循環型経済・脱炭素の最先端事例に出会う。サステナブル経営のヒントを見つける山梨ワーケーション体験記

Sponsored by パソナ JOB HUB

日本でも徐々にビジネスの中心になりつつあるこのサステナブル経営というテーマは、ESG投資や新規市場開拓の面、そして企業の社会的な側面に配慮した取り組み=CSR(Corporate Social Responsibility)の面からも、経営者にとって重要な課題だ。ちなみにここで言うサステナブル経営とは環境・社会・経済の持続可能性に配慮することで、事業の持続可能性向上を図る経営のことを指す(※)

積み重なる環境・社会課題に対してどのような姿勢を取り、どう具体的にアクションするのか。生活者からの共感を得るにも、投資家からの支援を得るにも、それぞれの企業がサステナビリティについて考え、行動で示す必要性が高まっている。

しかし実際に取り組みたい気持ちはあっても、どのように始めればいいかわからないという方も多いのではないだろうか。そうした経営層や事業開発担当の方向けに、山梨県でサステナビリティというテーマをもとに、山梨県でのサステナブル経営や事業開発の可能性を探るワーケーションツアーが2023年3月2日から3月4日に開催された。山梨県リニア未来創造局主催、株式会社パソナJOB HUB企画・運営によるツアーだ。

今回のワーケーションツアー参加者が携わる事業分野は、人材派遣、企業コンサルタント、学習塾経営、宿泊施設運営、医療システム開発、研修講師、Webメディア運営などと幅広く、多様な業界での国内でのサステナブル経営に対する関心の高まりを肌で感じられた。

このツアーを通して、山梨県内でサステナブル経営を実践している地元企業を複数訪問した。その中でサステナビリティ推進に取り組もうしているツアー参加者と、先行事例をもつ山梨県内企業の経営者とが新たに出会い、たくさんの対話が生まれることになる。そして参加者各自がサステナブル経営実現に向けた事例のインプットを深めながら、最終日にはクロージングのワークショップを行い、参加後の山梨県での具体的なアクションにつながるアイデアや可能性について話し合った。

ここからは3日間で訪問した企業との交流の様子と、その他プログラムの内容をお伝えする。

サステナビリティ先人事例をめぐる旅の始まり

オープニングセッション

コワーキングスペースCROSSBE外観

まず初日、コワーキングスペースCROSSBE(クロスビー)にて行われた冒頭のオープニングセッションでは、山梨県リニア未来創造局の長田芳樹氏が登壇し、本ツアーについてのオリエンテーションがあった。

リニア未来創造局 二拠点居住推進課 課長 長田芳樹氏

今回のツアーの目的は二つ。まずは山梨という自然豊かな場所の魅力を紹介しつつ、山梨県という場所でサステナブル経営に関する事業開発や、多様な働き方に関するヒントアイデアを見つける機会を楽しんでもらうこと、もう一つは今回のツアーの中で出会った企業や事業を通じて、山梨県での今後の活動を検討してもらうことだ。

途中、山梨県リニア未来創造局二拠点居住推進課が運営する「Y charge(ワイチャージ)」という「やまなし二拠点居住・移住総合WEBメディア」の紹介もあり、こちらは山梨という環境に興味がある方にはもってこいのメディアとなっている。

続いて、会場でもある甲府のコワーキングスペース「CROSSBE」を運営する事業ディレクター・桐山祐輔氏より、コワーキングスペースの活用方法の紹介があった。甲府駅より徒歩3分という好立地もあって、150名以上の会員がCROSSBEを利用しており、県外と県内の利用者の交差点となっている。そして桐山氏自身も移住者であるということから「気軽にビジネスや移住の相談をしてほしい」との頼もしい言葉があった。

また今回、参加者の一人としてツアーに同行したハーチ株式会社の加藤佑氏からは、サステナブル経営やESGに関する基礎的な知識や、循環型経済を取り入れる上で必要な視点などについての解説があり、サステナブル経営と山梨県に対する想いがより高まったところで、実際の企業との交流や視察に入る流れとなった。

