬくもり、再び訪れたくなるつながりと貢献の農泊

大学のゼミ合宿や、郡山市内からの農業体験などを、地区内の農家民宿や宿泊施設と連携して行ってきた。関係人口の増加につながる農泊としてさらに磨き上げるため、リピーターや移住者が新規来訪者を呼び込むプログラムを一緒に考えていく「貢献型旅行」を企画・運営し、関係人口の深化・拡大の両方を目指す。地区内のワイナリーと連携し、ワイン用ブドウの収穫と、マルシェや料理教室などのイベントを組み合わせるとともに、SNS等のオンラインコミュニティを整備し、一度来訪した方が継続的に地域と関われる仕組みをづくりが期待される。

Webサイト:https://ouse-taiken.com/

(3) みのぶ農泊地域連携協議会(山梨県身延町):
750年の仏教文化体験×精進(ヴィーガン)料理×本物の日本体験ができる農泊

創建750年以上の歴史をもつ身延山久遠寺の門前町として宿坊が集まっており、仏教文化を体験できる。「幻の大豆」と言われる「あけぼの大豆(GI認定)」を活用した精進料理は、ベジタリアンやヴィーガンなどの海外の方にも好評だ。

欧州の日本文化に関心の高い層や、日本料理を学びたい外国人に対して、宿坊と体験を組み合わせたプログラムを販売し、新たなターゲット層に向けて宿坊を活用する仕組みをつくる。

Webサイト:https://minobunavi.jp/

(4) 一般社団法人 南丹市美山観光まちづくり協会(京都府南丹市):
かやぶきの里をともに守り伝える農泊

「かやぶきの里」の美しい田園風景を保全・継承しており、国連世界観光機関(UNTourism)のベスト・ツーリズム・ビレッジに認定されるなど、持続可能な観光地域づくりの取組が国内外から高く評価されている地域。

台湾や豪州など海外からの教育旅行や個人旅行者が多く、さらなるインバウンド誘致に向けて、農泊が持続可能な地域づくりに貢献するあり方を可視化し、発信することで、農泊の地域への貢献が地域内外に実感される仕組みをつくる。

Webサイト:https://miyamanavi.com/

(5) 太田川流域農泊振興協議会(和歌山県那智勝浦町):
学び、感じて、繋がる お寺から始まる 心を満たす農泊

無人化した寺院を宿坊として再生し、熊野古道を訪れる国内外の方などに伝統文化の体験や地域の食材を提供している。寺院が活用されることで、避難物資の備蓄や避難所などの役割を維持することができ、地域のよりどころの確保にもつながっている。

新たな宿坊の開業に向けて投資を集めながら、寄付者に対して農業体験等への参加(来訪)を促すなど、地域課題の解決に貢献する関係人口につなげていく仕組みをつくる。

Webサイト:https://otagawa-life.jp

都心を離れて、ふと心やすげる農村へ。そこにはこれからも大切に守っていきたい伝統や文化、丁寧に暮らす人の営みに触れることができ、そしてあたたかな人の心に触れることができるだろう。人が生きる原点のようなものを探す旅、あなたもしてみませんか?

【参照サイト】「持続可能な農泊モデル地域」の創出に向けて、5つの農泊地域をモデル地域に選定しました

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