ここからは3日間の中で訪れた交流・訪問企業を順を追ってご紹介していく。

個性豊かな訪問先・交流企業

地域を応援できる契約プランと創業支援で山梨を活性化

山梨県甲府市 ヴィジョナリーパワー株式会社 (甲府市)

ヴィジョナリーパワー株式会社の代表取締役を務める戸田達昭氏は、13の企業の経営に関わり、4社の企業代表を務める、山梨を代表する経営者。「創業報県(起業・創業を活性化させて山梨県に報いること)」をスローガンとし、新規事業に取り組む事業者への投資や、文化・福祉領域に対する公共的な投資、山梨県で起業・創業を目指すためのビジネスプランコンテスト「Mt.FUJI INNOVATION CAMP」の運営も行っている。

ヴィジョナリーパワー株式会社代表取締役 戸田達昭氏(向かって右)

山梨という場所のアクセスの良さと将来性について前置きしてから、ヴィジョナリーパワー株式会社が提供する、「契約することが県内の地域事業支援になる」ユニークな電力供給プランを紹介。

またこれまで環境負荷の高かったハウス栽培に使う重油を、休耕地で育てたエネルギー作物を活用したバイオ燃料に置き換える事業や、ワインの残渣をアップサイクルして菌床に活用したワインきのこ事業、全工程を県内でまかなうFSC認証取得済の家具生産の事例などついて解説していた。参加者は戸田氏の展開事業の幅広さに驚きながらも、その中からそれぞれの事業領域に応じた接点を見出していたようだ。

余剰電力から水素を取り出すP2Gシステムでグリーンイノベーションを実現

山梨県甲府市 米倉山電力貯蔵技術研究サイト (甲府市)

甲府盆地の南部に位置する米倉山に2014年に開設された「米倉山電力貯蔵技術研究サイト」では、山梨県企業局、東京電力ホールディングス株式会社、東レ株式会社、株式会社東光高岳等が共同でCO2フリーの水素社会構築を目指したP2G(Power to Gas)システム技術開発事業を実施している。

P2Gシステム実証研究棟外観

ちなみに「P2Gシステム」とは、再生可能エネルギーの電力(Power)と水から水素(Gas)を取り出す仕組みのことで、この施設では「固体高分子(PEM)形水電解装置」を用い水素を製造している。

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、気象条件によって発電量が大きく変動する、一般的に不安定な電気と言われているが、この変動する電力から水素を製造し貯蔵、そして運搬から利用までを可能にする、このP2Gシステムが大きな意味を持つわけだ。

今回案内を担当してくれた山梨県企業局 新エネルギーシステム推進室主査の竹田明浩氏からは、その広大な施設の中を実際に案内していただいたあと、施設概要と再生可能エネルギーの電力から水素を製造するP2Gの具体的な仕組みとその意義、そして水素エネルギー実用化に向けての今後の課題についての説明があった。

施設内を案内する竹田明浩氏

水素エネルギーの現状の主な課題は、普及するまで当面は高コストであること。水素の現在の供給コストは既存燃料に比べて高く、サプライチェーンの大規模化や技術革新を通じたコスト低減が必要、と竹田明浩氏は語る。

参加者は広大な敷地に設けられたP2Gシステムや水素出荷設備を目の当たりにしたことで、そのCO2フリーのエネルギー貯蔵技術が実用化される近い将来をそれぞれの頭に描きながら、コスト削減へ向けた施策や、化石燃料からのエネルギー転換に向けた需要増への道筋についての質問を竹田氏に投げかけていた。

オーガニックコットンでつくり手が見える安心と地域雇用を

小林メリヤス株式会社(南アルプス市)

ツアー2日目の午前には、オーガニックコットンを使用したベビーニットの製造・販売を行っている小林メリヤス株式会社を訪問。彼らは2020年から工場使用エネルギーの80%を再生可能エネルギー(太陽光・風力)に切り替え、CO2の削減を目指している。 地元での雇用創出にも貢献し、サステナブルな経営を実践しているのが代表取締役の木村彰氏だ。

オーガニックコットンについて説明する木村彰氏

小林メリヤスが取得しているGOTS認証はオーガニックコットンに関する厳しい基準で知られ、日本国内では30の企業が取得しているが、ニット製品の製造工場では小林メリヤス1社のみ。

GOTS認証に基づいたオーガニックコットンによるものづくりは、環境保護だけでなく、児童労働の防止や原料からのトレーサビリティ向上に加えて、農薬の使用を止めることで農家の健康被害を防ぐ目的もある、と木村氏は語る。

さらに工場の工程を見学していて印象深かったのは、どの職人も丁寧に自分の工程で大事にしていることをそれぞれの言葉で快く話してくれること。視察後に木村氏は、持続可能性にこだわったものづくりのおかげで、県内外から良い人材が集まるようになったと話していた。こんなところにもサステナブル経営のメリットが感じられる。

オーガニックコットン製品製造の一工程

また小林メリヤスでは、海外生産や外国人留学生の労働力に頼りがちな国内製造業の空洞化をも課題と捉えている。その対策として国内で技術を継承していくものづくりを目指している、と木村氏は付け加えていた。

最後に製造過程を丁寧に視察した参加者は、オーガニックコットン製品の価値に気づいただけでなく、それぞれの事業にその小林メリヤスの持続可能な経営のエッセンスを取り入れるべく、コットン製品に関する質問を木村氏に問いかけながら意見交換をしていた。

リノベーションでワクワクをまちに広げる

IROHA CRAFT/株式会社アトリエいろは一級建築士事務所(韮崎市)

韮崎中央商店街のシンボルとして長い間地域に愛され続けてきた、築50年以上の「アメリカヤビル」。

そのビルを2018年にリノベーションし、9つのテナントブースと広いコミュニティスペースで構成された複合施設として再生させた建築事務所が「IROHA CRAFT」だ。その代表取締役である千葉健司氏のオフィスを2日目の午後に訪問した。

IROHA CRAFT 代表取締役 千葉健司氏

千葉健司氏はアメリカヤビルの復活だけに止まらず、その周囲の空き物件や商店跡を改築し、商店街「アメリカヤ横丁」内の店舗や近隣のゲストハウスの設計なども手がける。「新しいものをつくる建築家ではなく、古いもの受け継いで残していくの建築家を目指し、リノベーションに特化した事業のために起業したのがIROHA CRAFT。リノベーションは、新しい建築物をつくるよりも環境負荷が低い。

そして若い世代だけでなく、年配の方にも受け入れられやすいので世代間の分断も少なくなる。将来的にはこの付近の空き家をまとめてリノベーションし、移住者を受け入れることが可能な『アメリカヤ村』をつくりたい」と千葉氏は語る。千葉氏がアメリカヤビル改装を思いついた時の「ワクワク」は、今や周囲の商店街まで伝播し、多くの町の若者や、県外からの移住者を惹きつけている。

アメリカヤ横丁入口

参加者の中にはリノベーションによる町の活性化を志す経営者もいたせいか、資金調達方法や古いビルの建築基準などに関する具体的な質問も出ており、千葉氏は自身の事例を踏まえて詳細に返答していた。

アメリカヤビルの一室で千葉さんを囲んで話を聞く参加者

そして新規事業に挑戦する際の不安などの質問に対しては「自分のワクワクを周囲に伝えていくこと」の大事さを交えて返答していた。その千葉氏の姿勢と実行力は、志をもって新規事業にチャレンジしようとしている参加者たちから大きな共感を得ていたようだ。

「キコリの炭」で間伐材の需要を生み出す

株式会社炭義.(都留市)

森林を健康に保ち、里山や湧水を未来に残すために必要なこととはなんだろうか。その一つの方法として不要な樹木や竹を伐採する「間伐」がある。しかし「竹や木材の需要」が増えなければ、樵(キコリ)は、継続的な間伐を行うことはできない。だからこそ「森林資源の新しい需要」を産み出す必要がある。

「そのために自分たちができることの答えが『キコリの炭』という高機能・高品質の炭ブランドだった」と株式会社炭義. 取締役社長の鈴木弘明氏は語る。

炭による加工を施した陶器を紹介する鈴木弘明氏

炭には土壌改善に加えて、有害な化学物質を吸着し、医薬品に用いられるような効果もある。炭義.の工場には、そんな効果を支える品質の高い炭をつくる環境負荷の低い炭化炉と、それを製品化する高い技術があるのだ。

株式会社炭義.工場内の炭化炉

また株式会社炭義.のブランディングを担当しながら炭を使った製品開発なども行う、C-table株式会社の田邉耕平氏も参加。彼自身も移住者であり、移住後の仕事の作り方や、炭の製品開発秘話なども披露しながら、地域に溶け込むまでの過程について語ってくれた。

C-table株式会社の田邉耕平氏(向かって左)

鈴木氏は今後、都留市の助成金も活用し、消費者を巻き込む林業体験イベントなどを行いながら、企業・行政・参加者が三位一体となった事業展開を目指したいそうだ。こういった移住者と地域の関わり方や、山梨の自然環境や地域資源を利用した持続可能な事業のつくり方を聞くことで、参加者が山梨県との今後の関わり方をイメージするのに役立つ、とても有意義な時間となった。

最終日の振り返りワークショップ

3日目の午後には、参加者と県関係者、そして主催側も混ざった形で、3日間を通したプログラムでの気づきと、今後会社として山梨県で取り組みたいことを共有するワークショップが都留市上谷交流センターにて実施された。

振り返りワークショップの様子

ツアーの中で印象に残ったキーワードとそれぞれの今後の関わり方を模造紙に付箋で張る作業を開始すると、あっという間に模造紙は参加者の思いをのせた付箋で埋め尽くされていく。最後には付箋同士がモザイク状に重なり合っていたことからも、このワーケーションを通して得た気づきがいかに多かったかを実感できた。

参加者が書いた付箋の数々

ここで参加者が挙げていたサステナブル経営に大切なキーワードをほんの一部だけ紹介する。たとえば「経済の循環と、資源の循環のバランス」「人間の知恵だけでなく自然の叡智を活かす」というようなサステナブル経営を俯瞰したキーワードもあれば、「ライスワークではなくライフワーク」「ワクワクが原動力」などの個々の経営者としてのマインドを表すキーワードまで、様々だった。そしてこのワーケーションツアーでの「自分の事業に関するヒントを山梨県で見つける」という目的を受け、参加者の事業領域に応じた事業進出案をそれぞれ発表していた。

ここでさらにそれらの言葉を詳細に挙げていくこともできるが、残りに関しては読者の想像にお任せする。というのも、現場での生の言葉からの個々の気づきは、やはり自分の五感を通した体験が伴ってこそ真価を発揮するもの。このレポートを読んでいただいた方も、豊かな自然の中に身を置いて山梨のサステナブルな企業と交流し、サステナブル経営の本質と、自分と山梨県との「関わりしろ」を見つけに、ぜひ山梨県を訪れてみてはどうだろう。

山梨県には多くの魅力的な地域企業があるだけでなく、企業の山梨県への事業・拠点進出をサポートする「二拠点居住推進センター」という支援窓口もあり、これからも企業経営者向けに様々なテーマでワーケーションツアーを実施していく。今後、ますます首都圏の面白い企業が集まり、盛り上がっていく地域になるのではないだろうか。

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問い合わせ先 山梨県二拠点居住推進センター
住所 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-6-3 都道府県会館13階(山梨県 東京事務所内)
電話 03-5212-9033
FAX 03-5212-9034
問い合わせフォーム https://www.nikyoten.pref.yamanashi.jp/contact/index.html

サステナビリティ経営とは
【参照サイト】山梨県リニア未来創造局
【参照サイト】株式会社パソナJOB HUB
【参照サイト】Ycharge(やまなし二拠点居住)
【参照サイト】Mt.FUJI INNOVATION CAMP
【参照サイト】日本オーガニックコットン協会 GOTS認証
Edited by Megumi